ABC物語 19
次の日。
教室に入ると、Cはいなかった。
いつもと同じ席。
同じ教室の空気。
でも、どこか微妙に軽く、どこか少し広くなったような空間がある。
Aは机に座り、ノートを広げている。
筆を動かす手はいつも通りだ。
でも、視線の先には、Cがいた昨日までの光景が、わずかに残っているように見えた。
Bは、隣の席に座る。
笑顔は作るけれど、少し控えめで、
言葉を選びながら話している。
Cがいないことで、会話のテンポが微妙に変わっていた。
僕の席から見える二人は、
表面上は以前のように仲良くしている。
笑い声もある。
でも、どこか心の奥で、
小さな空白を抱えたまま話しているように見えた。
Bは、何度もAを見つめる。
Cがいないことで、
自分の気持ちをどこに置けばいいのか、
少しだけ戸惑っている様子。
Aもまた、
無意識にBの表情や仕草を気にしている。
でも、何も言わない。
口に出せる言葉も、まだ見つからない。
放課後。
教室には、二人の声だけが静かに響く。
Bが軽く笑い、Aも少しだけ微笑む。
表面的には、
ただの仲良しのクラスメイト。
でも、僕から見れば、
Cがいた頃とは違う、
音のない間、少しだけ虚しさを帯びた空気が漂っていた。
二人の会話は続く。
笑いもある。
でも、
その裏に、
Cがいなくなったことで生まれた微かな距離が、
静かに流れているのが見える。
僕の席から見えるのは、
いつも通りの教室と、
誰も言わないけれど、確かに存在する小さな空白。
笑い声の中に、
消えない虚しさが、わずかに残っている。




