ABC物語 20
Cが転校してから、二か月ほどが過ぎた。
教室に入ると、
AもBも、表面的にはいつも通りだった。
笑顔で話し、ノートを見せ合い、
ちょっとした冗談で笑いあう。
でも、モブの僕から見ると、
その笑顔の奥には、
まだどこか空いた場所があることが分かる。
Aは、笑っているときも、
ふとした瞬間に遠くを見る目をする。
Bもまた、自然に笑っているけれど、
手や動作のどこかに、ほんの少しだけ力の抜けた瞬間がある。
教室の中では、
もうCの話題は口に出さない。
でも、時折、二人の目や表情に、
一か月前のような、
頻繁ではないけれど確かなCの気配が感じられる。
ノートに何かを書きながら、
ふと顔を上げたAが、
思わず窓の外を見つめる。
Bがその横顔に気づくこともある。
二人の間で言葉にはならないけれど、
わずかな沈黙がCの記憶を呼び起こす。
【メモ:
Cはいないけれど、影のように存在している】
二か月は、長いようで短かった。
日常には少しずつ慣れが生まれているけれど、
まだ三か月の安定感には届かない。
だから、AとBのやり取りの中には、
Cがいた頃の空気をほんのわずかに思い出す瞬間が、
ちらほらと混ざっている。
授業中も、休み時間も、
笑いはあるけれど、
ふとした一瞬に、
“ああ、Cならここで…”
という気配が心をよぎる。
表面的には仲良し。
でも、僕から見える空気は、
まだ完全に戻ってはいない。
Cが残した小さな隙間が、
二人の間に、静かに残っている。




