第94話 モブキャラ、副委員長に出会う
「ぐほぉっ!!」
「げへっ!!」
「がはっ!!」
襲いかかる風紀委員たちを次々と蹴散らしていく。
――意外と弱いな?
最初に出会った時は、立ち回りも含めて厄介だと感じていたが……
粗の多い作戦も含めて、副委員長を慕う連中は優秀な奴がいないのかもしれない。
その時、レアたちが俺のもとへ戻ってきた。リーンも一緒だ。
「一人で随分片付けちゃって。わたくし達は必要なのかしら?」
「もちろんだ。お前たちは生きがいだからな」
「調子のいいことを」と小言を吐きながら、レアは氷魔法で連中を次々と氷漬けにしていく。
意外と早く片付きそうだな、なんて思っていたその時――
「……置いてかれた」
「不快な思いをさせてすまない」
「大丈夫。ちょっと拗ねただけ」
「後でなんでも言うこと聞くから、な?」
ぷくーっと頬を膨らませるリーン。
タルの隙間から俺たちの様子を見ていたのだろう。
助けに来てくれたと思ったら、何故か引き返す俺たちの姿――一言愚痴のひとつも吐きたくなるのは当然だ。
誤魔化すように彼女の頭を撫でながら、俺は風紀委員たちへと向き直る。
「まだやるか? さっさと大将を呼んだ方が身のためだぞ?」
「くっそぉ……!!」
未だに各部屋から飛び出してくる風紀委員たち。
だが、明らかに戦意を喪失しており、武器を握る手にも力がこもっていない。
このまま全滅させてもいい。
最初からそのつもりだったからな。
今のうちに全員叩きのめして、ナターシアとの決闘が終わるまで寝てもらおう。
怯える風紀委員たちに構わず、俺はナイフを突きつけながら前進する。
「えー、何これ。マジ終わってんじゃん」
階段の方から、チャラついた声が響き渡った。
「お前がパルテノか? くだらない暗殺計画を立てやがって」
「別に殺すつもりはなかったよ? ただ試していただけ」
「試す?」
「そ。委員長のお気に入りがどれほどやれるのか、試してみたくてね」
俺がお気に入り、ねぇ……ずいぶん依存してくれてるじゃないか。
後でお菓子でも持って顔を出してやるか。
「まさか襲撃してくるとは思わなかったよ。やべー、やべー」
「お気楽な方ですわね。今の状況がわかってないのかしら?」
武器を突きつけるレアたち。
圧倒的不利な状況にも関わらず、パルテノはヘラヘラした態度を崩さない。
「副委員長様を舐めんなよー? お前らなんて捻り潰せるっての!!」
瞬間、パルテノの姿がフッと消えた。
どこに行った? 集中して、周囲の気配を探る。
……上か。
随分と単純な行動を取るな。風紀委員がいるとはいえ、俺たちの方が有利――
「コピー……氷結破!!」
「っ!?」
パルテノが放ったのは、辺り一面を凍りつかせる氷の魔法。
まさしくレアの魔法と酷似していた。
「わたくしの魔法を!?」
「意味わかんないねぇ……シールドビットォ!!」
サーシャの掛け声に反応し、集結したビットが氷魔法を防ぐ。
――あいつ、氷魔法を使うのか?
原作にいないキャラだから、パターンが掴めない。
「それが君の魔法か……使わせてもらおう」
「へっ?」
パルテノが指をパチンと鳴らす。
すると、周囲にサーシャのシールドビットと同じものが出現した。
「シールドビットが!? なんで使えるんだい!?」
「それが僕の魔法だからさっ☆」
一斉に襲いかかるビットたち。
サーシャは困惑しながらシールドビットをパージし、そのままぶつけるように射出する。
「精度が高い……!!」
「副委員長だからねぇ!!」
しかし、ビットは素直にぶつかってくれず、俺たちのもとをすり抜けるように飛んでくる。
固まっていた俺たちは即座に散開し、パルテノから距離を取った。
「副委員長は見たものすべてをコピーする。それが彼の魔法」
「……おいおい、ぶっ飛んでんなぁ」
コピー魔法――原作にも存在した魔法だ。
己の肉体を固有武器とし、あらゆる魔法をコピーできる唯一無二の能力。
大型アップデートで追加されたやつだ。
使用できる魔法の数に上限はあるが、一度見た魔法なら何でも使用できる。
氷も、シールドビットも、魔力充填もだ。
「コピー……魔力充填!」
とか言ってたら、本当に魔力充填を使ってきた。
結構クセのある魔法だが、ミスは――しないか。
脚力を一気に高め、急接近してきた。
「ふんっ!!」
「へぇ、結構やるじゃん」
魔力充填をかけた両腕でガードし、返しに蹴りを放つ。
蹴りは空を切り、パルテノは曲芸師のように回転しながら宙を舞う。
「よそ見しててもいいのかしら?」
そこへ氷の槍が一斉に襲い掛かる。
しかし――
「甘いね」
パルテノの周囲を炎が包み込み、氷の槍をすべて溶かし尽くした。
「他のコピー魔法か……」
「君たちの魔法だけじゃないんだよね~。こういうのとかさっ!!」
「うわぁっ!?」
突如、地面から勢いよく伸びたツタにレアが絡み取られる。
足元をがっしり掴まれ、逆さづりになるようにぶら下げられ――
……既視感があるな。
確か、ツンツンしてた頃のサーシャがギランに拘束された時もこんな感じだった。
「へぇ、意外とスケベなんだ」
「ちょっと!! 何見てますの!!」
やっぱり。
スカートが重力でめくれ上がり、セクシーな赤い紐パンが露わになっている。
「……ますます嫌いになってきたよ」
「まだ根に持ってるのか、サーシャ?」
「当たり前だよ!! 公衆の面前でパンツを見せるなんて……あんなドスケベ下着じゃないからマシだけど!」
――美少女の下着なんて、だいたいエロいだろ。
とツッコもうと思ったが、敢えて黙っておく。
「何故、凍らないの……!?」
「魔力量が違うのさ、スカーレット嬢」
さて、レアの下着も堪能したし、終わらせるとしよう。
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m(_ _)m




