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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
4章 モブキャラ、生徒会を目指す

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第61話 モブキャラ、再び出会う

「風紀委員に会った?」

「あぁ。俺を試そうと、いきなり襲いかかってきたぞ」

「ひえぇ……物騒ですねぇ」


 昼休み。

 食堂でさっきの“事件”を共有すると、みんなが一斉に食いついてきた。


「ダーリンを襲った??? なんて名前だい?」

「やめときなさい。風紀委員なんて敵に回さない方がいいわよ」

「ダーリンの敵はアタシの敵だよ!? 殺せなくても、毒兵器でじわじわ追い詰めてやる……!!」


 早くもサーシャが敵意を剥き出しにしている。

 とはいえ、彼女が勝てるかどうかは怪しい。

 変な武器で暴れられても困るし止めておこう。


「安心しろサーシャ。リーンは俺の敵じゃない」

「その確証は?」

「本気で殺したいなら、途中で帰ったりしない」


 あの時、俺はいくつも隙を見せた。

 出会った時も、帰ろうとした時も。

 不意打ちのチャンスはいくらでもあった。

 

 それでもリーンは弓で軽く牽制しただけで、それ以上は仕掛けてこなかった。

 あくまで“試す”のが目的だったのだろう。


「ゼクス、風紀委員会が何かわかってますの?」

「知ってるよ。学内の治安を維持するための組織だろ」


 グランヴァル学園には、生徒会を筆頭にいくつかの委員会が存在する。

 風紀委員会もそのひとつ。

 ただし、“治安維持”というには少し変わった組織でもある。


「治安維持? じゃあデストレーダーの騒動は?」

「あいつらは学園が崩壊しそうな時しか動かない。知ってて見過ごしたんだろ」

「それ、仕事してるって言えるのかい?」


 基本的には黙って見ている。

 理由は単純だ。


「その通り。あれは一年生だけで解決できた」


「「っ!?」」


 気づけば、空いていた隣の席にリーンが座っていた。

 気配すら感じさせない登場に、サーシャとメディが同時に目を丸くする。


「気配もなくあっさりと……この人が例の?」

「あぁ。可愛いだろ?」

「そういう問題じゃなくて……」


 レアは片手で紅茶を飲みながら、机の下でもう片方の手に力を込めていた。

 いつでも戦闘態勢に入れるように。


「ウチがリーン。一応二年生だけど……その焼きそば、もらっていい?」

「構わん。あーんしてやろうか?」

「……この人、おかしい?」

「その通り。ゼクスはおかしいのよ」


 変な人とは失礼な。

 ただ、悪役ヒロインを愛しているだけだ。


「ダーリン……アタシにもあーん……」

「ほいほい」


 手を添えて、サーシャの口へ焼きそばを運ぶ。

 ヤンデレになっても、甘えん坊なところは変わらないらしい。


「それで? 何か用か?」

「用はない。ただ、風紀委員会の話をしてたから」

「圧でもかけたいのかしら?」

「ううん。少し誤解してる」


 残りの焼きそばをすすりながら、リーンは淡々と話を続ける。


「風紀委員会は基本監視だけ。揉め事は当人同士で解決させるのが方針」

「なんでだい?」

「グランヴァルの生徒が成長するため」


 俺以外はピンときていないのか、みんな首をかしげる。


「グランヴァル学園は過酷な環境から多くの人材を輩出してきた。この異様で歪んだ世界こそ、成長に最も適していると判断した」


 治安が悪く、油断すればすぐ下位クラスに落とされる。

 そこから這い上がった者こそ価値がある。

 王族ですら、グランヴァルでの評価を重視するほどだ。


 だから先生も委員会も手は出さない。

 学園が崩壊するギリギリの環境を意図的に作り、生徒に“生き残る力”を叩き込む。


「でも、ご主人様に襲いかかりましたよね?」

「あれは話題の生徒を試してた。もし殺したら……死体になるから嬉しい」

「し、死体ぃ!?」


 ぶっ飛んだ発言に、場の空気が一瞬で凍りつく。


「死体はいいよ。何度触っても壊れないから」


 その中でただ一人、嬉しそうに語るリーン。

 まるでお気に入りの玩具を語る子供のようだった。


「恐ろしい風紀委員だねぇ……」

「わ、私、よくわかりません……」


 “例の呪い”が関係しているとは思うが、リーンの価値観は色々とズレている。

 さすがに「死体が欲しい」とか言われたら困るけど。


「つまり環境は用意するけど、後は自力で何とかしろってことですわね?」

「大体あってる。まぁ、Bクラスより上に露出魔とかいたら取り締まるけど」

「そこは仕事するんですね……」


 性的な事件には動くらしい。

 まぁ、Bクラス以上はそれなりに優秀な連中だし、最低限のマナーは気にするのかも。


「レアのTバックも取り締まり対象かい?」

「なんでよ!! あれは下着として履いてるだけですわ!!」

「……あれはびっくりした。そういう趣味かと」

「な、なんでわたくしの下着を知ってますの!?」


 レアが顔を真っ赤にして威圧するも、リーンは気にも留めずスープを飲んでいる。

 多分、気配を消してこっそり見たんだろう。


 ちなみに今日のレアは、黒いレースの下着。

 布の少なさに反して装飾が派手で、相変わらずエロかった。


(……仲良くやれそうだな)


 雰囲気は悪くない。

 原作では交わることのなかった悪役ヒロインたち。

 しかも三人も。


 ルートが存在しなかっただけで、性格的には意外と相性がいいのかもしれない。


「ゼクス」

「ん? なんだ?」

「ウチの呪いをどうにかできるって本当?」

「あぁ、本当だ」


 そういえば、そんな話をしたな。

 リーンが抱える“呪い”。

 原作の知識を使えば、きっと治せるはずだ。


「呪い? どういうことですの?」

「話が見えてこないね……」

「むむむ……?」


 “呪い”という単語に、三人が一斉に反応する。

 リーンは気にした様子もなく、右腕の長手袋を静かに脱ぎ始めた。


「こういうこと」

「「「えっ!?」」」


 生肌が露わになった瞬間、全員が息をのむ。


「これ……人間の腕、なの?」


 赤黒く染まった肌。

 浮き上がった白い血管が、不気味なほど生々しく見えた。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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