表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/100

第76話 モブキャラ、思いつく

「長話の間にスライムを召喚するとは……流石ですわね」

「というか、元からいた。監視用に何体か、普段から外に出してるんだよ」

「へー……」


 レッドを含めた何体かが、どうしても外にいたいと駄々をこねたからな。

 何もない空間じゃ飽きるのも仕方ない。だから、交代制でスライムたちを外に放している。


 スライムたちにはそれぞれ自由に行動させているが、レッドに合図を送ればすぐに集合できるよう仕込んである。

 そして……あの再生能力とスライム液だ。


(スライムの域を超えてるよな……やっぱリーンの呪いを吸収したせいか?)


 リーンの呪いを吸収した個体が、なぜか再生能力を持つようになった。

 身体を斬られても、分裂して元通り。

 レッド曰く、コアを破壊されない限りは無限に蘇るらしい。


 おまけにスライム液をはじめとした魔法攻撃も強化されていて、それが群れで襲いかかるのだから恐ろしい。


 原作のスライム液なんて、ネバネバするだけだったのに。

 それが接着剤並みに強力な張り付き効果を発揮するとは……


 こいつら束になれば、ドラゴンでも倒せるんじゃ?


「ん?」


 スライムたちの成長に感心していたとき、

 遠くの方から、風を切るようなヒューンという音が聞こえた。

 しかもどんどん大きくなっている。


「ダーーーーーリンッ!!」

「うぉっ!!」


 流星のように俺たちの近くへ激突したのは……なんとサーシャだった。

 涙目で俺を見た途端、勢いよく抱きついてくる。


「何があったんだ?」

「風紀委員を名乗る連中が襲ってきたの!! あいつらダーリンを殺すとかほざいたから、研究所ごと爆破して探しに来たの!!」

「爆破ぁ!? 相変わらず物騒なことが好きですわね……」


 それだけ俺を愛してるってことか。探す手間が省けて助かった。


「後はメディだが……透明になれるし、その辺にいるかもな」

「まさか。どこでも現れるメイドさんですけど……」

「ご、ご主人さまぁああああああああ!!」

「……本当にいましたわね」


 柱の影がヌルッと揺れたかと思えば、涙目のメディが姿を現し、俺に抱きついてきた。

 ちなみにサーシャも抱きついたまま。美少女サンドイッチの完成だ。


「メイさんとメルさんは無事に逃げたらしいですが……黒ずくめの人たちに追われてぇ……!!」

「大変だったな。もう大丈夫だ」

「びぇええええええ!!」


 とりあえず全員の無事は確認できた。

 さて、問題はここからだ。


「どこに行こうかなー。風紀委員は俺たちを許さないだろうし」

「ですわねー。地獄の果てまで追ってきますわよ」


 風紀委員はまだまだいる。

 一応スライムたちに周囲を警戒させているが、特に反応はなし。

 学外とはいえ、見つかるのは時間の問題だろう。


「ん……?」

「お、リーン。起きたか」


 俺におんぶされていたリーンが目を覚ます。

 魔法で意識を封じられていたので、魔力充填で無理やり解除してやった。


「ウチは……?」

「風紀委員に追われて逃亡中。今、隠れ家を探してるところだ」

「……ごめん、ウチのせいで」

「アンタのせいじゃないわよ。悪いのはイカれた価値観の風紀委員たちよ」


 レアの励ましに、リーンの表情に少しだけ笑みが戻る。

 さらに魔力を補充して体力を回復させた後、俺はリーンをゆっくり地面に降ろした。


「隠れ場所なら、知ってる」

「お、助かる」


 思わぬラッキーだ。

 この様子なら、風紀委員の手が及ばない場所だろう。


「汚いけどいい?」

「掃除すれば済むことですわ。ね、メイドさん?」

「はいっ!! 私におまかせください!!」


 満場一致で決定。さっそく隠れ家へ向かうことにした。

 道中はメディの隠密で、すいすい進めるはず。


 正直、逃げ場所があればなんでもいい。

 まずはそこで作戦会議だ。


 ◇◇◇


「ここ」

「あー……隠れ家というか」

「空き家、ですわね」


 たどり着いたのは、スラム街の隣にある古びた家。

 屋根も壁もボロボロで、至るところに蜘蛛の巣が張っている。

 ギギギ……と建付けの悪いドアを開け、俺たちは恐る恐る中へ入った。


「ゲホゲホッ!! 研究所も大概だけど、ここもなかなかだねぇ」

「あまり管理されている様子はありませんし……最後に来たのは?」

「二日前」

「えっ」


 意外と最近だった。


「ここにはちょくちょく来る。裏取引とか、風紀委員に見せられない物を管理するために」

「あー、つまりこの惨状は?」

「掃除嫌い」

「家主の怠慢でしたわね……」


 深いため息をつくレア。

 何だかんだで彼女は几帳面だからな。

 以前、「メイドの仕事を奪わないでください!!」とメディに泣かれていたのを思い出す。


「久しぶりの大掃除!! がんばりますよー!!」


 そんなメディにも、やりがいのある職場が見つかったようだ。

 掃除は彼女に任せて、俺たちは作戦会議を始める。


「まず、風紀委員をどうしますの?」

「正面から戦えば物量で負ける。それより先に聖教委員会を潰したいが……」

「余計な障害が多いねぇ」


 聖教委員会を倒すだけならまだしも、風紀委員まで相手となると話は別だ。

 個々の力には限界がある。

 となれば、できるだけ手間をかけずに聖教委員会を先に叩くしかない。


「リーンは知っていたのか? 風紀委員が学園全体のバランスを操作してたことを」

「歪んだバランスなのは知ってた。けど、ゼクスに手を出すとは思わなかった」

「思ってた以上に暴れすぎたみたいですわねー……公女好きさん♪」


 そんな楽しそうに見るな。

 俺はただ、悪役ヒロインたちを救済してただけだぞ。


(あいつらが言う“バランス”において、聖教委員会は絶対に必要……)


 正義は生徒会と風紀委員会。

 悪は聖教委員会。


 だが倒すだけでは終わらない。

 一生風紀委員会に邪魔をされていては、こっちも仕事にならない。


(悪役……)


 ふと周りを見れば、悪役ヒロインが三人。

 そして、俺たちが潰そうとしているのは“悪”の組織。


 極論、聖教委員会はいなくてもいい。

 同じ役割を果たせる新たな組織があれば、風紀委員会も黙るはずだ。


「……聖教委員会の代わりに、俺たちが“悪役”になる?」

「「「えっ」」」


 なーんか面白そうなこと、思いついちゃった。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ