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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第75話 モブキャラ、風紀委員に狙われる

「ライン越えとは何だ? 風紀委員さんよ?」

「……こちらにも事情があるのでね。ゼクス・バーザムは特に警戒していたが、我々は介入が必要だと判断した」


 張り詰めた空気。少しでも妙な動きをすれば殺す……首元に当てられた刃がそう伝えてくる。

 声から青年だとわかったが、顔は黒いマスクで覆われており表情は見えない。

 こいつらは実行役か? それとも、指示している別のやつがいるのか?


「介入? 好き勝手暴れてるのを見過ごすくせに、都合が悪くなればすぐに切り捨てますのね」

「それが風紀委員会の役割だからだ」


 ……やれやれ、面倒なことに巻き込まれた。

 聖教委員会だけでも厄介なのに、今度は風紀委員会まで敵に回す羽目になるとは。

 周りの難易度が勝手に跳ね上がっていく。


「お前たちは学園が崩壊するギリギリまで見守るスタンスだと聞いたが? 聖教委員会が潰れたところで学園が崩壊するのか?」

「崩壊とはグランヴァル学園そのものではない……バランスだ」

「バランス?」 


 驚きだな。

 この殺伐としたランク至上主義の中に、そんな都合のいい言葉が存在したのか?

 

「正義と悪。それらは公認委員会が表立って先導することで成り立ってきた。生徒など、競争を加速させる駒にすぎん」

「あら? わたくし達は聖教委員会と競争していたつもりでしたわよ? それが貴方達の本望では?」

「物事には限度があるということだ、スカーレット嬢」


 なおも強気なレアに対し、風紀委員の青年がパチンと指を鳴らす。

 瞬く間に、同じような黒装束の人間が三人、周囲を取り囲み武器を突きつけてきた。


「聖教委員会の役割は、我々とは異なる正義を掲げること。そして、その反抗勢力として最も強くあることだ」

「ははーん……つまり、聖教委員会が弱体化すると学園内の競争バランスが崩れるってわけだな」


 俺の推測に、青年は無言で頷いた。


 この学園は競争によって成長してきた。


 過酷なランク争い、誰も手を差し伸べない冷たい環境。

 そこから這い上がり、頂点を掴み取った者だけが価値を得る。

 競争を生み出すよう、生徒会が全体をコントロールしている。


 そのバランスを保つために存在するのが、風紀委員会というわけだ。


「随分と弱気ですわね。貴方達にとって、聖教委員会は取るに足らない組織なのかしら?」

「物事にはイレギュラーがつきものだ。そして、ゼクス・バーザム。特にお前がな」

「俺?」


 刃が首元に深く食い込み、鋭い痛みとともに血が流れた。


「貴様が救ってきた女性たち……本来、この学園の“闇”として君臨するはずだった。なのに、貴様がそのバランスを崩した」

「おいおい、美少女には笑顔が一番だろ? 勝手に闇を背負わせるなよ」


 原作では悪役ヒロインたちが“闇”だった?

 つまり、あいつらの立場は学園が意図的に仕組んだ結果……ってことか。


「お前は妙なイベントで遊んでいればいい。余計なことはするな」


 まるで創造神にでもなったかのような態度。

 俺たちをコマ扱いするような言葉に、内心で舌打ちした。


「脅しのセンスがねぇなぁ」

「何?」

「甘い飴も刺激もない。人を操るのに向いてませんわね……ふふっ」


 レアと視線を交わす。

 互いに同じ結論……屈する気はない。


「……素直に従えばいいものを」


 再び指が鳴る。

 地面に魔法陣が浮かび上がり、その中から黒いフードを被った少女が現れた。


「……リーンか」

「貴様にも、リーンにも選択肢はないということだ」

「そんなに不満か? 呪いが無くなった程度で」


 彼女の目元は布で隠され、身動きひとつ取れない。

 明らかに拘束され、付与魔法で縛られている。


「勘違いするな。呪いがあろうとなかろうと、彼女の役割は変わらない」

「役割?」

「貧民層に慕われ、富裕層に嫌われる。運命という名の呪いに囚われたまま、リーンは我々に利用され続けるのだ」


 その瞬間、プツンと俺の中で何かが切れた。


「お前らに左右される人生なんて、つまらんな」

「誰もが役割を持つ。その役割に従うだけで幸せは手に入る」

「敷かれたレールの上を歩くだけの人生が、何の面白みがある」


 レアを見ると、静かに頷いた。

 同感だ。こいつらは、聖教委員会と同じ腐臭を放ってやがる。


「一つ、忠告してやる」

「なんだ?」

「俺たちは、生徒会長が相手でも同じことを言うぞ」


 静かに立ち上がると、周囲の視線が一斉に集まった。

 そして、


「ぶっ飛ばされな、クソ野郎」


 目の前の風紀委員に向けて、勢いよく中指を突き立てた。


「……相当な愚か者だな」

「愚かなのはそっちだ。誰を相手にしてると思ってる?」

「……なんだと?」

「ショータイムは、ここからだ」


 風紀委員の顔がわずかに歪む。怒りか、焦りか。

 どちらでもいい。俺には切り札がある。


 ビュンッ!


「っ!? こいつは……」


 俺が魔力の合図を送った瞬間、潜んでいたスライムたちが一斉に飛び出した。


「やられ役として見事だ。我々を立てるつもりだったか?」


 しかし、スライムは斬られてバラバラにされる。

 風紀委員たちは余裕の笑みを浮かべていた。

 それが油断だとも知らずに。


 ドロッ……


「がっ……こ、れは……!?」

「うごけな……っ!!」

「あああああっ!!」


 斬られたスライムの断面から、大量の粘液が噴き出す。

 粘液は風紀委員たちの身体にまとわりつき、地面に縫い付けるように固定した。

 さらにスライムは分裂し、再び形を成していく。


「呪いスライムの特製液だ」

「残さず召し上がれ♪」

「ま、待て!!」


 その隙に俺はリーンを抱え、拘束を解いた。

 自由になった瞬間を皮切りに、その場を離脱する。


「さて……まずはサーシャ達と合流だな」

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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