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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
1章 モブキャラ、生まれ変わる

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第8話 モブキャラ、侯爵領に着く

「侯爵令嬢に対してこの態度は……なんか気味悪いですね」

「場所によれば即打ち首だろ。俺は許すけど」


 あまりにもフレンドリーすぎる。

 男爵相手ならまだしも、レアは侯爵令嬢だぞ?


「はっぴーうれぴーさいこー」

「あ、ぶつかったー。めんごー」

「もういいや。仕事やーめた」


 領民からは気力を感じないし、考える力すら残ってない。

 まるで本能で生きる動物のようだ。


(何かされたのか?)


 明らかに異常。

 外部からの仕業に違いないだろうが……


「いつ頃からだ?」

「わかりませんわ……ただ、半年くらい前に気づいたらこうなってて」

「徐々に広がった感じか……」


 ツイファンでこんなイベントはなかったからなぁ。

 小さいサブイベ? いや、ここまでの規模はメインレベルだ。


 メインストーリーは学園編からだから、前日談に俺の知識が対応しきれてない。


「何をするつもりですの?」

「原因があるはずだ。恐らくこれは仕込まれて……」


 何かしらのアイテムや毒の種類がわかれば。

 が、探そうとする俺の手をレアが引っ張る。


「余計な事をしないで。長年住んでるわたくしですらわからなかったのよ?」


 外部の人間の手を借りたくない。

 これは自分で何とかしてみせるという、レアのプライドか?


「じゃあ今は止めておく」

「意外と素直ね……貴方なら粘ると思ったのに」

「ここの日常を過ごしてわかる事もあるだろ?」

「……やっぱり諦めないのね」


 今すぐじゃなくてもいいや。

 領民達と同じように生活した方が原因も見つけやすいだろうし。 


「あ、私はこの辺で……お二人で楽しんでくださーい♪」

「気遣い感謝だ。夜には戻る」

「夜を超えてエキサイトしちゃってもいいですよー!! きゃー♪」

「しませんわよ!?」


 JKかよ。

 ウキウキしながらメディはどこかへ去って行った。


「あのメイド元気すぎでは?」

「元気なのはいい事だ。さ、俺達も行こうぜ」

「はぁ……」


 こうして気も使ってくれたわけだ。

 仲良くデートを楽しむとしよう。


「こう見るとウチより栄えてるなー」

「当然ですわ。王国の都市部にもアクセスしやすいので、商人の行き来が激しいのよ」

「立地がいいのか……羨ましい」


 道は舗装されてるし建物も多い。

 少し遠くに見える畑も綺麗で豊かな作物でいっぱい。

 

 ウチのオンボロ領に見せてやりたい。

 俺が一般人なら間違いなくここに住む。


「商人はどこに集まるんだ?」

「ここからもう少し北の繁華街よ。ほら」

「おぉ、すごい人だかり」


 露店のある繁華街は更に人がいた。

 どこも栄えている。

 そしてさっきとは大きく違う所があった。


「この辺の人は割としっかりしてるな。テキパキ働いてるやつが多いし」

「酷いのは外れの方よ。ここもパッと見は大丈夫そうだけど……ほら」


 レアが指差した方向には路地裏でぐったりしてるヤツが何人かいた。

 ここも時間の問題か。


「こんだけ気を抜いてたら、いつかトラブルが起きそうだな」

「もう遅いですわ。外部から来た人間のクレームも増えてるし……」


 だろうなぁ。

 他の人からすれば怠け者でロクでもないヤツにしか見えない。


「貴様ァ!! それが伯爵家に対する態度か!?」

「あぁ……言ったそばから」


 俺の予想はすぐに現実となった。


「も、申し訳ございません!! すぐに作り直しますので……」

「いーや遅いね。僕ちゃんにこんな物を食わせたんだ。罰はキッチリ受けないとねぇ?」

「ひいっ!!」


 机に向かって思いっきり剣を振り下ろす。

 伯爵ごときが威張れるのか?

 

 何にせよ楽しいデートを邪魔されて気分が悪い。

 少しお灸を据えてやるか……


「ここはわたくしが」


 前に出ようとした途端、レアの腕によって遮られる。


「どういう事か説明してほしいですわね?」

「ん? 誰だ貴様……」

「おいおい、態度が悪いのはどっちだよ」

「お前もなんだ!? さっきから無礼なやつばっかだな!!」


 あ、こいつ死んだな。

 レアを見て速攻で謝ればよかったのに。


「まさかスカーレット家を知りませんの? 敵陣で将軍に喧嘩を売るとは、相当命知らずみたいですわね」

「将軍? ま、まさか!?」

「今更気づいても遅いですわ」


 ほーらこうなった。

 侯爵家の、しかも領の貴族を忘れるってどんだけ世間知らずなんだよ。

 

「貴方、リズミット家の次男ですわね? 勲章がわかりやすいので助かりました」

「え、えと……それはぁ……」

「何ヶ月か前の会談で無礼な態度を取られましたわねぇ。侯爵家の人間が来たというのに、迎えを一人もよこさないなんて」

「ギクゥ!!」


 無礼なのは今に始まった事じゃないらしい。

 チクリチクリと弱味を刺され、外堀を埋められている。


「そういえばランド商会にかなり依存してるみたいで。あそこにはスカーレット家も良くしていただいてるので、ちょっと告げ口してみましょうか?」


 怪しく笑いながら見下すレア。

 その恐ろしい姿に伯爵の顔がどんどん青くなっていく。


「も、申し訳ございませんでしたぁ!! お許しをっ!!」

「今更許すと? 連れていきなさい」

「く、くそぉ!!」


 たかが土下座でレアが許すわけない。

 不届き者を許さないと、周りにいた兵士に命令して捕獲。

 手足をジタバタさせて暴れる姿が子供みたいだ。

 

 ……近くになんかいるな。


「主人を見捨てた方が助かるぞ?」

「なっ!?」


 怪しい動きをしたヤツの後ろに一瞬で近づき、腰にナイフを突き立てる。


「よく気づきましたわね……」

「視線でバレバレなんだよ。残りもわかってるから、さっさと名乗り出た方がいいぞー」


 苦い顔をしながら残りのヤツらも手を挙げる。

 多分、伯爵の護衛だ。

 主人の為に一泡吹かせたかったらしいが……相手が悪いな。


「レア様ありがとうございます!! おかげで助かりました!!」

「大した事ありませんわ。それじゃ」

「よければウチの料理を食べていってください!! お代はいりませんので!!」

「えぇ!? そういう訳には……」


 厳しいけど慕われてるって感じか?

 本当に嫌われてるなら助けられても冷たく突き放す。

 やっぱ原作と違うよなぁ。


「いいじゃないか。好意には甘えとけって」

「ゼクスまで……わかりましたわ……」


 お腹も空いてたしちょうどいい。

 店主の厚意に甘える事にしよう。


「さっきのは見事だった。俺もああいう立ち回りを覚えたいよ」

「地道な努力と経験ですわ。今回はたまたま弱味を握ってたのも大きいですけど」

「その上手い口で俺も口説かれたいねぇ」

「ふふっ、貴方の口は縫った方が良さそうね」


 ジョークを交えながら料理を待つ。


「お冷でーす」

「どうも」


 ここの店主も緩んでない。

 至って真面目な料理人。従業員も含めて。


 外れと繁華街の違いはなんだ……?


(この水……?)


 僅かに甘い匂い。

 出された水に俺は違和感を感じた。


「店主、この水はどこで仕入れた?」

「はい? 水ですか?」


 感染源はこいつか?

 少しでも情報がわかるといいけど。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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