ABC物語 3
それから少しずつ Aの位置が
三人の中で曖昧になっていった。
BとCが話しているとき、Aは近くにいるのに
会話の輪の外に立つことが増えた。
話しかけられれば応じる でも、自分からは入らない。
距離を測るみたいに一歩だけ下がった場所に立っている。
【メモ:
Aは、BとCの間に“入らない”ようにしている?】
ある昼休み。BとCは同じ机を挟んで話していた。
Aは、そのすぐ横の席にいたのに、
スマホを見ているふりをしていた。
視線は画面に落ちていたけれど、ときどき、
二人のほうに向いているようにも見えた。
Cは
その視線に気づいていないようだった。
Bは
一度だけAのほうを見た。
それから、
少し間を置いて、
Bは話題を変えた。
Aの知っていそうな話だった。
【メモ:
BはAを会話に入れようとした?】
Bの動きが少しだけ変わった。
Cと話しているとき、
Bはときどき、
Aのほうを見るようになった。
話題の途中で、
「ねえ、Aはどう思う?」
と言いそうな間が生まれる。
実際に声が聞こえなくてもBの口の動きと視線の向きで、
それが分かった。
Aは、
一瞬だけ戸惑った顔をして、
それから、小さく頷いたり、
短く答えたりする。
長くは続かない。
でも
完全に離れてもいない。
【メモ:
Bは“わざと”Aを話に入れている気がする】
放課後。
BとCが並んで歩いているとき、
少し後ろをAが歩いていた。
いつもなら、
Aは先に帰っていたはずなのに、
その日は、
二人の歩く速さに合わせていた。
Bは、
ふと立ち止まって、
後ろを振り返った。
Cに何か言ってから、
少しだけ横にずれた。
三人が、
横一列になった。
【メモ:Bは、三人で並ぶ位置を作った】
その帰り道、
三人は同じ方向へ歩いていった。
会話は、
BとCが中心だったけれど、
ところどころで、
Aの言葉が挟まっていた。
Aは、
まだ少しだけ遠慮している。
でも、
完全には離れなかった。
教室の後ろ、窓際。
僕の席からは、
その距離の変化が、
ゆっくりと見える。
近づいたり、
離れたり。
たぶん、
三人の中で一番、
距離を気にしているのはAだ。
そして、
それに最初に気づいたのは、
Bなのかもしれない。




