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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第67話 モブキャラ、宗教を知る

「呼び名? 性欲魔人でいいでしょ」


 早速レアに聞いてみたが、さらに酷い答えが返ってきた。


「もっとかっこいいのがいいなぁ」

「えー? そこまで名前にこだわりありますの?」

「生徒会にも公女好きって言われたんだぞ? 気に入ってはいるが、氷結姫みたいなのが欲しくて……」


 いくらなんでも性欲魔人はよくない。

 ド変態みたいな称号が二つもあるなんて、誤解されるに決まってる。


 ……誤解、っていうより事実か?

 ええい、とにかくかっこいい呼び名が欲しいんだ。


「そうね、だったら……」


 後ろに手を組みながら、くるっと振り返るレア。


「貴方の恐ろしさを学園中に広めましょ。公女好きの怪物さん♪」


 あざとく弄ぶような表情に、思わずドキッとした。


 確かに、俺が何をしたかなんて周りの連中は知らないよな。

 もう少し悪名高いことでもしてみるか?

 例えばスライムじゃなくてドラゴンを引き連れたりとか。


「あ、ここは通らない方がいいわね……」

「ん?」


 廊下を抜けて広いフィールドに出たとき、

 レアはとある建物を見て、迷わず引き返した。


「あれって……」

「聖教委員会の施設よ。エルファリア教を主軸にした宗教委員会ね」

「あー、エルファリア教かぁ……」


 嫌な思い出が蘇る。

 廊下で少し嫌味を言っただけで詰め寄ってきたあの姿。

 場を収めるためとはいえ、俺も免罪符とかいう変な紙を買わされたからなぁ。


 ちなみにその免罪符は今も財布の中に入れてある。

 何かに使えるかも、と思って。


「聖教委員会ってなんで成立してるんだ? エルファリア教ってグランヴァルじゃ流行ってないだろ」

「はっきり言ってしまえば……必要悪、というやつですわ」

「必要悪?」


 いまいちピンときていない俺に、レアが説明する。


「宗教って、良くも悪くも対立が激しいの。特にエルファリア教は信者が過激で、何か不満があればすぐデモを起こすような連中」

「殺伐とした環境作りのために、“あえて”放置しているわけか」

「風紀委員会だけでなく、生徒会とも敵対していますからねー。そういう派閥は学園では珍しいのよ」


 確かに宗教は身内に甘い分、外部にはやたらと否定的だ。

 教えこそが全て。それ以外は敵。

 信者同士の結束が強いから、派閥としても意志の統一がしやすい。


 イエスマンばかりでは争いは生まれない。

 反抗勢力があることで初めてバトルが生まれ、環境はより殺伐なものへと変化する。


 必要悪という立場も、なんとなく理解できる。


(ここまで過激だったか……?)


 しかし、原作勢の俺からしたら不可解な点も多い。


 原作だとビラ配りする程度で「入りたい人は入ってね」くらいの温度感だったはず。

 周囲からの評価も「ちょっと変わった組織」だったが、この世界では完全に過激宗教に成り下がっている。


 まあ原作では貴重なMP回復アイテムを売ってくれる場所という認識だった。

 メインストーリーにもほとんど関わらないし、リーンに敵対するような描写もなかった。


「なぁ、聖教委員会の代表って誰かわかるか?」

「確かミレイユ公爵家のバルカンでしたわね。わたくしも交流はありませんが」

「バルカン……誰だ?」


 誰だそいつ。

 本来の聖教委員会の代表はナターシアじゃないのか?

 おしとやかで、常にニコニコしている聖女みたいな人――

 それが俺の知らないキャラに置き換わっている。


 かなり変な方向に向かってそうだな……。


「バルカンはお金が大好き。そしてウチが大嫌い」

「お、いたのかリーン」


 気配もなくスッと姿を現すリーン。


「お金が好きなのか……あの免罪符とか?」

「それだけじゃない。信者に多額の献金を要求して、払えない者は問答無用でランクを下げる」

「ランク?」

「信者としての信頼度や格。払えば払うほど、バルカンから信頼され、手厚く保護されるの」

「お金に汚い組織ですわね……」


 まるで配信者のサブスクみたいなものか。

 上のプランに行けば行くほど、豪華な特典がもらえるってやつ。


「金で支配された組織に、信者がついていくのか?」

「一応、見返りはそれなりにある。バルカンが公爵家の人間だからってのも大きいけど……」

「けど?」


 呼吸を挟んで、リーンが低く言う。


「彼には不思議なカリスマ性がある。正直、彼の顔はあまり見ない方がいい」


 意味深な評価。

 知らないキャラであることも含めて、バルカンという人間がますます謎に包まれていく。


(というか男だったのか……)


 代表の性別まで変わっている。

 これは完全に別キャラへ置き換えられたと考えていいだろう。


 できれば関わりたくないが……リーンのことも含めて、何か仕掛けてきそうなんだよなぁ。

 ま、その時に考えればいいか。


「それで? 素材は集まる?」

「スライム液は召喚獣で確保できるし、デバフ用の聖なるハーブを仕入れるお金も手に入った」

「聖なるハーブって、物に付与された魔法効果を下げる薬草のことでしたわね?」

「そうそう、ちょっと高いけどな」


 フィールドロワイヤルが想定以上の収益を出してくれたおかげで、十分な量を確保できた。

 スペシャルマッチに関しても、Bクラス以上の連中から「憂さ晴らしさせろ!」と要望が集まっている。


 中でも一番驚いたのはブーロンからだった。

 “俺様が出ればもっと盛り上がるぜぇ!”と自信満々だったが……いや、確かにSクラスが出たら盛り上がるだろうけどさ。


「期待外れ。ウチの呪いは聖なるハーブで無効化できない」

「無効化じゃない。ま、これだけだと呪いに打ち消されるから……」


 強すぎる付与魔法に聖なるハーブを使っても、ただ魔法が消えるだけで、肝心の効果は発揮されない。

 だからこそ一工夫するわけだ。


「後、必要なのはリザードマンのコアだ。ダンジョンに潜るぞ」


 最後の鍵は、ダンジョンに眠っている。

 また作業の始まりだ。もうひと踏ん張りしよう。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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