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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第63話 モブキャラ、宗教勧誘に出会う

「消すんじゃない!! 弱める方向で考えれば……!!」


 次々とアイデアが浮かぶ。

 これまで“消すこと”ばかりに固執していた。

 魔法の効果を抑えれば、今のままでも解決できるかもしれない。


「何か思いついたのかしら?」

「あぁ。うまくいけば、リーンの呪いも無効化できる」

「ただの思いつきだったのに……さすがダーリン♡」


 サーシャがハートの瞳を輝かせながら、勢いよく俺に抱きついてきた。

 今日だけで何回目? 何度抱きしめられても嬉しいが。 


「そうと決まれば、さっそく素材を……」

「授業、まだ残っていますわよ」

「……それも大事だな」


 授業は大事だ。知識はあるが復習の意味もある。

 それに、俺が色々改変しまくったせいで授業内容が変わっている可能性もある。

 油断はできない。


「期待はしてない。でも協力はする」

「はは、その考えがひっくり返ることを期待してな」


 出会ってまだ一日も経っていない。

 俺の実力を証明してわからせるまで、少しずつ時間をかければいい。

 休憩時間も終わりそうなので、俺たちは研究所を出て教室へ戻ることにした。


「エルファリア教の免罪符はいかがでしょうかー!?」

「互いを認め、互いの罪を許す!! エルファリア神に忠誠を!!」

「ん?」


 廊下を歩いている途中、必死に勧誘している生徒たちの姿が目に入った。

 謎の紙を配っているようだが……あれは何だ?


「なんですか? エルファリア教?」

「エルファリア聖教国の国教ですわね……わたくしはあまり好きではありませんけど」

「アタシもだね。悪い考えじゃないけど、ちょっと押し付けがましいというか……」


 あぁ、エルファリア教か。

 グランヴァル王国の隣にあるエルファリア聖教国が国教としている宗教。

 “お互いに助け合うこと”が教えだったはずだ。


 エルファリア聖教国では、民の八割がこの教を信仰している。

 一方のグランヴァル王国では、二~三割程度。


 俺が知っているのはそれくらい。

 だってメインストーリーの本筋にほとんど関わってこなかったからな。


「……今、エルファリア神を侮辱しましたか?」

「やばっ」


 地獄耳だったのか。

 辛辣な言葉に過剰反応した信者たちが、俺たちの周りを囲むように迫ってきた。


「エルファリア教の教えはお互いに助け合うこと!! 真の幸福へとたどり着く素晴らしい考えを、あなたたちは侮辱するんですか!?」

「あー……悪く言うつもりはなかったのよ」

「まだ信じていないな!! 今すぐこの免罪符を買って、幸福への階段を登ろうじゃないか!!」

「厄介なことになってきましたねぇ……確かにヤバそうです」


 宗教勧誘の押し売りを思い出す……

 休日にピンポンしてくるあの感じ、マジでうざかったんだよなぁ。


「呪いの子がいますよ」

「排除しますか?」

「いえ、風紀委員会に喧嘩を売るのはやめましょう」


 呪いの子? リーンのことか?

 侮辱の言葉を吐いた二人ではなく、黙って様子を見ていたリーンの方にヘイトが集まっている気がする。

 信者たちが彼女をじろじろと睨みつけている……


「……この免罪符を買うと、何が起きるんだ?」

「ゼクス?」


 早いところ切り上げたほうが良さそうだ。

 俺は間に入り、信者の一人に免罪符について問いかけた。


「よくぞ聞いてくれた!! 生きていれば、罪の一つや二つは犯してしまうだろう? その愚かな行為を反省と共に洗い流してくれるのが、この免罪符というわけだ!!」

「なるほどな。他には?」

「抱えている不幸からの解放とか、お守りとしてカバンに忍ばせたり……私も持っているぞ」


 ……それっぽい紋章が書かれた紙だ。

 特に魔力が付与されている感じはない。

 気持ち的な問題か? 明らかに詐欺じみた商品だが……まぁいい。


「一枚買わせてもらおう」

「ほう? 何か罪でも犯したのか?」

「この二人を制御できなかったのは、主人である俺の失態だ。それを免罪符で洗い流したいのだが……」

「っ……いいだろう。金貨一枚だ」


 何か言いたげな信者たちだったが、免罪符の説明をした後では分が悪いのか、大人しくなる。

 免罪符を口実にこの口論もなかったことにする。

 お互いに得をする一番丸い解決方法だ。


「……これ、使った後も効力はあるのか?」

「もちろんだ!! 常にエルファリア神が君を見守ってくれる!!」

「素晴らしい加護でしょう!?」


 別に見守ってほしいわけじゃないが……

 何か役に立つ日が来るのか?


「いいものを買わせてもらった。感謝する」

「いえいえ、エルファリア神のご加護があらんことを」


 上辺だけの言葉を交わし、俺たちは足早にその場を去る。

 信者たちの姿が見えなくなる奥まで黙って歩いたところで、ようやく足を止めた。


「申し訳ないわ。変なトラブルを起こして」

「……腹を斬って詫びるよ」

「そこまでしなくていい。エルファリア教が過剰に反応しただけだ」


 あそこまで言うか、普通?

 宗教なんて好みの問題だと思うが……


 無宗教が多い日本人の感覚が異質なだけなのかもしれない。

 このファンタジー寄りの世界では、宗教という存在が重く受け止められているのだろう。


「それにしても、リーンへの敵意が異常だったな」

「……いつものこと」


 どうやらエルファリア教とリーンには、何か因縁があるらしい。


「風紀委員会は聖教委員会と仲が悪い。特にウチは……」


 長手袋に覆われた手をぎゅっと握りしめる。

 無表情のままだが、どこか切なげな気配が漂っていた。

 言葉にできない事実がそこにあるのだと、俺は確信した。


面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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