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矢久勝基、日記  作者: 矢久 勝基


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11月12日 『オッサン向けのファンタジー』

 だれか、『オッサン向けファンタジー』と言われ、最近の代表作を上げられます? ……ちなみに『オッサンが主人公』とは限らない。『オッサンが主人公だからオッサン向け』ではない。

 もしあったらゴメン。『ベルセルク』とか『進撃の巨人』ってオッサン用?(漫画やん……)

 ……なにをもって『オッサン用』とするかは、これはもうあくまで個人的な尺度でしかないけど、例えば優越感や爽快感を主とするのが今の若者向けファンタジーであるなら、そうではないもの。

 いや、実際はそれだけではないんだが、所見を述べ始めると主旨から外れるので置いておいて、オッサン向けファンタジーが少ないのは、たぶん「オッサンはあんまファンタジー読まないんじゃね?」ってとこなんだと思う。……っていうのが昨日の話題。


 だけど、オッサンはファンタジーに免疫がないのか。オッサンはファンタジーを求めていないのか。

 ……違うよきっと。きっと、自分の身の丈にあった(って言うと語弊があるけど)ファンタジー作品が、ないだけなんじゃないだろうか。

 日本で社会現象にもなったドラゴンクエストの第一作目が発売したのが1986年だそうだ。これを当時、中学生くらいまでが遊んでいたと仮定して、1971年……つまり現在54歳までの人より若ければ、少なからずその洗礼を受けたと思う。

 そこから空前の剣と魔法ブームがやってきた。

 とかいうと、「いやいやウルティマ、ウィザードリィ、D&D……」とか言い始める奴がいるかもしれないけど、いやいや、やはり日本が剣と魔法に染まったのは、やはり『ドラクエ、FF』の波だっただろうと思う。『ホイミ、ケアルガ、まんきんたん』と聞いて、一つも記憶にヒットしない人間など、……うーん、男なら四割くらいしかいないだろう。(まんきんたんなんて知らねーか(大笑))

 それくらい、誰もが一度は剣と魔法の世界に没頭したはずだ。

 だから、〝免疫がない〟……わけがない。

 世間が思うより、あの世界に育てられたオッサンは少なくないはずだし、であれば、何かのきっかけでその世界に触れてみたい気持ちだって、あるんじゃないかと思うのだ。


 そういう層に響くファンタジーを描いてるんじゃないか……と、常々思っている。なんというか、思想? 開発コンセプト?……その辺が、いまの若年層向けのファンタジーと違っているように思うし、オッサンにならそれが分かってもらえるんじゃないかと……。

 というのも、この十数年、『カクヨム』や『小説家になろう』で矢久作品を評価してくれた方々は、その多くが若年層ではない……というのが根拠にある。手前味噌な考え方で申し訳ないけど、だから、新人賞では通用しなかったのだとも思っている部分もある。

 つまり、若年層向けの賞では「オッサン臭すぎる」と。一般層向けの賞では「ファンタジーは若年層のものだから」と……。

 ……コウモリのような微妙な位置にあるのが矢久作品だと、思い込んでいるから、その中間層というニッチな枠をターゲットにして、勝負に出たいのだ。


 自信……?

 自信なんかはない。

 送り出す作品は自信作だけど、だからとて、自信をどうこう言うには、俺はこれまで無視をされ過ぎた。

 実際、それ以前に小説という分野それ自体が斜陽だし、『オッサンファンタジー』の需要が今までなかった以上、全国のオッサンたちが矢久作品に気づいてくれるかも分からない。

 ま、だけどさ……始めないと始まらないわけよ。

 何億円もかけて失敗する映画もある。時代がどう流れていくかなんて、だれにも分からない。何がヒットするかだって、同じことだ。


 だからまぁ、「ふぅ、やれやれ、よっこらしょ」って感じよ。

 そんな、悠長な態度の中で、心をふつふつと燃やしている状態だ。

 『21世紀におけるオッサンファンタジーの金字塔』というものを打ち立てる男に、俺はなる!!……てさ(笑)。

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個人的には、ロイス・マクマスター・ビジョルドの五神教シリーズの、『魔術師ペンリック』シリーズや『チャリオン』シリーズなどはいかがかと思うのですが。 個人の悩みよりも大きな物語に主眼が置かれている気が…
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