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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第68話 モブキャラ、素材を集める

 side:リーン


 ウチはリーン。

 スラムで生まれた。


 スラムはゴミとガラクタだらけで、欲しいものは奪って手に入れるのが当たり前。

 そんなウチが魔法に目覚めて、無茶に使うのは言うまでもない。


 知識も、教えてくれる人も誰もいなかった。

 だから知らなかったんだ。

 正しく魔法を学ばないと、ウチの両手足が呪われるなんて。


『何……その手……』

『気持ち悪い!! やだぁ!!』


 赤黒く変色した手足を見て、誰もが怯えた。

 呪われているって。


 最初のうちは色々思うこともあったけど、今ではもう気にしていない。

 やらかしたウチが悪い。だから一生背負う罰なんだって思ってる。


(……あ)


 仲の良さそうな男女を見ると、ふと羨ましくなる。

 手を繋いだり、ハグしたり、えっちなことをしたり。

 そういう”繋がり”が、欲しくなる。


 ウチの呪われた手足に触れた生き物は、全て灰と化す。

 感覚もない。

 わかってる。ウチがそんな欲を持っても仕方ないって。

 それでも——憧れてしまう。


 ウチも人間。

 そういう小さな欲くらい、持っていてもいいはず。


(この人は、変)


 だからゼクスに会った時は驚いた。

 ウチの呪いを知ってても、手足を見ても拒まない。

 むしろ「美しい」なんて褒めるんだから。


 変わり者だ。

 ウチを肯定してくれるみたいな、不思議な人。

 あんなに綺麗な女性に囲まれてるのに、ウチを欲しがるなんて本物の変態だ。


 でも、嬉しかった。


(期待はしないでおこう)


 魔法を使ってまでウチの手を握った時、心がぽかぽかした。

 無理だとわかってるはずなのに、全力で解呪を試みてくれた。

 それだけで十分だ。


 この人とは、ずっと仲良くしていたい。

 余計な期待をして、嫌いになりたくない。

 今のままでいい。

 嫌われ者のウチに、ちょっとした幸せをくれたのだから。


 ◇◇◇


「リザードマンのコア? 何に使うのかしら?」

「コアを合成すると、能力変化を確定で発動できるんだ。例え対策してもな」


 能力ダウンを狙う時によく使っていた。

 ただ最近の調整で、適用される能力に制限が入った。

 が、付与武器の効果を下げるくらいなら、まだできるはずだ。


 リザードマンは中層でも比較的狩りやすい。

 ドロップ率も悪くない。


 これを大量に集めて合成すればリーンを治す準備が整う。

 聖なるハーブもすでに注文済みだ。


「でも、量が必要なんでしょ? 一体どうやって」

「あー、結構簡単だぞ?」

「え?」


 レアが疑わしげな声を上げる。


「リザードマンって、知能は大したことないからな」


 さてさて、ここからは狩りの時間——いや、作業の時間だ。

 ゲームみたいに、根気との勝負だな。


 ◇◇◇


「キシャアアアアアア!!」

「ほいっ」


 ダンジョンで、罠にかかったリザードマンを次々と処理していく。

 ヤツらは単純だ。用意した餌にあっさり食いついてくれる。


「こんな簡単に倒せる相手でしたの……?」

「リザードマンはタイマンだと厄介だけどね。ダーリンは別」


 転がる死体を手際よく解体しながら、二人は淡々と作業を進めていく。


 手順はこうだ。

 まず、リザードマンを呼び寄せる。

 倒した個体の肉と血を人形に染み込ませておくと、仲間だと勘違いして集まってくる。

 その習性を利用する。


 次に、誘導したリザードマンを罠地帯に引きずり込む。

 散布した煙で視界を奪われている中、針山のような地面で足を封じる。

 足を奪えば、人型モンスターはもう動けない。

 あとはとどめを刺すだけ。


 ——簡単だろ?


「うわぁ……どんどん集まってくる」

「スライムたちもおびき寄せてるからな。『仲間がピンチだ』って伝えさせてるんだ」

「えぐい戦法。嫌いじゃない」


 リーンがクロスボウを撃ちながら、無表情で淡々と言う。

 戦法なんて勝つための手段だ。卑怯でもいい。


「ふんふんふーん♪」

「え、もう作ってるの?」

「合成は面倒だからな。あとは聖なるハーブを入れるだけにしてある」


 瓶にスライム液を注ぎ、砕いたコアを混ぜる。

 この二つだけでは効果は発揮しない。安全だ。


 ちなみにスライム液は召喚スライムから搾り取った。

 最初はちょっと気が引けたけど、ギュッと搾るだけで液が取れることが判明。

 しかも本人たちは気持ちいいらしく、行列ができたほどだ。


 ……何度も腱鞘炎になって辛かったけど。

 魔力充填で何とか耐えた。


(……飽きてきた)


 問題は単純作業すぎること。

 リーンを治すにはまだまだ数が足りない。

 根気だけが頼りだ。


「ダーリン……♡」

「ん?」


 振り向いた瞬間、サーシャの唇が重なる。


「こんな所でイチャイチャしないで!! 死にますわよ!?」

「攻撃はビットに任せてるし大丈夫。それよりダーリンが近くにいるんだから、ね♡」

「恋愛脳も末期ですわね……」


 軽いスキンシップだってのに、と心の中でレアに言い訳する。

 そのレアもどこか不満げだ。


「レア」

「はい? んんっ!?」


 拗ねてるのが可愛くて、ついレアにもキスした。


「ば、ばかっ!! 作業に集中しなさいっ!!」

「嬉しいくせに」

「貴方はいつも……もう、知らない!!」


 ため息混じりでも、顔は真っ赤だ。

 ほんと、不意打ちに弱い。


「……」

「ん?」


 二人とのやり取りを見ていたリーンが、じっと俺を見つめていた。


「頭、撫でようか?」

「大丈夫。ありがとう」


 甘えたいのかもしれない。

 事が終わったら、ちゃんとご褒美をあげよう。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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