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第71話 モブキャラ、聖教委員会と接触する

「ウチらは利用されている。聖教委員会にとって都合のいい敵として」

「……宣伝のためか」

「いえす」


 生徒会や風紀委員会に反対するやつなんか、いくらでもいる。

 わかりやすい権力者であり、自分たちよりも上の立場。

 信者を集めたい聖教委員会からすれば……これ以上なく都合がいい相手だ。


「聞こえはいいですわね。聞こえは」

「信者があからさまな押し売りをしてたからなぁ」

「狙いは見事ですわ。むしろわたくしが狙っている層を共感できる言葉で引き込んでいる」

「共感できる? どこがだい?」


 サーシャの疑問に、レアはふふっと笑いながら解説を始めた。


「生徒会や風紀委員会、彼らは良くも悪くも放任主義なのよ」

「その過酷な環境に耐えきれない層が、彼らを支持しているわけね……」


 目の付け所は悪くない。

 宗教とは心の拠り所のようなもの。

 虐げられた下級生徒たちに寄り添う言葉で支持を集めているのだろう。


「優秀な人間ばかり優遇してどうする!? 未来の卵はここにもいるじゃないかー!!」


 その演説は耳障りはいいが、目先の問題ばかりに訴えかけている。

 聞いていて気持ちはいい。

 だが、長期的なプランがまるで見えてこない。


「そこの君はどう思う!? ここにいる生徒達に思いをぶつけてみようじゃないか!!」

「えっ」


 ビシッと指を差された方向には、なぜか俺がいた。

 ……なんで? 何も言ってないぞ。


 まぁ断ると余計にややこしくなる。

 素直に従っておくか。


「リーン、これ」

「わっ……ありがとう」


 リーンの頭に、俺が着ていた上着を被せる。

 呪いが治ったとはいえ、その事実はまだ知られていない。

 聖教委員会に目をつけられている立場でもあるし、姿は隠しておいた方がいい。


「……ダーリン、大丈夫?」

「変なことは聞かれないだろ。適当にあしらっておく」


 群衆の前で派手なことはしないはず。

 強い意志を保ちながら、俺はバルカンのもとへと歩み出す。


「はじめまして、バルカン委員長。俺は一年Sクラスのゼクス・バーザムです」

「ほぉ、君が“公女たらし”の……」


 聖教委員会まで俺の噂が届いてるのか。

 どうやら悪評はそれなりに広まってるらしい。


「君は最近、D〜Cクラスの人間を利用して殺し合いをさせてるらしいね?」

「えぇ。興行としては中々盛り上がっていますよ」


 フィールドロワイヤルは今のところ収益も右肩上がりだ。

 あと二〜三ヶ月もすれば安定するだろう。

 今のうちに地盤を固めておきたいと考えている。


「我々、聖教委員会としては見過ごせないね」


 バルカンは険しい顔を浮かべ、俺を非難する。


「救われるべき人間を弄んで利用するとは……これこそ恵まれない者たちの未来を奪っているに等しいと思わないかい?」


 ……趣旨が変わってないか?

 演説への感想を求められたと思ったのに、完全に吊るし上げモードだ。


「そうだそうだー!!」

「バルカン様のご慈悲を無駄にするなー!!」

「俺達は道具じゃないぞ!!」


 バルカンを援護するように、罵声が次々と飛んでくる。

 酷いのは石まで投げてくる始末だ。


(俺をさらし者にしようってか……)


 聖教委員会への信者を増やすための“悪役”ってわけだな。


「お言葉ですが、バルカン委員長。俺がやっていることは、貴方の目指す“弱者の救済”ですよ?」

「ほう?」


 ふっと笑い飛ばし、俺は民衆に向けて自分の事業を説明し始める。


「確かに恵まれない生徒はいる。しかし、全員を救う必要はない。やる気のないやつまで手をかけてどうする? 無駄じゃないか」

「なんだと……!!」


 会場からブーイング。

 レアも「あーあ、言っちゃった」と顔を覆っている。


「だからこそ、やる気のある生徒を見殺しにしないために……フィールドロワイヤルがあるんです」


 説明は続く。

 俺の事業が間接的に下級クラスの救済につながっていることを示すために。


「活躍すれば上位クラスへと昇格が約束される。さらに、戦術を教える実習プログラムは“誰でも”受講できるんですよ」

「なっ……」

「ご存知なかったですか? 俺も宣伝不足でしたね」


 誰でも受講できるようにしたのは、フィールドロワイヤルの空気を知ってもらうためだ。

 やる気のないやつは自然と消え、質のいい生徒だけが残る。

 知識以外の報酬はないし、警備体制も万全にしてある。


「本当に救われたい生徒にチャンスを与える。この殺伐としたグランヴァル学園で、生き抜く力を育てるという意味では……貴方の掲げる“虐げられた者たちの救済”とそう変わらないと思いますが?」


 死ぬ気で頑張れば成り上がれる。

 一つの道を示すという意味で、俺と聖教委員会は似ている。


「……」

「すみません、つい熱くなってしまいました」


 会場内が静まり返る。

 バルカンも黙り込んだ。利用しようとしていた計画は崩れたようだ。


「この野郎ー!!」

「うおっ……なんだ?」


 その静寂を破るように、また石が飛んできた。


「委員長に歯向かうとは無礼な!!」

「バルカン様は絶対だ!! それを否定するなんて!!」


 バルカンに逆らう者は悪。そんな空気が会場を支配する。

 想像以上に、信者たちは危険な集団だ。


「ちょっと!! マズい事になりましたわよ!?」

「あぁ……一旦逃げたいが……」


 右を見ても左を見ても信者だらけ。完全に囲まれた。

 派手に暴れて突破するか……そう思った瞬間。


 ドカァアアアアアンッ!!


「うわああああああ!?」

「な、なんだ!?」


 近くの校舎が爆発した。


「こっちこっち!! 早く!!」

「え? あ、あぁ……」


 聞き覚えのある声がした。

 俺たちはその声に導かれるように、廊下の細い道へと駆け込む。


「フィールドロワイヤルって慈善事業だったかしら?」

「まさか。表向きの言い訳だよ」


 一番の目的は俺達がいかに稼いで知名度を上げるかだ。

 弱者の救済はついでにすぎん。


「大丈夫? ゼクスくん?」

「お前は……?」


 目の前に現れたのは黒髪ツインテールの美少女。

 キリッとした顔立ちに、スラッとした体型。

 どこかクールな雰囲気をまとっている。


 誰かはわからない。だが、どこか見覚えがあった。


「あぁ、イメチェンしたからわかんないよね」

「イメチェン???」


 姿を変えたってことか? 

 こんな目立つやつ、忘れるわけが……


「ほら、何回か僕に話しかけてくれたライトだよ」

「は!?」


 にへへ、と微笑みながらピースする。

 主人公!? ツインテ美少女が主人公だと!?

 イメチェンっていうか、もう性別変わってんじゃねぇか……

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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