第99話 モブキャラ、弾ける
「公然の場で全裸になる気分はどうだ?」
「最悪ですよ!! 一体何を考えてるんですか!!」
涙目で俺を睨みつけるナターシア。
俺の勝利で終わっても尚、会場は別の意味で盛り上がりを見せている。
美人の全裸姿に誰もが夢中なのだろう。
「殺してくれと言ったろ? だから叶えてやったんだ」
「この悪魔め……!!」
更に何か言いたげな様子だが、ナターシアは逃げもせずその場に留まり続けた。
社会的に殺される。ナターシアの要望からすれば別に間違ったことはしていない。
ナターシア自身は敗者であり強くものを言える立場じゃない。それがより一層、彼女に複雑な気持ちを抱かせていた。
「ああもう!! 見たけりゃ見なさい!!」
「「「おぉー……」」」
「なんですか今の歓声は!! 風紀委員会の席から聞こえましたよ!?」
ヤケクソ気味に手足を広げた途端、会場内がいやらしい空気に包まれる。
ナターシアの裸はあの夜にじっくり見させてもらったが、やはりいいものだ。
「ゼクス様ってこんなに強かったんだ」
「流石だよねー」
「一生破教委員会について行こっ!!」
と、破教委員会の席から聞こえてくる俺への賞賛の声。この試合で俺に対する信仰心が増したか。
くくく、この調子でどんどん信者を集めよう。
立場がよくなれば、生徒会にも屈しない強固な組織ができあがる。
そうすれば俺が望む悪役ヒロインの救済もよりやりやすく……
(楽しいなあ)
自ら行動を起こし、何かを変えていくという実感。
それが俺の中に熱いものを込み上げさせていた。
◇◇◇
「ほんっっっとうに疲れましたわ!! 今日は思いっきり弾けますわよ!!」
そして後日。
寮内にて際どいバニースーツに身を包んだレアが力強くグラスを掲げていた。
「後処理がここまで大変とはな……破教委員会も大きくなった」
「いつまで経っても書類と問題が積まれるばかり……イライラしますわ!!」
グイッとグラスに入ったジュースを飲むレア。
大会が終わった後、俺たちを待っていたのは……膨大な量の事務作業。
風紀委員長を倒したことで破教委員会に対する信頼度があがり、多くの生徒が入会を志望してきた。
当然、全員を入れるわけにいかず面接やら書類選考やらが必要になるわけだが……破教委員会の生徒は揉め事が多い。
爆発事故やら、
他委員会との争い、
更には過激すぎるデモなんかも。
結果、トラブルの処理含めて尋常じゃない量の仕事がやってきた。
「たまには悪くないね。ダーリンもいっぱい見てくれるし♡」
「流石に恥ずかしい。これ、ただの下着……」
「こういう時は思いっきり羽目を外した方がスッキリしますのよ」
サーシャは腹部や足を露出したメイド服を着ていた。
リーンは透け透けのベビードールに身を包んでいた。
素晴らしい。三人とも違うエロさに満ちていて興奮する。
忙しい日々のご褒美でこれを拝めるなら、いくらでも頑張れそうだ。
「俺もこれを着るとは思わなかったが……意外と開放的でいいな」
そして俺は例のマイクロビキニを着ていた。
何故かって? 貴方も脱げとレアに強く言われたからだ。
面白半分で着てみたが案外悪くない。
色々出てはいけないものが出ているが。
ちなみに三人の反応。
レアは楽しそうで、
サーシャは凄く興奮して、
リーンはチラチラ見ていた。
皆が喜んでくれるならいいや。
「はは……終わりましたね……」
そして今日はもう一人ゲストが来た。
死んだ魚のような目で椅子にもたれかかり、あのマイクロビキニを着た風紀委員長様だ。
「どうした? 俺に着てほしかったんだろ?」
「今は突っ込む気力も沸きませんよ……」
メディが用意してくれた豪華な食事にすら手が付けられない有様。
なんでも風紀委員会を脱退する生徒が増えているとか。
俺との試合に負けた事で委員長としての信頼が失われ、別の委員会に希望を持ち始めた。
覚悟はしていたがそれでも抜ける人数が……というわけで絶賛落ち込み中だ。
「勝手に失望するのはいいですよ。けど、私よりも強い風紀委員がいないのは何故ですか。喧嘩を売る子達も全員大したことないし、なのに人はいなくなって……あああああああああああ」
ネガティブな愚痴が次々と吐かれていく。
顔を机に突っ伏して嫌だ嫌だと頭を震わせるという、なんとも悲しげな姿。
「俺は嬉しいぜ? 風紀委員から人が来るから」
「私は最悪ですよ!! はぁあああ……」
これは……相当きているな。
忙しいのに人が減ってるんじゃ、色々言いたくなる気持ちもわかる。
「ナターシア」
「はい? んんっ!?」
俺はナターシアの口元を塞ぐようにキスをした。
悲しさを、それ以上の快楽で上書きするように。
「な、なにを!?」
「今は忘れてパーッと弾けようぜ。忙しいんだから、楽しめる時に楽しまなくちゃ」
「それは……そうですけど」
口をぱくぱくとさせ、顔を俯けさせるナターシア。
そんな彼女の後ろに俺は回り込むと、両肩に手を置きグッと力を入れた。
「お゛お゛っ♡」
相変わらず汚い喘ぎ声。
口元からヨダレなんか垂らしちゃって。
「ほらほら、今はリラックスするのが一番だぞー?」
「それはっ、わかって……あ゛あ゛んっ♡」
足を閉じ、与えられた快楽を耐えるように身体を震わせる。
マッサージが彼女の脳内を幸福で満たし、やがて性という欲望を沸き上がらせる。
詳しくは言えないが、ナターシアの全身がよからぬ反応を起こしていた。
「はぁっ……はぁーっ……♡」
その乱れた姿が非常にそそる。
彼女をものにしたいと俺の本能が強く訴えかける。
「……下品な声ですわね。ここで弱みを増やすのもありかしら」
と、何故かレアがナターシアの方へ迫った。
「どうした?」
「ふふっ……わたくしも遊びたいのよ……」
色気のある舌なめずり。瞳はどこか野性味を感じさせて、その視線の先には未だ乱れる彼女の姿が。
ナターシアの顔に高さを合わせすると、レアは一呼吸置いた後に
「ん……」
「んんっ!?」
ナターシアの唇に軽くキスをした。
「へ!? レ、レア・スカーレット!? あ、あなた何を!?」
「ねぇゼクス。わたくしも彼女に手を出していいかしら?」
「構わんぞ。というか意外と幅広いんだな」
「性にこだわりはありませんわ。勿論、一番は貴方ですけど♡」
そして俺の唇にもキスをする。
あのレアがここまで欲望に溢れた姿を見せるとは。
男女構わず食い散らかす、誰もが恐れる氷結姫。
素晴らしい。
気品ある悪の姿こそ、レア・スカーレットを最もよく表している。
もっと彼女が欲に乱れる姿が見たい。
……いい事を思いついた。
「ついでにサーシャとリーンも味わったらどうだ?」
「あら、それも面白そうね」
「「へっ!?」」
まさか自分が!? とサーシャとリーンが食べる手を止めて俺達を凝視する。
「なんでアタシがレアと!? この身体はダーリンのものだ!!」
「予測不能……何されるかわからない……」
「安心しなさいな。わたくしが優しく扱いますから」
乾いた笑み。二人は未知の世界に恐れを抱き、互いに抱き合う。
「俺とレアが美少女たちと交じり合う……最高だな」
「弾ける時はとことん弾けませんと。パーティは夜が本番ですわ♪」
一方の俺たちはこれから行われるであろう夜のパーティへ欲望を膨らませていた。
全てを解放する。それが俺たちからリミッターを外し、本能のままに動く獣へと変貌させる。
「く、狂ってます……!! この二人はなんなんですかぁ……!!」
一歩後ずさりしたナターシアの身体を二人で掴む。
そしてそのままベッドへと運ばれてしまった。
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