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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
3章 モブキャラ、修行する

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第55話 モブキャラ、デストレーダーと再会する

「どう? 少しはセクハラも減るかしら?」

「俺が強くなれば好き放題できるってことだろ? 逆に燃えてきた」

「貴方の底知れない性欲は何なのよ……」


 雑談しながら寮へ戻る。

 マヤ先生に殴られた場所がまだズキズキする。

 魔力充填で治したはずなのになぁ。


「流石ダーリン♪ アタシには遠慮しなくていいからね」

「誰であろうと遠慮するつもりはない……ぞっ」

「きゃっ♪」


 反射的にサーシャのお尻を撫でる。

 むっちりした感触がクセになる。

 あれだけセクハラを嫌がってたのに、自ら求めるようになるとは。

 本当に人は変わるんだな。


「相変わらずご主人様は楽しそうですねぇ」

「最初は何もなかったのにな」

「ふふっ、今ではこんなに賑やかです♪」


 従者にすら嫌われていた頃が嘘のようだ。

 

 レアに好かれ、

 サーシャにも好かれ、

 取り巻きまでいる。

 

 理想のハーレム生活を満喫している。

 悪役ヒロインたちも順調に攻略できて、毎日が楽しい。


「私も好き放題できて幸せ……」


 メディが楽しそうに前に踏み出した瞬間、彼女の腹部に大剣が突き刺さった。


「あ……が……」

「メディ!!」


 慌てて駆け寄り、魔力充填をしながらゆっくり剣を抜く。

 攻撃はどこから来た!? 一瞬で飛んできたぞ!!


「この剣……」


 豪奢な装飾、公爵家の家紋。

 見覚えがある。

 確か昨日……


「素晴らしい力ですね。私の価値を証明するように次から次へと破壊していく……」


 抜いた大剣がまるで糸付きのように舞い、持ち主の元へ戻っていく。

 そこに立っていたのは……降格と敗北を味わった、あの姉の姿。


「お姉様……!!」

「堕ちる所まで堕ちましたわね……!!」


 校舎の上からあざ笑うように見下ろすアリーシャ。

 たった一日で別人のようだ。

 

 全身に紫の筋が走り、目は充血している。

 肌を刺すような、強い殺気が周囲を包んでいた。

 

「堕ちる? むしろ羽ばたいている最中ですよ。あの子が与えてくれた、宝石の力で!!」

「「っ!!」」


 胸の谷間から取り出したのは、禍々しい光を放つ魔装結晶。

 お前がそれに手を出すのか!?

 原作ではありえない展開の連続に、思わず息をのむ。


(……どっちが勝っても変わらないって、そういうことか)


 ジャババの言葉の意味が、ようやく腑に落ちた。

 俺は「サーシャが勝っても負けても、魔装結晶を使う」と予想していた。

 だが、あいつの狙いはサーシャだけじゃなかった。

 アリーシャも含まれていたんだ。


 あれだけ叩きのめされた上で、あんな危険な力を与えられたら……溺れるのも当然か。


「しっかりしろ、メディ。今、治してやるからな」

「す……みません……」

「気にすんな。また落ち着いたらコスプレでもしてくれたらいい」

「ふふ……かしこまりました……」


 冗談を交えながら傷を塞いでいく。

 けど深いな……完治までは少しかかりそうだし、魔力消費が多すぎる。


 っと、そうだ。

 俺も“あれ”を持ってたんだった。


「サーシャ、これ使っていいか?」

「へ? 別に構わないけど……」

「ありがと」

「えっ!? 何をしてるのさ!?」


 サーシャの制止を無視して、預かっていた魔装結晶を自分の身体に突き立てる。


 ……あー、来た来た。魔力が一気に回復する。

 やっぱり便利なアイテムだ。


「な、何ともないの……?」

「ゼクスはね。わたくしもびっくりしましたわ」


 そういや説明してなかったな。魔力充填の応用で副作用を無効化できるんだ。

 まぁ、これでメディも助かったし、ひとまず解決。


 ……と思ったら。


「あーっはっはっはっ!! いいねぇ!! その調子でどんどん暴れちゃおう!!」


 現実はそう甘くない。

 アリーシャの隣に、渦を巻くような影が出現する。

 そこから……あの小柄なフードの男が姿を現した。


「アイツは!! この前のデストレーダー!!」

「ジャババって呼んでくれよー。寂しいなー」


 アリーシャの肩に手を置き、全体を見回すようにして笑うジャババ。

 ……なるほど。全部、最初からあいつの仕込みってわけか。

 やっぱり、気に食わねぇな。


「氷結斬!!」

「おっとぉ! そっちのお嬢様は喧嘩っ早いねぇ」

「どんな手を使ったのかは知りません。が、死ぬ覚悟はできてますわね?」

「聞く耳なしかー。うんうん」


 レアが間合いを詰め、剣を振るう。

 刃は空を切っただけで、ジャババ達はひらりとかわしてゆっくり着地する。


「僕はただ渡しただけだよ? 弱虫みたいに泣いてたからさ。魔装結晶で救ってあげようと思って!」

「救う……?」

「どこが救済だ! ただ実験道具にしてるだけじゃないか!」


 ジャババは非難を聞き流し続ける。


「魔装結晶は自分の意思で使わないと意味がない。だから心が弱い人間を狙っているのさ」


 原作どおり、負の感情に反応して暴走を引き起こす魔装結晶。

 狙いは”心の弱さ”だという説明に納得はできるが。


「ま、それだけじゃ集まらないから、僕が刺す時もあるけどね」

「え……?」


 指を弾くと地面に二つの魔法陣が展開され……


「あ……あぁ……」

「うぅ……」


 なんと伯爵娘二人が現れる。

 自由奔放だった彼女たちが耐えがたい表情で頭を押さえている。


「他人が刺すと暴走しにくいんだよねー。胸とか触り放題なのはいいけどさ」

「いやっ……」


 ジャババは舌なめずりし、一人の胸元を鷲掴みにして欲望を満たす。


「アリーシャちゃん、その二人も殺さないでね? 拷問して精神ぶっ壊して、魔装結晶の実験に使いたいからさぁ……ふふふ」


 その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが切れた。


「ジャババ、お前は何のために力を与える?」

「はぁ? そんなの決まってるじゃん」


 普段より冷たく、鋭い声で問い詰める。

 珍しく怒りが露わになっていた。


「弱者が救われる強い力を。誰もが強くなれる、誰もが成り上がれる!! 魔装結晶は夢がいっぱい詰まっているんだ!! 利用しない手はないよねぇ!?」


 救済だと? そのために魔装結晶を無理やり使うのか?

 副作用のない自分なら使ってもいい。

 だが、関係ない人間を巻き込むのは話が違う。


「何が救いだ、バカバカしい」

「は?」

「お前のやってることは救済じゃない。本質も理解せず、ただ力を与えて遊ばせているだけ」


 感情のままにナイフを抜き、ジャババへ突きつける。


「所詮はガキのおままごとだ。大人しく死ね」


 悪役ヒロインの敵は俺の敵だ。

 邪魔をするなら容赦はしない。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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