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 ABC物語  作者: San


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10/21

ABC物語 10

それからの日々は、

見た目だけなら、前よりも穏やかだった。


AとBとCは、

前ほど気まずくならずに話すようになったし、

三人で笑う場面も増えた。


教室の後ろ、窓際。

僕の席からは、

三人の輪が、少しずつ形を変えていくのが見えた。


昼休み。

AとCが、昨日のドラマの話で盛り上がっていた。

二人とも、同じ回を見ていたらしい。


「そこ、めっちゃ良かったよな」


Aが言うと、

Cは少し間を置いてから、うなずいた。


その横で、

Bは一拍遅れて笑った。


声は明るい。

いつもと変わらない笑い方。

でも、

AとCが笑った“あと”に、

Bの笑いが重なる。


ほんの一瞬のズレ。

たぶん、誰も気にしていない。


【メモ:

Bの笑い、少しだけ遅れる】


次の日。

授業の合間。


Aが、シャーペンの芯を切らして困っていた。

Cがすぐに予備を差し出した。


「ありがとう」


Aはそのまま受け取った。

Bは、カバンの中を探して、

同じものを見つけていたけれど、

出す前に、手を止めた。


それから、

何もなかったみたいに、

そのシャーペンをしまった。


【メモ:

B、差し出そうとしてやめた】


放課後。

三人で帰る日もあるし、

それぞれ別々に帰る日もある。


この日は、

校門の前まで三人で並んで歩いていた。


途中で、

AとCの会話が、自然と前に流れていった。

Bは、その少し後ろを歩く形になる。


距離は、

二歩分くらい。

遠くはない。

でも、近くもない。


Bは、

そのまま歩幅を合わせようとして、

一度だけ、足を速めた。


すぐに、元の速さに戻った。


【メモ:

B、距離を詰めようとしてやめた】


教室に戻る途中。

三人で並んでいるとき、

Bがふと、Cの方を見て言った。


「今日の委員会、どうだった?」


Cは少し考えてから、

短く答えた。


「特に、何も」


それだけの会話なのに、

Bは必要以上にうなずいて、

話題を続けようとした。


Aは、

その様子を見ていないふりをしていた。


【メモ:

B、会話をつなごうとしてる】


どれも、

大した出来事じゃない。


誰かが泣いたわけでもないし、

喧嘩をしたわけでもない。


ただ、

前よりも“頑張っている感じ”が、

Bから少しだけ見える。


無理をしている、

と断言できるほどじゃない。


でも、

無理をしていない、とも言い切れない。


【メモ:

Bは優しい

でも、その優しさは

少しだけ“力が入っている

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