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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第77話 モブキャラ、お願いをする

「悪役? わたくし達が聖教委員会のトップになれと?」

「違う違う。聖教委員会の“立場”に俺たちが入れ替わるんだ」

「まさか、新しい組織を作るってことかい!?」

「その通り」


 俺の案に、その場にいた全員が固まった。


「信じられない発想……やっぱりゼクスはおかしい……」

「褒め言葉をありがとう」


 よしよしとリーンの頭を撫でると、無言でコクコクと頷き始めた。

 どうやらスキンシップが好きらしい。今まで触れ合うことの少ない生活を送ってきたからだろうか。


「ですが、聖教委員会並みの組織規模をどうやって用意するのかしら? 時間も、お金も、人も、何もかも足りませんわよ」

「そこだよなぁ……」


 何だかんだ言って聖教委員会は一大組織だ。

 信者も多いし、方向性も定まっている。

 そして、あくどい金策で資金力もある。


 胡散臭さ以外に言うことないね。流石だ。


「バルカンさえ何とかできたら……」

「トップが俺になって納得するか?」

「違う。バルカンは何かがおかしい」

「おかしい?」


 リーンの不可解な言葉に、全員の視線が集まった。


「バルカンが話していると、妙な心地よさを感じる。あまりにも不自然」


 そういえば俺もバルカンの演説を聞いていた時、どこか心地よく感じたことがあった。

 目先のことばかり考えてるなーと認識してからは、それほどでもなかったが。


「単に話術が上手いだけでは? 情弱に刺さるようなね」

「うーん……」


 レアの意見を聞いても、リーンはまだ納得していない様子を見せる。

 その時、俺はふと思った。


(まさか……)


 アイツ、魔法を使ってる?


 原作で、Dクラスの一部生徒を意のままに操る魔術師が登場するサブクエがあった。

 そのときのNPCのセリフが、


『幸せだぁ』

『この人なら大丈夫かも……』

『心地いい……』


 なるほど、検証する価値はありそうだ。


「誰か騙されそうな知り合いっているか?」

「何をするつもりで?」

「バルカンが魔法を使っているか、確かめたい」


 その辺の生徒でもいいが、魔法を使われたことを自覚できる奴がいい。

 それなりに修練を積んだヤツなら、どんな魔法か肌で感じ取れるはずだ。


 となると、Bクラス以上の人間を使いたいところだが……あいにく知り合いが少ない。

 俺たちに効果がないことは演説で証明してしまったし、伯爵家の二人娘は怖がりそうだし……誰かいないかなぁ?


「でしたら、適任がいますわよ」

「誰だ?」

「ほら、最近可愛くなったあの子」

「……まじで?」


 ライトのことか?

 確かに精神的に不安定で、魔法の素養も高いが……


「とりあえず説明してみるか」


 他に適任もいなさそうだ。

 いろいろ気にかけてもやりたいし、ライトに話を通してみよう。


 ◇◇◇


「ぜっっっったいダメ!!」


 風紀委員の目を潜り抜け、ライトたちのもとへ行って事情を説明したのはいいが……案の定、ユイが強く反対した。


「ユイ、そこまで言わなくてもいいんじゃない?」

「ライトは危機感なさすぎ!! バルカン委員長の魔法を受ける実験台になれってことでしょ!? 何が起こるかわからないじゃない!!」


 まぁ、そうなるよな。

 愛する人を危険な目に合わせてもいいかって聞かれて、「はいどうぞ」なんて言えるわけがない。

 一方のライトは、呆気にとられたような顔をしただけで、特に怖がっている様子はなかった。


「ライトは強いし、魔法耐性もそれなりにある。あくまでバルカンの魔法を確かめたいだけだ」

「だったらゼクスさんたちがやればいいんじゃないの!?」

「俺たちは顔が割れてる上に、魔法にも耐性を付けてしまった。だからライトを頼りにしてきたんだよ」


 知ったうえで確かめたいが、俺たちは聖教委員会にも風紀委員にも目をつけられてる。

 ヤツらに警戒されずに接触できるのは、ライトしかいない。


「ボクは全然いいよ」

「ライト!?」


 力強い眼差しで頷くライト。


「Aクラスの人たちが聖教委員会に操られる姿は見たくない。それに……苦しそうだからさ」

「苦しそう?」

「お金が払えないって。聖教委員会は寄付金でランクが決まるみたいなんだ」

「……クソみたいなシステムだな」


 要はサブスクと同じだ。

 高い金を払えば、もっといいプランに入れますよってやつ。


 金稼ぎには最高の仕組みだが、聖教委員会がやってると思うと悪趣味さが際立つ。

 それを上級クラスの連中がやってるとは……

 

 最早、宗教でもなんでもない。

 ただのビジネスじゃん。


「ライト、考え直さない? 危ないよ?」

「わかってるよユイ。けど、ボクを変えてくれたのはゼクスくんとユイだし、その二人を守れるならどんなことでもしたい」

「それは……私を思ってくれるのは嬉しいけどさぁ」


 俺とユイのため、か。

 女装堕ちしても、根の優しさは変わってない。


「恩返しのためにも頑張るよ。今度はボクが助ける番だ」


 やっぱり、ライトは主人公だ。

 ルートが変わろうと、関わるヒロインが変わろうとも。

 彼はこの世界の英雄になるんだと、改めて実感させてくれる。


「俺も見張っているから安心してくれ。ライトは俺が守る」

「……じゃあ私も見張る」

「ユイが?」

「ライトだけ無茶な思いはさせたくない!! 私だってライトを守るもん!!」


 涙目で強く宣言するユイ。

 そういえば原作でも、凶悪なボスに挑もうとするライトを追っていくユイのシーンがあったっけ。

 ライトを想う気持ちに溢れた、熱い場面だった。


 それと同じような状況が、今目の前で起きている。

 少し、感動するな。


「じゃ、俺は二人を守るってことで」

「あはは、そこまで心配しなくてもいいよ?」

「巻き込んだのは俺の方だ。責任は果たすつもりでいる」

「でも怖いよー……ううう」


 守るものが増えたところで、俺のやることは変わらない。

 悪役ヒロインの救済、そして彼女たちの望みを叶える。


 あとは……二人の幸せも、ちゃんと守れたらいいな。


面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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