表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
5章 モブキャラ、風紀委員会と接触する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/110

第93話 モブキャラ、尋問する

「げほっ……」

「……やりすぎちゃった」

「あー、まぁ治せるから大丈夫だ」


 全身をボコボコに殴られ、血まみれの風紀委員。

 俺は彼の手を強く握り、魔力を注ぎ込む。


 随分と酷い目に遭ったな……もっとも、俺の命を狙ったんだから自業自得だが。


「お、お前たち……風紀委員にこんなことをしてタダで……」


 俺を睨みつける程度には回復したらしい。

 が――


 ジャキン!! ジャキン!!


「お行儀が悪いですわね」

「今度こそあの世に送ってやる」

「ひぃいいいいいい!!」


 レアとサーシャに武器を突きつけられた風紀委員は、怯え、涙目のまま土下座した。


「さて、お話の時間だ。ここは何だ? 何をしている?」

「……言わなかったら?」

「殺す」

「……わかった」


 諦めたようにため息をつき、風紀委員は語り出した。


「ここはパルテノ派閥の隠れ家だ。委員長に見つからないよう、あえてDクラス近くのスラムに作った」

「パルテノ?」

「風紀委員会の副委員長ですわね。まさか意外な大物が指揮を取っていたとは……」


 やはり派閥か。

 副委員長がこれほどの規模を動かしているということは、委員長と副委員長の間で派閥が分かれているということだ。

 皆が皆、委員長を慕っているわけでもないようだ。


 そして、これほどの組織を作る理由――単純だが、大体わかる。


「委員長の座を狙っているんだろ?」

「……」


 風紀委員は静かに頷いた。


「なのに俺を狙うとはどういうことだ? 風紀委員とは敵対してるだけだぞ?」

「それは……俺も知らない」

「は?」


 その瞬間、風紀委員の喉元をサーシャが掴み上げた。


「しらばっくれても無駄だよ!! とっとと全部吐きな!!」

「ゲホゲホッ!! ほ、ほんとに知らない!! ただそういう話を聞いただけなんだ!!」

「……どうやら本当みたいね」


 俺の暗殺は、上層部だけが知る計画なのか?

 ここまで来たら、副委員長本人に会うしかない。


 この際、施設も派閥もまとめて潰してしまおう。

 その方が後々都合がいいし、ナターシアにも恩を売れる。


「はぁ……はぁ……全部話したぞ……」

「あぁ、そうだな?」

「助けて……くれるんだよな?」


 涙とツバでぐちゃぐちゃになった顔が、俺を見上げていた。


「十分救われただろ?」

「へ……?」


 その醜い顔を見て、俺はニヤリと笑った。


「話してる間は生きていられた。それでいいじゃないか」

「やめろっ……!! 約束とちがっ……!!」

「俺を殺そうとしたんだろ? なら当然の裁きは受けてもらわないとな」


 慌てて逃げようとした風紀委員の足を、レアの氷魔法が瞬時に凍りつかせた。


「うわぁ!?」


 バランスを崩し、顔面から地面に倒れ込む。

 その背後から、サーシャの盾が怒りと共に振り上げられ――


 グシャッ!!


 押し潰すように振り下ろされ、血肉と共に頭が弾け飛んだ。


「さっさと行こ、ダーリン♪」

「あぁ。リーンが待っている」

「そういえば忘れてましたわ……後で小言を言われないかしら」


 まだタルの中に隠れているんだよな。

 早く助けて、安心させてやろう。


 俺たちは再び廃校舎の入口に戻り、中へと入る。

 中は相変わらず人が多い。

 そして――妙に目立つタルもそのままだ。


 なんでバレてないんだよ。


「どうやって助けますの?」

「一人が囮、残りがリーンを助ける方向でいこう」

「囮って……誰がやるんだい?」

「囮なんだから、一番目立つやつがいいだろ。俺がやる」

「「えっ?」」


 返事も待たず、俺は風紀委員たちのど真ん中へ飛び込む。


「オラァ!!」

「ぐほぉっ!?」


 一番近くにいた風紀委員を、魔力充填と共に思い切り蹴り飛ばした。


「俺様は破教委員会の代表、ゼクス・バーザムだ!! 副委員長はどこにいやがる!?」

「なんだこいつ!?」

「敵襲ー!! 敵襲ー!!」


 分かりやすい悪役ムーブをわざと大声で披露する。

 俺のアホらしい行動に、連中は動揺しているようだった。


「ほんと後先考えないわね!!」

「そこがダーリンのいいところっ!!」


 視線を集めている間に、遠くではレアたちがリーンのもとへ駆け寄っていく。

 任せて問題なさそうだ。


「貴様、ゼクス・バーザムか!?」

「破教委員会の代表が何故こんな所に!?」

「襲ったのはお前らの方だろ? まぁいい」


 敵の大将に問い詰めればいい。

 だが――問題はその居場所だ。


 どこに隠れている? 何をしている?


 廃校舎だからか、やたら広い。

 怪しい部屋なんていくらでもある。


(暴れるか)


 大多数に囲まれた圧倒的不利な状況。

 だがこれだけ目立って暴れれば、向こうから出てくるだろう。

 それに――


「使わせてもらおうか、魔力神填を」


 新たに覚えた魔法。

 どれほど通じるか、この場で試させてもらおう。


「うらぁあああああああっ!!」

「はぁあああああああ!!」


 剣を構えた生徒が二人、一気に襲いかかってくる。


「いくぞ……」


 俺は深く息を吸い込み、全身に力を込めた。

 同時に魔力を脚部へと集中させる。

 魔力充填よりもさらに高密度の魔力が限界まで溜まり、熱が全身を駆け抜けた。


「ふんっ!!」


 そして――一気に駆け出す。


 ブォオオオオオオオオオン!!


「「「ぐぁあああああああああああっ!!」」」


 ただ前へ走ったつもりだった。

 だが――振り返ると、そこには誰もいない。


 人も物もすべてが消え失せ、踏み込んだ一帯は灰と化していた。

 そして地面は熱を帯び、黒く焦げている。


「あっつ……」


 脚部から伝わる灼熱の痛み。

 魔力神填のエネルギーに身体がまだ耐えきれていない。


 まだ多用はできそうにないな。

 魔力充填みたいに連発は無理だ。

 しばらくは切り札として温存しておこう。


「なんだあれ……」

「今のが魔法かよ!?」


 風紀委員たちは目の前の光景に圧倒され、ただ立ち尽くしていた。

 ――さぁて、もう少し遊んでやるか。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ