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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第65話 モブキャラ、企画する

「こちらです、ミホーク様」


 あれから一ヶ月が経った。

 C〜D クラスの敷地内にある、やや廃れた講堂。

 そこへ、俺ともう一人。生徒会メンバーのミホーク・エルレインという青年を招いていた。


「クラウン家の次女を育てたのは君か。アリーシャの手腕を見極めるはずが、予想外のサプライズになったね」

「盾で飛び回るとは私も予想外でした。教え子が想定を上回ってくれるのは嬉しいです」

「ふふ、生徒会は驚きが尽きないよ。特に会長がね」


 打算的な営業スマイルを浮かべるミホーク。

 油断はできない。アリーシャのイベントのときも、終始ニコニコしていてどこか不気味だった。


「それで? 君たちは何を始めたんだい?」

「見ればわかりますよ」


 俺が両開きのドアに手をかけ、ギギギと建て付けの悪い音を立てながら開けると、目の前に広がっていたのは、


「そこだー!! 深く差し込めー!!」

「何ガードしてんだ!! お前に賭けてるんだぞ!!」

「……ほほぉ」


 ドーム状のフィールド。

 中心では二人の生徒が本気で殴り合っており、それを取り囲む観客たちが欲望のままに歓声を上げていた。


「C〜D クラスの連中を集めて闘技場を作ってみました。名付けて『フィールドロワイヤル』」

「観客はどちらが勝つか賭けているわけか」

「その通り。もちろん、自己防衛の際にうっかり人を倒してしまうこともありますが……」

「実にスリリングだね。面白い」


 C〜D クラスの生徒の扱いは軽い。

 風紀委員会は基本的に動かないし、学内での“事件”は黙認されている。

 

 人数の偏りもまた深刻だ。

 CクラスとDクラスを合わせた人数が B クラスの四倍以上あると聞いたときは、さすがに驚愕した。


 だが、ここは歪んだ世界。

 殺すか殺されるかのスリリングさは観客の扇情を強く刺激する。

 アングラなエンタメとして利用しない手はない。


『別にいいんじゃありませんの?』

『D〜Cクラスの人間だろう? 多少死んだところで誰も気にしないよ』


 一応、レアとサーシャにも確認したが、彼女たちは死傷者が出る件について特に問題視しなかった。

 価値観の違いだろう。

 ためらう気持ちすら湧かない俺はこの世界に毒されている。


「しかし、ありきたりだね。バトルファイトなら非合法を含め何度も開かれている。賭けもアリーシャさんのときと似通っているし……」


 ミホークは辛辣だ。

 レアによれば、彼は生徒たちの自主イベントへ頻繁に顔を出すらしい。

 目が肥えている観戦者だという。


 俺がそんな風に眺めていると、場内が突然騒然となった。


「うわあああああああ!?」

「おーっと!! 早速ギミックが動いたー!!」


 フィールド内に突如、落石が降り注ぐ。

 派手な演出にミホークの目が見開かれた。


「これは?」

「婚約者の一人が武器作りを趣味にしてまして。せっかくだからランダムギミックとして組み込んでみたんです」

「なるほど、だから”フィールド”ロワイヤルか」


 一対一のガチンコバトルも良いが、賭けを盛り上げるためにランダム要素を増やしたかった。

 そこでサーシャに頼み、フィールド内にさまざまなトラップを仕込んでもらったのだ。


 落石や毒ガス、さらには大爆発まで。

 何が起きるかわからないギミックに観客は熱狂する。

 プレイヤー視点では厄介な障害だが、使いこなせばむしろ有利に働く仕掛けも混ぜてある。


「こちらを」

「ん?」


 俺は一枚の紙をミホークに手渡した。


「参加者のランクです。上がるほどファイトマネーも増えます。観客も、さらに殺伐とした戦いが見られるので大満足」

「ランク制か……グランヴァルのクラス制をバトルファイトに置き換えたわけだね」

「最上位までたどり着けば、問答無用でBクラスに昇格できます。これはマヤ先生からも許可をいただきました」

「へぇ……」


 マヤ先生も「ならず者の悪あがきとは、面白そうじゃのう」と快く引き受けてくれた。

 ちなみにこの時、ジャババの死体も渡したのだが、


『ほほぉ!! お主、なかなか良い物を持って来たな!!』


 魔装結晶が二本刺さった身体だと説明しただけで、マヤ先生は目を輝かせた。

 死体をペタペタ触り、周囲も気にせず解体を始めるその姿に、思わず引いてしまったほど。


 報酬代わりに俺の提案を受け入れてくれたのかもしれない。

 まぁ、今後の繋がりに期待できそうではある。


「また、Bクラス生徒による戦闘講座も開催しております」

「育成にも熱心か……いいね」


 話を戻そう。

 参加者がレベルアップするための施策として、戦闘に関するノウハウを学べる場を設けた。

 自由参加ではあるが、参加者からは「わかりやすい」と、なかなか評判がいい。


「さらにメインイベントも……」


 そう話しているうちに、もう試合は終わっていた。

 フィールドギミックを片付ける中、実況席から司会者の張り上げた声が響く。


「さぁさぁ!! 今回のスペシャルマッチのゲストは……名無しの女子生徒!! 謎多き彼女に十人の刺客が挑みます!!」

「スペシャルマッチ?」

「Bクラス以上の生徒を定期的に呼んで戦わせています。もちろん、制限は設けていますが」


 奥の大扉がゆっくりと開き、砂煙の中に小さな人影が浮かび上がる。


「名無しの女子生徒の入場です!!」

「あれ? 彼女って……」

「俺もよくわからないんですよねー。たまたま通りすがったところをスカウトしたら、引き受けてくれて」


 フードを目深にかぶり、真っ白なお面をつけた謎の女子生徒。

 しかしミホークは一瞬で正体を見破ったらしく、やれやれと苦笑いを浮かべながら状況を見守っていた。


「死体……いっぱい……」


 自慢のクロスボウを取り出し、優しく撫でるリーン。

 そう、正体を隠した彼女が、まさかのスペシャルゲストとしてフィールドロワイヤルに参戦したのだった。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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