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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
5章 モブキャラ、風紀委員会と接触する

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第82話 モブキャラ、風紀委員室に向かう

「ゼクスさまぁ♡ こっち見てぇ♡」

「アンタばっかずるいー! 私を見てよー!」

「俺は逃げない、だから慌てるな。ハハハハ!!」


 聖教委員会――だった場所。

 最奥にある事務室のような部屋で、俺は両サイドに美少女を抱えながら仕事をしていた。


(信者にこんな可愛い子がいるとは……ふふふ)


 媚びたほうが有利だと判断したのか、最近は俺に積極的にアピールする女子生徒が増えている。

 この甘ったるく、あざとい態度が妙な幸福感を与えてくれる。美少女に好かれている時ほど幸せな時間はない。


 と、俺たちの背後から嫉妬深いオーラが迫る。


「ダーリンの隣はアタシのものなんだけど……殺されたい?」

「「ひ、ひぃぃいい!!」」


 一瞬で二人を囲うようにシールドビットが展開された。

 鋭く睨みつけるサーシャの姿に、二人は怯えきって部屋から逃げ出してしまう。


「あまり脅してやるな。大切な信者だ」

「ダーリンは可愛い子に甘すぎ!! もっとアタシのことも見てよ……」

「言われなくてもサーシャのことは常に見ている……今晩、ベッドに来るか?」

「いいの!? 行くー!!」


 俺のサイド――ではなく、膝の上に乗っかるサーシャ。

 少し子どもっぽくなったようだが、好かれているのは悪い気はしない。


(これでも軍事参謀なんだよな……)


 破教委員会を設立するにあたって、俺たちは役職を決めた。

 レアは副委員長。サーシャは軍事参謀。

 そして俺は当然、委員長――破教委員会の代表だ。


「はいはい、イチャイチャはその程度にして仕事しなさい」


 噂をしていたら、呆れたように息を吐く副委員長さまが部屋に入ってくる。


「二大委員会の動向はどうだ?」

「生徒会は割と大人しいわね。ただ、風紀委員会が少々騒がしいようで……」

「どうした?」

「ここを潰そうとしているみたい。特にゼクスを、ね」


 あれから一ヶ月経ったというのに、まだそんなことを考えているのか。

 俺としては、バランスよく立ち回っているつもりなんだがな。


 寄付金は額を下げて下級クラスの支援という明確な目的を設定。

 金額によるランク制を廃止し、成果に応じて立場が変わる制度に変更。

 さらに信者を集めて定期的にデモ活動を行う――


 これ、聖教委員会と変わらないだろ。

 むしろ本来の目的を取り戻したと思うが。


「例の件で風紀委員会はメンツを潰されましたからねー。伯爵家に後れを取ったと、笑いものにされているそうですわ」

「風紀委員が情けないのが悪いな。もっと強いやつをよこせと言っとけ」


 俺たちは学園内のサバイバルを生き抜くために動いている。

 将来に繋がる実績と地位の向上――与えられた環境を最大限に活かしただけだ。


「あら、勘がいいじゃない」

「ん?」

「その強いやつが来るのよ。風紀委員長っていうね」


 ほう、それはそれは。中々面白い相手のご登場ってわけだ。


 ◇◇◇


「なぁリーン。風紀委員長ってどんなやつなんだ?」


 風紀委員室へ向かう途中、俺はリーンに尋ねた。


「一言で言えば合理的。とにかく無駄を嫌うし、効率的に動く人」

「……まさか歩き方まで指導する感じか?」

「それはないけど、仕事には物凄く厳しいよ」


 まるで効率至上主義の企業みたいな思想だな。

 俺はそういうタイプが苦手だ。


「わたくしは好きよ。無駄がないなんて素晴らしいじゃない」

「アタシは嫌だねー。もっと自由に生きたいよ」


 ここでも価値観の違いが出る。サーシャは相性が悪そうだ。


「ゼクス……ありがとう」

「ん?」

「ウチが風紀委員会から解放されたのは、ゼクスのおかげ」

「気にすんな。リーンがいてくれるだけでいい」

「……えへへ」


 頬を緩ませるリーン。

 バルカンを潰したあと、俺たちはリーンを風紀委員会から正式に脱退させる手続きを進めた。


 風紀委員会は彼女を残そうと必死だったが、レアの「決めたのは生徒会でしょ?」という正論に黙らされた。

 そしてミホークを経由して会談を重ね、無事に退任。

 今では俺たちの破教委員会に所属し、偵察部隊の隊長として活動している。


 彼女は隠密行動が得意で、情報収集能力にも優れている。俺が自ら任命した。


「お、おいアイツ……」

「一年で聖教委員会を乗っ取ったって噂だぞ……」

「“公女好き”はどこまで行くんだ……」


 だが俺の異名はいまだに“公女好き”のままだ。

 聖教委員会をぶっ潰したんだから、もう少し恐れられる異名でもいいと思うんだが。


「なぁレア。俺はこのまま公女好きなのか?」

「一度広まった異名よ? 取り消すなんて無理よ、無理」

「……だよなぁ」


 俺が悩めば悩むほど、レアは嬉しそうに笑う。

 こっちは結構真面目に気にしてるんだが。


 バルカンを倒した時に別の異名でも名乗っておけばよかったか?

 あの時は作戦に集中していたし、余裕もなかったんだ。


 信者からも“公女好き”と呼ばれている現状。

 いつか絶対に変えてやる。


「着いた」

「おぉ……随分普通だな」

「聖教委員会が異常なだけですわ」


 たどり着いたのは、ごく普通の教室だった。

 ドアには『風紀委員室』と書かれている。

 改めて、俺たちの施設がいかに異常だったかを思い知らされながら、俺はドアを軽く叩いた。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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