第6話 モブキャラ、魔物退治の準備をする
「うわぁ!? 本物のマナ鉱石だ!!」
「大量だー!! 億万長者だー!!」
掘れば掘るだけマナ鉱石が出る。
大型で質のいいヤツがゴロゴロと。
「嘘でしょ……しかもこんなに」
「いやぁ、ついてるねぇ」
あれから一週間が経過した。
マナ鉱石を掘る人材確保や採掘作業に結構時間がかかった。
ただ領民は喜んでるし、レアも顔を引きつらせて苦笑いしてる。
結果オーライだ。
「鉱石のある場所まで当てるって、どういう事ですの?」
「言ったろ? 俺は生まれ変わったって」
「それ、都合のいい誤魔化しに使ってません?」
この辺りの鉱山はゲームで散々通ったからなぁ。
マナ鉱石が湧き直す場所とか、そこに辿り着くまでの近道とかぜーんぶ記憶している。
「ん?」
気配? 振り向いた先には何もいない。
「どうしましたの?」
「いや、そこに人がいるような気がして……」
「人? そこには人も動物も魔物もいませんわよ」
おっかしいなぁ。
確かにいた気がするんだけど。
「わ、わぁ……流石はご主人様……」
「「え?」」
と、木の周りの空間が揺れ始めた。
「私の魔法を見破るなんて凄いですねー」
「っ!? ゼクスのメイド!?」
「こんな事できたのか……」
現れたのはなんとメディ。
まさか透明になっていたのか?
「何故、隠れていたんだ? というかその魔法は一体?」
「お二人が仲良く話されていたので隙を伺っていたんです。いつでも対応できるよう”気配遮断”と”擬態”で近づいて……」
「中々凄い魔法を……というかわざわざ魔法を使う必要はありませんわよ? 普通に来ればよかったのに」
「いや~、不法侵入する時の癖が抜けなくて♪」
サラッと凄い趣味を暴露したな?
というか気配遮断と擬態か。
気配遮断は文字通り気配を減らす魔法。
擬態は周りの建築物の色に自分が変化する魔法。
どちらも隠密行動に向いている魔法だ。
アサシン向きの構成なのに、なんでメイドやってるんだ?
「で? 要件は?」
「なんとか作業員の人材を確保できましたー!!」
「流石メディ。ご苦労だった」
「にへぇ♪」
後、ここ最近メディがめちゃくちゃ甘えてくる。
彼女はどうも強気でドSな人が好きらしいが……まぁ美少女に好かれるのは結構いい気分だ。
この調子でレアも堕とせたらいいんだが……ん?
「おいおいおい!! これはどういう事なんだゼクス!?」
「これはお父様。珍しく元気そうですね」
バタバタバタッ!!
慌ただしく走りながら現れた小太りの男。
ブナン・バーザム。俺の父親だ。
「元気も何もあるか!! ウチの鉱山にマナ鉱石があるなんて知らなかったぞ!?」
「まぁ言ってませんからね」
「なんだと!?」
言ったら面倒な事になるからな。
俺にもある程度資産を運用する権利はあるし、バレる前にスカーレット家へ売り飛ばしたかった。
「スカーレット家ともマナ鉱石に関する契約を結んでおります。なのでお父様の仕事は何もありませんよ?」
「へ? 終わった事? スカーレット家が関わってるなら、まぁいいか……」
おいおい。それだけでいいのか?
息子の説明だけで納得してるし、来た道をUターンしてる……
早くね? もう少し疑う心を持てよ。
「契約書も見ないで一安心……バーザム家がこうなるワケですわ」
「だな。ここまで酷いとは思わなかった」
衰退して当然だ。
何となくで生きてきた結果なんだろう。
まぁ干渉してこないならそれでいい。
俺は俺でやりたい事を進めよう。
「で? スカーレット家にはいつ行けそうだ?」
「この目でマナ鉱石は確認できましたので……明日からにしましょう」
本当はすぐスカーレット家に行きたかったが、マナ鉱石を見てないからと先延ばししていた。
「急でいいのか? 準備とか必要だろ?」
「一日だろうと一週間だろうとウチは変わりませんわ……悪い意味で」
レアの様子を見る限り、何か問題を抱えているらしい。
あの辺でなんかイベントとかあったっけな……
「レア様、こちらを」
「こんな時に何を……嘘でしょ?」
割り込む形で執事がレアに手紙を渡す。
「ゼクス、申し訳ないのですが、ここでもう少しお世話になっていいかしら?」
「俺は構わんが……何かあったのか?」
「スカーレット家とバーザム家を繋ぐ道に魔物が現れたそうよ。しかもBランクの」
「えぇ!?」
「わぉ」
魔物かぁ。そんなのもいたな。
「魔物は複数体いるみたいですし……とことんついてないですわね」
「退治しないのか?」
「わたくし一人でBランクの群れを相手にするなんて無茶ですわ。せめて増援を呼ばないと……」
魔物や冒険者はD~Sの五段階で評価され、B以上になるとレベルもグンと上がる。
原作でもBランクは中盤以降だったな。
ちゃんと鍛えて戦術を組めば余裕だが……現実ではそうもいかんか。
「増援ならいるぞ?」
「……俺自身だ、とか言うんじゃありませんわよね?」
「大正解。ここ一週間修行ばかりで飽きてたんだ」
「世間知らずのお馬鹿さんね……」
戦術を試したり、魔力充填や武器の訓練など。
この一週間で精度はかなり上がった気がする。
ゲームのような動きが再現しやすくなった。
「いいですか? Bランクはベテランの冒険者でも手こずる相手。群れの場合は連携の取れたパーティで相手にするのが普通で……」
「そうだよなー。わかるわかる」
「わかってませんわねぇ!?」
何事も戦ってみなければわからない。
ヤバかったら逃げればいいだけだ。
「魔物の詳細は?」
「デーモンオークが四、五体程いるらしく……」
「ふぅん。デーモンオークか」
「デーモンオークって中々厄介な魔物ですわよ!? それが五体もいるなんて……」
なるほどね。
そいつが五体もいると……
「超余裕だな」
「「はい!?」」
ラッキーだ。
Bランクにしては簡単すぎる。
「メディ、遠征の準備だ。それと俺が言うブツも用意してくれ」
「か、かしこまりましたー……本当に行くんですか?」
「あぁもう、どうなっても知りませんわよ……」
レアはドン引きしているが、俺からすれば軽い事。
デーモンオークはゲームで大量に狩ってたし、効率のいい倒し方も知っている。
「レアはどうする?」
「……行くに決まってますわ。人手は多いに超したことありませんし」
「心配してくれてありがとうな」
「そ、そういうのでは……黙って逃げるなんてスカーレット家の恥ですもの」
レアも少しずつ心を開いてるか?
まぁいい。
デーモンオークとやらをさっさと倒して、スカーレット家に向かうとしよう。
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