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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第79話 モブキャラ、仕掛ける

「これがあれば、貴方は強くなれる」


 黒いフードを被った少女。

 布の隙間からチラリと見える金髪を揺らしながら、懐から取り出したのは——


「まさか……それは……!?」


 怪しく輝く鉱石。

 魔装結晶がそこにあった。


「デストレーダーか……わざわざ聖教委員会の元に現れるとは、好都合だ」

「何故、槍を向ける?」

「貴様の手を借りるほど、私は落ちぶれてはいない!!」


 槍を構え、いつでも突き出せる態勢を取るバルカン。

 ほぉ、意外と正義感が強いんだな。

 聖教委員会の代表をやってるだけのことはある。


「勘違いしてる?」

「何だと……?」

「魔装結晶は悪い力じゃない。むしろ貴方の助けになる」


 その反発する思いに対して、フードの少女は言い聞かせるように語り続けた。


「魔装結晶なんて物騒な名前だが、実際は王都の研究所でも使われるアイテムだからな……」

「なんだと!? 魔装結晶が!?」

「体質を変化させるアイテムは貴重。故に一部の王族からは重宝されている」

「そんな使い道が……」


 これは半分本当だ。

 王族の中には、魔装結晶を使って権力を獲得している層がいる。

 原作では後半に出てくるんだが……こっちだとどうかな?


「これは運命を変えるアイテム。魔装結晶があれば、生徒会も風紀委員会もゼクス・バーザムも怖くない」


 聞こえのいい売り文句。

 槍を向けられているにも関わらず、一歩ずつバルカンに近づき、ゆっくりと魔装結晶を差し出す。

 だが、未だ迷っているのか、動こうとはしなかった。


「おらぁっ!!」

「ぐふっ!?」


 バルカンに向けて俺が不意打ち気味に蹴りを入れる。

 腹に深く入り、そのまま壁まで吹き飛ばした。


「余計なことをするな。魔装結晶を使われたらこっちも困るんだ」

「ウチ……じゃなくて、ただ取引の話をしているだけ。魔装結晶の魅力がわからない?」


 口論をしているように振る舞う。

 今、普段の話し方が漏れてたぞ。

 バルカンにバレてないよな?


「困る、か……ふふふ」


 と、何も知らないバルカンが怪しく笑い出す。


「それを私によこせ!! デストレーダー!!」


 そして決意した。

 禁断のアイテムを使う覚悟を。


「ほい」

「ふふふ……これで私も……」


 投げ渡された魔装結晶を両手で崇めるように眺める。

 禍々しい光の虜になったらしい。

 まるで宝物を抱くように扱うその姿は、可愛らしくも滑稽で——


 カシャッ!!


「っ!? なんの音だ!?」


 隙だらけだ。本当にどうしようもない。


「これ、なーんだ?」

「私の姿!? どういうことだ!!」

「お前がデストレーダーと取引する姿が欲しかったんだ。もう少し慎重にやるつもりだったが……」


 信者を含めて念入りに根回しする予定だったが、風紀委員会の介入で博打のような作戦になってしまった。

 だが、証拠は撮れた。

 こいつをコピーしてばらまけば、聖教委員会の地位もガタ落ちだろう。


 あとは信者共だが——


 バァン!!


「騙したなバルカン・ミレイユ!!」

「俺達をコケにしやがって!!」

「ヤツを始末しろ!! 急げ!!」


 ドアを蹴破って、信者達が雪崩のように入ってくる。

 皆、目を血走らせ、代表であるバルカンに殺意を向けていた。


「何が起きている……!?」

「あらあら、自慢の信者達もこのザマとはね」


 そして信者達の後ろから、自信満々に歩いてくる美少女が一人。

 スカーレット家のお嬢様の登場に、バルカンは動揺を隠せていなかった。


「何をした!? 言えっ!! 言えぇえええええ!!」

「ただ洗脳を解いただけですわ。ついでに、バルカンがいーっぱいお金を持ってるって吹き込んじゃった♡」

「洗脳を!? あれは我々が販売しているアイテムでも解呪できないはず……」

「俺がいることを忘れたか?」


 目を見開き、震えるバルカン。

 リーン用に作ったスライム液の余り。

 あれを配分だけいじって、洗脳を解くために流用した。


「あれで足りたか?」

「ええ、十分よ。一口飲むだけでみんな元通り」


 元はリーンの呪い用に作ったから、効果はかなり高い。

 倉庫を圧迫することなく消費できて何よりだ。


「あれは魔装結晶!? やっぱりデストレーダーと組んでいたのか!!」

「これは!! 違う、私はただ聖教委員会を思って……ヤツはどこへ消えた!?」


 フードの少女——というかリーンは、仕事を終えたので姿を消した。

 魔装結晶の調達と、それを販売するためにデストレーダーへ成りすましてくれた。

 多少怪しい点はあったが、雰囲気は十分だったと思う。


「こうなったら……!!」


 魔装結晶を突き立てようとするバルカン。


「おっと!!」

「ぎゃあっ!!」


 しかし、俺は距離を一瞬で詰め、右手首を斬り飛ばした。


「それ以上は見苦しいぞ。学園を退学したくないなら、大人しくしろ」


 そして胸元に思いきり膝蹴りを放つと、バルカンは全身の力が抜け、そのまま気を失った。


「こんなに弱かったかしら?」

「単純に相性の差だ。レアやサーシャなら、たぶん苦戦すると思う」

「あら、わたくしを過小評価してますわね?」


 そんなつもりはない。

 単純に精神系魔法への対抗手段がないから苦戦すると思っただけだ。

 レアが弱いわけじゃない。


 と、レアが俺の首元に顔を寄せ、耳元で囁く。


「わたくしの恐ろしさ、久しぶりにゼクスへ教えてあげますわ♪」


 そういえば最近、やり合ってなかったな。

 レアの実力を知るためにも、模擬戦の時間を作るとしよう。


「何々……?」

「バルカン様になんかあったの?」


 その前に、信者たちの片付けだな。

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