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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第62話 モブキャラ、呪いに触れる

「なんだいそれ……まるで汚染されてるみたい」

「これがウチの身体。触れたものを全部傷つける」


 腕の周囲を包む不自然な魔力の流れ。

 本能が「触れるな」と警告を鳴らす。

 ゲームよりも遥かにリアルなこの世界では、その恐ろしさが生々しく伝わってきた。


「うわっ! 気色悪っ!!」

「やってられねぇよ!!」

「飯時にそんなもん見せんな!!」


 周囲の生徒たちが文句を言いながら立ち去る。

 リーンも気まずそうに長手袋をはめ直した。

 俺は何とも思わないが、この異様さに嫌悪感を覚えるのは無理もない。


「……別の場所、行かない?」

「構わんぞ」


 続きを話したいらしい。俺も興味がある。

 ただ、場所をどうするか。できれば人目のないところがいい。


「サーシャの研究所、使えるか?」

「いつでもいいよ♡ ダーリンのためだもん♡」

「助かる」


 サーシャの頭を軽く撫でると、お返しにキスが返ってきた。

 更に腰に腕を回して抱きついてくるが……

 こっちの方がTPOをわきまえていない気がする。


「ラブラブだね」

「あー、ラブラブ……ねぇ……」


 これでもサーシャはまだ抑えているほうだ。

 寮に戻れば「椅子になりたい」とか「叩かれたい」とか言い出す。

 そんなアングラなところも嫌いじゃないけどな。


 ◇◇◇


「で? それは一体なんなんだい?」


 サーシャの研究所へ移動。

 リーンは両腕と脚をさらけ出し、真紅に染まった肌を見せた。


「魔力暴走による呪い。正確にはウチの魔法が常時発動してる状態」

「常時発動? どんな魔法なのかしら」

「見てて」


 リーンは胸ポケットから小さなネズミを取り出した。

 いつの間に入れてたんだ、と内心ツッコミを入れながら見ていると、


「ね、ネズミがボロボロになっていくぅ!?」

「これが呪いの力か……」

「なるほど……」


 掴まれたネズミの身体がみるみるやせ細り、五秒も経たず灰のように崩れ落ちた。

 あまりの異様さに三人が同時に息を呑む。


「もしかして、小さい頃に魔法を間違った使い方したの?」

「いえす。平民のウチには教えてくれる人、いなかった」

「平民出身……そりゃ環境が悪いね」


 リーンの言葉に、レアとサーシャが納得したように頷く。


「どういうことです?」

「魔法は使いすぎると暴走するんだ。耐性がないまま無理をすれば、こうなる」

「あぁ!! そういえばおばあ様が言ってましたね!」


 魔力暴走。それは過剰な魔法行使によって起こる副作用。

 体調不良で済めばマシ。最悪、魔法の制御不能に至ることもある。

 だが正しい指導と訓練があれば防げる……


「ウチの手足は呪われた。誰も触れられない。聖職者でも……治せなかった」


 リーンの生まれはスラム。平民の中でも最底辺。

 教える者もいない環境で独学で魔法を使えば、暴走して当然だ。


「ですけど……これはこれでアリですよねぇ」

「へ?」


 メディが感心したように頷き、リーンはぽかんと口を開けるのだった。


「この異質さが、逆に美しい。メディもわかってるな」

「えへへっ!! ご主人様とお揃いですね!!」

「えぇ……変わってる……」

「残念だったわね。あの二人は可愛い子が大好きなのよ」


 まるで海外のクリーチャーデザインみたいだ。

 不気味さと色っぽさが同居した雰囲気に、俺の心は強く惹きつけられていた。


 こういうの、好きな人には結構刺さると思う。

 ホラゲーとかに出てくる、女性型クリーチャーみたい。


「……どれどれ」

「へっ?」


 気づけば、俺は何も考えずにリーンの手を握っていた。


「ダーリン!? 何してるの!?」

「ちょっと、試してみたくてな」


 触れただけで生物を灰に変える。

 だが俺なら……


「おぉ……やべぇな」


 右腕から生気が抜けていく。

 皮膚がみるみる痩せ細り、額からは汗が伝う。呼吸も乱れてきた。

 思った以上にヤバい。


「離して。それ以上は死ぬ」

「いやぁ? 俺は死なないぜ?」


 強がりながら全身へ魔力を一気に巡らせる。


「……肉体が元に? どうして?」

「魔力を流し続けてるからな。衰弱以上の回復力でゴリ押してみた」

「ほんと力技が好きねぇ。汎用性高すぎでしょ」


 魔力充填の回復能力。

 それがリーンの呪いを上回った。

 これなら少しの間だけ、彼女に触れることができる。


「どうだ? にぎにぎの感触は」


 パッと手を離すと、リーンは自分の手をじっと見つめた。


「……ごめん。手の感覚は、ない」

「「「えぇ……」」」


 まぁ、そうだろう。

 魔力暴走で汚染された身体なら、感覚がなくなっていても不思議じゃない。


「でも、あったかい気持ちにはなれた」


 リーンが小さく微笑む。

 その笑みに、俺の胸もふっと温かくなった。


「で? 呪いってどうにかできるのよね?」

「えーと、神秘の聖水が必要で……」

「神秘の聖水!? もう少し現実的な話をしなさいよ!!」


 もっともな言い分。

 リーンに“いつか”と伝えたのも、必要素材の入手難易度が高すぎるせいだ。


「あの、そんなに珍しいものなんですか?」

「ここグランヴァルで豪邸が建ちますわ」

「えぇ!? 超レアじゃないですか!!」


 原作でも、高難度エンドコンテンツを攻略してようやく手に入るアイテム。

 しかもランダムドロップ。

 方法は知っていても、今はフラグすら立っていない。


「……しょぼん」

「ダーリン、もう少し現実的な手はないのかい?」

「ある……はずなんだがなぁ……」


 この世界では、どんな呪いにも必ず解除法がある。

 けど、リーンの手足を治すイベントなんて存在しなかった。

 

 それでも、直感が告げている。

 “治せる気がする”と。


「この呪いって、付与魔法みたいなもの?」

「多分」

「だったら、付与魔法の効果を弱められればいいのにねぇ……」


 付与魔法? 効果を減らす?

 頭の中で過去のサブイベントの記憶が一気に繋がっていく。

 そして……ひとつの答えが閃いた。


「サーシャ!! それだ!!」

「きゃっ!?」


 これなら、治せるかもしれない。

 思わずサーシャに抱きつくと、彼女は顔を真っ赤にして慌てふためく。

 当のリーンは、きょとんと首をかしげていた。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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