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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第80話 モブキャラ、宣言する

「よく聞け!! ここにいるバルカンは私腹を肥やし、貴様らを金もうけの道具にしていた!!」

「えっ……?」

「なんだって?」


 キョトンとする聖教委員会の信者達。

 ザワつく場内をかき分けるように、レアとサーシャが俺のもとまで歩み寄ってくる。


「ダーリン……♡」


 ついでにサーシャは俺の頬に軽くキスした。

 まったく、可愛い奴だ。


「こほん……お話は?」


 レアがわざとらしく咳払いをする。

 さて、気分を切り替えて本題に戻るとしよう。


「バルカンは巧みな言葉で人を操り、高額な寄付金で縛り付け、さらに洗脳魔法にも手を出した!!」

「そういえば、バルカンに従ってたような……」

「なんであそこまで崇拝してたのか分かんなかったけど……そういうことか」


 従っていた間はあれほど幸福感に満たされていたのに、

 今はその反動で怒りが噴き出している。


 急な感情の落差に、戸惑うのも無理はない。


「そしてこれを見ろ!!」

「「「っ!?」」」


 それを決定づけるように、俺は一枚の写真を信者達に突きつけた。


「すげぇリアルな絵だ……」

「バルカンがあんなにくっきりと……」

「どうなってるんだ?」


 写真という文化がないからか、単純に感心されてしまった。

 ……そういうつもりで出したわけじゃないんだが。


「それはバルカンがデストレーダーと取引しているところですわ!! 彼はデストレーダーの甘い言葉に落ちるような人間よ!!」


 想定外の反応に困っていた俺の代わりに、レアの堂々とした声が響く。

 その声にハッとした信者達が、写真を凝視して明らかな違和感に気づいた。


 手に握られた、一つの魔装結晶。

 それは、バルカンが黒だと証明するのに十分すぎる証拠だった。


「ナイスだ、レア」

「ふふっ、フォローなら任せなさい♪」


 レアって本当にフォローが上手い。

 痒い所に手が届くとはまさにこのことだ。


「俺達はその愚行を裁くためにここに来た!! そして聖教委員会の本来の目的を取り戻すためにも!!」

「聖教委員会の……」

「目的……?」


 流れを崩さぬまま、俺は演説を続けた。


「虐げられてきた者達を救済するためだ!! 高い寄付金も、免罪符も、望まぬ神への祈りも必要ない!! ただ俺達に忠誠を誓うかどうか、それだけだ!!」


 前半は信者達の心を掴むための言葉。

 後半は、俺達の狙いを通すための釘。


 この信者達を味方にできるかどうかで、今後が変わる。

 だからこそ、絶対に外せない勝負だった。


「ずいぶんと気前がいいことを言いますわね」

「こーいうのはノリと勢いだろ?」


 人間は流されやすい生き物だ。

 差し伸べられた糸に迷わず手を伸ばす。

 後のことより、今を最優先してしまう。


「そう言って俺達を利用したいんだろ!!」

「そうだそうだ!! 騙されないぞ!!」


 だが、信者達は思ったより手強かった。

 俺達への疑念を捨てず、むしろ反抗の意志すら見せる。


「お前達を利用したいのは本当だ」

「「「えっ!?」」」


 だから、俺も真正面からぶつかることにした。


「バカ正直に言わなくてもいいじゃない……」

「そこがダーリンのいいところだよ♪」


 誤魔化したところでボロが出るだけだ。

 本音と建前を両方話して納得してもらうのが、一番いい。


「だが、利用されるだけの対価は与える。生徒会や風紀委員会の横暴から、お前達を守りたい」

「そんなの、口だけならなんとでも言えるだろ!!」

「わけわかんねーんだよ!!」


 信者の一人が石を投げつけ、他の者達も口々に騒ぎ立てる。


「お前達にも選択肢はないだろう?」


 俺は静かに言い放ち、


「生徒会や風紀委員会に刃向かってまで手に入れたバルカンとの関係。それが崩壊した今、お前達を受け入れる組織や貴族家がどこにいる?」

「「「なっ!?」」」


 ――現実を突きつける。


「た、たしかに……」

「せっかくバルカンに貢いだのに、全部パァになったぞ……」

「どうすんだよ……実家に顔向けられねぇ……」


 騒ぎが収まり、現状を見直すようにひそひそ話が広がる。


 彼らは目先の利益を求めて食いつき、

 あるいは聖教委員会にしか居場所がなかった。


 そんな者達が野に放たれたらどうなる?

 元・聖教委員会という汚名だけが残り、のけ者にされる毎日が待っている。


 ――彼らに、安全な道はない。


「今、わたくし達に尻尾を振れば、貴方達の尻拭いに最善を尽くして差し上げますわ」

「アタシもだ。クラウン家としても、これだけの貴族と関係を持てるのはありがたいしね……お姉様がやらかしたからね」


 後ろ盾を失った彼らに提示された、新たな寄生先。


「……なんか面白そうだな」

「あの男はともかく、スカーレット家とクラウン家の人間がいるのは心強い」

「どうせ目をつけられてるなら、マシか……」


 有力な貴族家が二人もいる。

 バルカンの代わりに支援してもらえるなら、と信者達は次第に態度を和らげていった。


「わかったか?」

「「「……はい」」」


 俺が確認するように問いかけると、信者達は静かに頷いた。


「聖教委員会を超えた新たな組織――二大組織をも超える《破教委員会》の設立をここに宣言する!!」

「「「わぁああああああ!!」」」


 俺の宣言とともに、惜しみない拍手と歓声が巻き起こった。

 うまく付け込めた。これだけの人数を従えられるとは……いい収穫だ。


「生徒会に入るつもりが、遠ざかりましたわね」

「けど、組織の頂点に立てた。十分だろ?」

「ふふっ、これはこれで利用できそうね♪」


 統率もモラルも欠けた連中だ。

 そのあたりは少しずつ教育していく必要があるが……レアがいれば、なんとかなるだろう。


「……一晩でやってくれたな、ゼクス・バーザム」

「面白くなったろ? 風紀委員会さんよ?」


 そして、俺達の背後から気配もなく現れる黒衣の青年。

 ――残念だったな。お前達が守りたかった“バランス”は、今まさに崩壊する。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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