第96話 モブキャラ、提案する
「ここに裏切り者の首が入っている。見るか?」
「……遠慮します」
翌日、破教委員会の施設にナターシアを呼び出し、例の件について話をした。
ある程度、知ってはいたのか動揺は少ない。
ただ、パルテノの首が入った布袋を見た時はさすがに目を見開いていたが。
「反抗勢力がいたのはある程度把握していました。風紀委員長という立場ですからね」
「こいつら俺にまで牙を向けてきたからな。だからきつーいお仕置きをやった」
「……ここまでとは思いませんよ」
俺が主にやったことは。
まずはパルテノを支持する生徒を全員メモした。
素直に名乗れば許してやると言った途端、あっさり白状しはじめて面白かった。
まあ、そのメモはナターシアに渡したところだから、そのうち風紀委員会を追い出されるだろうけど。
そして施設の解体。
正確に言えば、Dクラスの連中に施設を解放してやったのだ。
元々、ろくな校舎がなかったDクラスの連中からすれば、ある程度整備された土地があるというのは非常に喜ばしいことだ。
破教委員会の支持は得られるし、パルテノ派閥の残党も居場所を失って路頭に迷う。
貴重な資源は全部回収したからな。ヤツらは全て失ったというわけだ。
「ゼクス・バーザム。貴方を狙った理由はなんだったんですか?」
「それが面白くてな。ヤツら俺が新しい風紀委員長になると思ったらしい」
「はぁ?」
現風紀委員長も呆れるほど、根拠のない目的。
俺たちは風紀委員会を弱らせようとしたんだぞ?
なのに風紀委員長になるって……話が飛びすぎてる。
今は破教委員会で忙しいってのに、これ以上責任を増やされてたまるか。
「私の席は簡単に譲りませんよ。それが風紀委員長としての威厳ですから」
「威厳というか地位が大事なんだろ」
「……それはそうですけど」
妙に素直になったよな。
神聖水で心の余裕まで生まれたか?
「裏切り者を始末してくれたのは感謝しています。殺す理由がなかったので……」
「どうも。それで報酬だが……」
「お金ならここに」
ジャラジャラと音を立てる布袋がテーブルに置かれる。
この重みは結構入ってる。そこまで貰う予定ではなかったが。
余分に持ってきたのは「報酬に関するトラブルは非効率だから」というナターシアらしい理由からだろう。
「もう一声、だな」
「はい?」
だが俺は満足しなかった。
「これ以上は無理です。風紀委員会は金庫じゃありません」
「お金は十分だ……もっと別のものが欲しくなってな」
「別の……?」
じっとナターシアの身体を見る。
彼女は何を求めているのかイマイチ理解していなかったが、俺からの視線に気づいた後は恥ずかしそうに自分の身体を手で隠すような仕草をとる。
「ま、またするんですか!?」
「それもあるが……ナターシアには着てほしい服がある」
「着てほしい服?」
困惑するナターシアの前に、俺は待ってましたと言わんばかりに引き出しを開ける。
そして出したものとは。
「はぁああああああああああああ!?」
黒いビキニ。
しかも布面積が狭く、大事な部分しか隠せない。
いわゆるマイクロビキニというヤツだ。
「ナターシアとの試合。俺が勝ったら着てもらおう」
「絶対に嫌です!! 大体、何故私がそんなハレンチな服を!?」
「ハレンチだからに決まってるじゃないか」
「理由になってません!!」
一度ヤった関係だし大丈夫だと思ったが。
裸になるのと恥ずかしい服を着るのはまた別って事か?
「……でしたらこうしましょう」
「ん?」
何かを思いついたのか。
怪しげな笑みを浮かべながら、ナターシアは顔を近づける。
「私が勝ったら、そのビキニは貴方に着てもらいましょう!!」
「……ほう」
ナターシアの気持ちがわかった。
絶対に着たくない。
「そんなに俺のマイクロビキニが見たかったのか?」
「違います!! 貴方がそれを着る地獄を見たいんですよ……ふふふ」
確かに放送事故どころじゃ済まないな。
男の、しかも破教委員会の代表である俺のマイクロビキニ姿。
喜ぶなんてサーシャくらいだ。いや、さすがのサーシャも拒否するか? とにかくそんな惨劇は絶対に回避しなければ。
「マイクロビキニを賭けた勝負か……面白い」
「勝つのは私です!! せいぜい着る準備でもしてなさい!!」
乗り気になった。
そう確信したかのようにナターシアが堂々とした立ち振る舞いで部屋を後にする。
「……あいつ、忘れてないか?」
負けたらお前がマイクロビキニを着るんだぞ?
本人は完全に勝ったつもりでいるが……まぁいい。
当日、俺が現実を突きつけるとしよう。
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