ABC物語 16
ある日の放課後。
教室はいつも通り、少しざわついていた。
Cが、机に座ったまま、少し俯いている。
そして、静かに口を開いた。
「私、転校することになりました」
教室のざわめきが、
一瞬にして消えた。
AもBも、もちろん僕も、
言葉が出ない。
Bは目を大きくして、
Aは驚いたまま立っていた。
二人とも、Cがそんなことを言うとは思っていなかったようだった。
【メモ:
AとB、驚き】
その瞬間、
三人の間にあった、
微妙な距離感のバランスが、
スパッと変わったように見えた。
以前のように自然に近づける空気ではなく、
それぞれが少しだけ身を引いたような、
新しい“間”が生まれた。
放課後、BはCのところに歩み寄る。
「なんで、もっと早く言わなかったの?」
声は少し震えている。
でもBの口調には、恨みはない。
ただ、戸惑いと寂しさが混ざっている。
Cは軽く首を振った。
「ごめん、言うタイミングが……」
Bは、それ以上言わずに、
少しだけ離れたところから、Cを見つめていた。
Aはその横で、何も言わず立っていた。
でも、心の中で、
小さな問いを抱えているようだった。
あとで二人きりになったとき、Aは小さくつぶやく。
「…これ、私のせい、かな」
Cは、すぐに首を振った。
「違うよ、Aのせいじゃない」
Aはそれでも少し考え込むけれど、
恨みではなく、ただ自分のせいかもしれないという静かな思い。
Bはまだ少し離れた場所で、
Cの言葉を受け止めている。
教室の空気は、
以前のようなざわめきに戻った。
でも、
三人の間に流れる距離感は、
確実に変わったままだった。




