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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
5章 モブキャラ、風紀委員会と接触する

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第95話 モブキャラ、副委員長と戦う

「魔力充填……」


 脚部に魔力を込める。

 力が充填され、そのまま一気にパルテノの元へ駆け出した。


「あれれー? そんな手が通じると思うー?」


 対するパルテノもヘラヘラとした態度のまま、魔力充填を使用する。


 超加速には超加速を。

 単純だが、同じ強化内容では戦況は硬直するだけだ。


 長引くほど、手数の多いパルテノが有利になる。


「ただの加速じゃないぜ?」

「なっ!!」


 しかし、俺はそこで止まらない。

 ブーメランナイフを前方に投げ、さらに牽制として足元へクラッシュビーンズを飛ばした。


 意外な武器の登場に驚く副委員長。

 慌ててその場に留まり、サーシャのシールドビットで防ごうとしたのだが――


「隙ありぃ!!」

「ぐっ……あああああああっ!!」


 俺本人がシールドビットを飛び越え、そのまま顔面へ蹴りを叩き込んだ。

 パルテノは勢いよく吹き飛び、付近の壁へと身体を叩きつける。


「がっ!! ぐっ!! ごっ!!」


 同時に発射していたブーメランナイフとクラッシュビーンズがパルテノへ直撃する。

 全身に切り傷と打ち身が増え、目立つ怪我も多くなってきた。


「一度に発動できる魔法は一つ……手数は多いが爆発力がないな」

「何故そのことを……!!」

「俺は生まれ変わったからな。全部知っている」


 コピー魔法には欠点がある。

 それは――コピーした魔法を同時発動できないという点だ。


 氷魔法なら氷魔法だけ。

 シールドビットならシールドビットだけ。

 しかも一度に使用できる魔法は一種類まで。


 強力すぎるメリットへの代償として課されたデメリットだ。


 一見すると大したことがないように思えるかもしれない。

 だが、複数発動による戦術を取れないのは致命的だ。事実、魔力充填の上位互換ではないかと期待されていたコピー魔法は、このデメリットによって環境最上位を取れなかったほどである。


 魔力充填をコピーされても、「魔力充填+α」の戦術には対抗できない。


(というか、魔力充填だけで十分強いしな)


 ランクマでは「見た魔法をコピー+任意の魔法3つまで使用可」という制限だったはずだ。

 どちらにせよ、同時発動できない時点で終わっている。


 所詮は初見殺し。

 俺の敵ではない。


「まさかそこまで見切られるとはねぇ……やるじゃん」

「そりゃどーも」


 レアたちも風紀委員を相手にしていて手が回らない。

 ここは俺が決着をつけるしかない。


 二本のナイフを持ち、パルテノへ歩み寄ると――


「コピー……デュアルウェポン」

「っ!!」


 パルテノの手元に二種類の武器が出現した。

 鞭と弓。それは、今後戦うナターシアの固有武器そのもの。


「知ってるー? 手数の少なさは魔法の質でカバーすればいいんだよっ!!」


 狂気じみた笑みとともに、無数の弓矢が放たれる。

 ナターシアの魔法までコピーしていたのか。


 参ったな……最も相性が悪い魔法だ。

 副委員長の特権をフル活用しやがって。


「ふっ!! ほっ!! はっ!!」


 俺は迫る弓矢をナイフで次々斬り落とす。

 軌道は複雑で、弾道を曲げる器用な真似までしてくる。

 一瞬も気が抜けない。


「ぎゃははは!! これもいいよー!!」


 弓矢に対処している俺へ、長い鞭が伸びてくる。

 このコンボは危険だ!!

 後退しようとするが、鞭は見た目以上に長く伸び、俺を捉えにくる。


「ガッ!!」


 さらに足元を一本の弓矢が貫いた。

 バランスを崩し、スピードが落ちる。

 その隙に鞭が俺へ届いた。


 パァン!!


「うああああああああっ!!」


 今度は俺が吹き飛ばされる。

 地面を転がり、二、三回跳ねてようやく止まった。


(結構重いな……)


 魔力充填は使ってないよな?

 多分、副委員長自身の魔力だけでここまで威力を上げている。


 一回の戦闘における手数の少なさがコピー魔法の弱点。

 しかし、ナターシアのデュアルウェポンはそれを補ってしまう。

 魔法自体の手数が多いからだ。


 しかも他の魔法もコピーで使用できるため、環境では必ずデュアルウェポンがセットされていた。

 というか、基本はこの魔法で戦い、他の魔法は局所的に使うのが主流だった。


「ま、相手が俺じゃなければな」


 環境コンボがキツい?

 コピー魔法に勝てない?


 そんなわけがない。

 俺はこのゲームをやり込んだ。

 知っている魔法に負けるほど落ちぶれてはいない。


「くたばっていいんじゃないかなぁ!?」


 再び放たれる弓矢の雨と、鋭く伸びる一本の鞭。

 よく見るとパルテノの傷が治っている。

 多分、魔力充填を使ったのだろう。


「いや? くたばるのはお前だ」


 その程度で俺は止まらない。

 魔力充填を発動し、再びパルテノへ突っ込む。


「単純だなぁ!! それボコされるよー!?」


 単純で結構。

 魔力充填はシンプルだから強い。

 ステータスの暴力という、最も強力な戦法を効率よく叶えてくれる。


「魔力神填」


 俺はナイフへ極限まで魔力を注ぎ込んだ。

 一振りすると、斬撃の弾が飛ぶ。


「なっ……!?」


 弓矢も、鞭も、

 たった一振りで消し炭になっていく。


 何が起きた?

 あの魔法は一体……?


 そう思っているだろうが、もう遅い。


 避ける間もなく、斬撃弾がパルテノへ襲いかかる。


 ズバァアアアアアアアアアアッ!!


「がぁああああああああああああ!!」


 斬撃による重い一撃。

 パルテノの身体をズタズタに裂き、全身を血まみれに変えていく。


 ……こうして見ると、殺意が高い魔法だな。

 魔力充填の進化系だから当然か。


「さて、さっさと変な組織を解体してもらおうか」


 もう一撃、とナイフを構えたその時。

 パルテノの瞳がギュルンと見開く。


「まだ、終わってなぁああああああああい!!」


 この期に及んでまだ足掻くとは。

 意外と根性があるらしい。


「魔力神填だよね? いい魔法じゃん」

「自慢の切り札だ。今のところ負けるつもりはない」

「ふふっ、そんな魔法を見せていいんだー?」


 あ――まさか。


「使おっかなぁ!! コピーで!!」

「ちょ、まて……」


 それはいけない。

 悪い意味で嫌な予感がして止めようとしたが、もう遅い。

 魔力がパルテノの全身を駆け巡り、莫大な力が……


「ぎゃあああああああああああっ!?」


 全身の肉が爆ぜ、血が噴き出した。


「あーあ、だから止めたのに」

「なんだこれえ!? ぁあああああああああ!!」


 魔力神填は、俺ですら過酷なトレーニングの末に会得した魔法だ。

 慣れない身体で使えば――そりゃ爆発するに決まってる。


「首は綺麗だな……よしっ」

「へ? な、なにを……」


 もう終わりでいいだろ。

 返事も聞かず、俺は悶え苦しむパルテノの首を跳ね飛ばした。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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