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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
5章 モブキャラ、風紀委員会と接触する

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第98話 モブキャラ、風紀委員長と戦う②

「さて、まずはあれをなんとかしないとな……」


 武器の切り替え。

 完全に隙を潰したうえで魔法を“先行入力”する、イカれた性能だ。

 これを突破しない限り勝ちはない。


「ふっ!!」


 だが対策はもう考えてある。

 俺は再び前へと飛び出し、ナイフを構える。


「何度やっても同じですよ!!」


 大量の弓矢が襲い掛かってくる。

 だが所詮は連射で、一発の威力は大したことがない。

 軽く被弾しながらも前進を続け、少しずつナターシアへ距離を詰めていった。


「はぁっ!!」


 一定の間合いに入った瞬間、弓が鞭に切り替わる。

 長くしならせた鞭が俺へ一気に振り抜かれ――誰もがまた投げ飛ばされると思っただろう。


「もう読んでいるんだよ」

「なっ!?」


 伸びた鞭を俺はガシッと掴み、そのまま引き寄せてナターシアの身体を宙へ浮かせた。


「ほら、お返しだ!!」

「ぁあああああああああっ!!」


 ドォオオオオン!!

 砂埃と衝撃音が場内を揺らす。


「まさか切り替えを見越したうえでの行動とは……やりますね」

「イレギュラーにはイレギュラーを。魔力充填に不可能はない」

「随分と魔法を信頼してますね……」


 魔力で身体能力と視力を強化している。

 動きがスローモーションのように見えれば、武器の攻撃も対処しやすい。


「白か……」


 もちろん、スカートの中もバッチリ見えた。いい光景だ。


「し、白? ま、まさか!!」

「感謝する」

「試合中に何を見てるんですか!! この変態!!」


 真っ赤な顔で跳ね起きるナターシア。


「こうなったら徹底的にやりますからね!!」


 彼女が手を掲げると、空中に魔力の腕が出現した。

 しかも弓を握っている。


「……まじか」

「デュアルウェポンは伊達じゃないって教えてあげますよ!!」


 パチン、と鞭が地面を叩いた瞬間、魔力腕から弓矢が放たれる。


「はぁっ!!」


 魔法の精度も性能も本体と全く同じ。

 器用すぎるデュアルウェポンに“手”を増やすなんて、本当にチートだ。


「そこっ!!」

「ぐっ!!」


 近づこうとすると鞭が阻む。

 その間にも矢が飛んでくる。

 完全に隙がなく、永久コンボのような状態だ。


 ナターシアは中遠距離に長けている。

 接近戦主体の俺には最悪の相性――絶体絶命だ。


「これでも……!」


 牽制にクラッシュビーンズを投げるも、速度の遅さで簡単に見切られる。

 ナターシアは指を鳴らし、


「えぇ……そんなのアリか」

「アリですよ。できるので」


 魔力腕がもう二本追加された。

 腕が合計六つ。千手観音でも作る気か。


「隙あり」

「っ!!」


 魔力腕に足を掴まれる。力が強く、魔力充填でもすぐには抜けない。

 もがく俺へナターシアが迫り――


「がぁあああああああっ!!」


 魔力のこもった鋭い蹴りが命中し、身体が宙に浮く。

 ガシャアアン!!


(なるほど……)


 想像以上の強敵だ。

 “負け”の二文字が一瞬よぎる。

 原作からの強化が尋常じゃない。


「はぁ……はぁ……」


 ただ、ナターシアも余裕ではない。

 肩で息をし、視線は俺から外さない。

 魔力腕の操作に相当集中力を使うのだろう。


 脳裏の“負け”が掻き消えた。


「はぁあああああああ!!」


 ナイフに魔力を込め光装剣へ。

 俺は迫り、ナターシアは数々の腕で迎え撃つ。


 攻撃が当たってもいい。

 動き続けろ。勝機は必ずある。


「カハッ……!!」


 ナターシアが血を吐いた。

 無理な集中が限界に達している。

 それでも攻撃を止めない――絶対に負けたくないという執念。


 気迫に息を飲む。


「ならば……」


 俺も死ぬ覚悟で行く。

 隙を見つけ、遠くのポイントへ跳び――


「なっ……!?」


 ピタリと静止した。


「何のつもりで……!!」


 大きすぎる隙にナターシアが動揺し、全攻撃を一斉に放つ。

 魔力腕、弓、鞭……

 ありとあらゆる攻撃が俺へ迫るが――


「魔力神填」


 すべて、神速の前に置き去りにされた。


「それが貴方の……!? でも、防げば……!!」


 二つの魔力腕を防御に残していた彼女。

 腕が俺の前にクロスしてガードを展開する。


「甘い」


 その程度で魔力神填は止まらない。

 巨大な腕を、俺はたったひと蹴りで粉砕した。


「ふんっ!!」

「ガッ……!!」


 接近して、ナターシアの身体を思いきり打ち上げる。

 天高く舞い、動かない。


 俺は跳躍し、彼女の元へ迫る。


「一刀両断……!!」


 光装剣がナターシアの腹部を切り裂いた。


(……動かないな)


 二撃で戦闘不能。勝負は決した。

 俺は彼女の身体を抱え、ゆっくりと着地する。


「……よっと」


 こうして見ると可愛い。

 襲いたくなるほどだが、それは全部終わってからだ。


「おーい、審判?」

「はっ!! しょ、勝者!! ゼクス・バーザム!!」


 勝者宣言とともに場内が沸きあがる。


「……これは?」

「お、意外と早く目覚めたな」


 治癒の魔力を流し込んでいると、ナターシアが目を開いた。

 周囲を確認し、敗北を悟ると、俺の袖を強く掴んだ。


「……何故、殺さないのです」

「ん?」


 寝起きとは思えない物騒な言葉。


「私は勝負に負けました。風紀委員長としてこの失態は大きすぎます。だから……殺してください」


 死をもって責任を償う、か。

 勝てると思っていたから余裕だったのだろう。


「……わかった」


 ナイフを抜くと、彼女は目を閉じた。

 覚悟を決めた顔だ。


「一刀両断」


 俺は彼女を宙へ投げ、ナイフを振るう。


「……ん?」


 落ちてきた身体を優しくキャッチ。

 傷一つついていない。

 短すぎる“無音の時間”に不安を覚えたのか、ナターシアが目を開く。


 ハラッ……


「へっ?」


 安心しろ。ちゃんと殺したぞ。

 社会的にな。


「きゃあああああああああっ!?」


 衣類がすべて斬り裂かれ、ナターシアは一糸まとわぬ姿に。

 悲鳴を上げて身体を隠し、うずくまった。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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