ABC物語 21 完結
ある日の放課後。
僕は、学校の帰り道で偶然、別の学校に通う幼なじみと再会した。
「久しぶりだな、元気だった?」
笑顔で話しかけられる。
僕も少し照れながら、返事をする。
話題は自然と昔のことになった。
すると、幼なじみがぽつりと言った。
「そういえば、Cって知ってる? あの子、昔の学校で…私の友達なんだ」
僕は驚いた。
Cのことを知っている人が、こんなところにもいるなんて。
幼なじみは少し間を置いて、続ける。
「C、前の学校で好きな人がいたのよ。
でも、結局告白はしなかったみたいで。
その人って、来年には別の学校に行く予定だったらしい」
僕は聞きながら、頭の中で線をつなぎ始める。
Cは、ずっと誰かを思っていたのか。
でも、告白する前に、その人は別の学校に行ってしまう。
幼なじみはさらに言う。
「でね、その子に会うために、Cは自分からその学校に行くって決めたんだって」
言葉は簡単なのに、胸に重く響く。
僕は静かに頷く。
言葉には出さないけれど、
Cの行動の理由が、少しだけ見えたような気がした。
そこで話は終わった。
僕たちは、またそれぞれの道を歩き出す。
夕暮れの風が肩を撫でる。
通りの向こうでは、子どもたちの声や自転車の音がする。
でも、僕の頭の中は静かだった。
帰り道、僕は思う。
今まで“点”として見てきたCやAやBの関係も、
こうして線としてつなげて考えれば、
少しずつ意味が見えてくるかもしれない、と。
頭の中で描く線の物語――
Cが好きだった人はAで、
告白する機会はなく、
そのまま二人は別れる。
でも後にAはある学校に進学し、
そこにCも転校してくる。
CはBと仲良くなり、
BはAに恋心を抱いている。
自分は少し邪魔な存在かもしれないと感じつつ、
三人は仲良くなる。
CはBのAへの思いを知っていて、
Aから告白されるけれど、
憧れのBの気持ちを思って、Aを振ることにする。
そして、二人の邪魔にならないように、
また転校していく。
僕はその場を離れ、歩きながら考えた。
線としてつないだCの物語――
三人の間にあった小さな揺れや、言葉にならなかった思いも、
すべてが一つの道筋として、静かに胸の中を通り抜けていく。
街灯の光が道に落ち、影をゆらす。
通りの風が、午後の熱をかすかに冷ます。
声もなく、足音だけが響く中で、
頭の中の線をたどりながら、
僕はふと思う。
Cはもうここにはいない。
Bも、Aも、
いつも通りに笑いながら過ごしているだろう。
でも、あの小さな出来事や想いは、
もう二度と取り戻せない。
僕の目には、三人が普通に笑い合う教室の風景が浮かぶ。
でもその裏には、音のない虚しさが静かに漂っている。
線の途中で途切れた想いが、
夕暮れの空気に溶けるように、
僕の胸の奥に消えていく。
歩き続けると
街はいつも通りで、
でも僕の胸には、点ではなく線としての物語と、
それに絡む静かな喪失感だけが残っていた。




