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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
3章 モブキャラ、修行する

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第54話 モブキャラ、結果を知る

「ふふふ……ダーリン♪」

「……ベッタリしてるわねぇ。貴方って本当に罪な男よ」

「罪だって? 俺を好きになるのは、むしろ救いだろ?」


 やれやれと両腕を広げるレア。

 あれからサーシャは、俺からまったく離れようとしなかった。


 朝起きる時から寝る時まで。

 気づけば俺たちの寮に引っ越してきて、部屋まで整えてしまっていた。


 愛の行動力というのは、本当に恐ろしい。


「いいですよご主人様!! この調子でいろんな女の子を口説き回りましょう!!」

「メイドはもう少し止めることを覚えなさい!!」

「止めるより走らせた方がいいですって♪」


 その通りだ、メディ。

 俺は突っ走り続けて、多くの悪役ヒロインを虜にしたい。

 今さら、止まるつもりはない。


「アタシ、ダーリンと出会えて幸せだよ。死んでも一緒にいようね♡」

「だったら死後の世界でもイチャイチャしようか。天使どもが呆れるくらいにな」

「んん〜♪ 最っ高♡」


 情熱のままに頬へキスをしてくるサーシャからは、どこか狂気めいたオーラが漂っていた。

 ……なぜ、ここまで性格が変わったのだろうか。

 愛されるのは幸せだが、まだどこか違和感が残る。


「で? サーシャは呼ばれたんだろ?」

「大事なお話だってさ」

「ほーん?」


 大事な話? 派手に模擬戦をやった件か?

 見当がつかないまま、俺たちは職員室へとたどり着き、挨拶と共に中へ入った。


「おぉ、よく来……何でお主らもいるんじゃ」


 俺たち三人の顔を見て、マヤ先生が若干嫌そうな顔をする。


「愛するダーリンだからな」

「その変わり者の付き添いよ」

「私はメイドです!!」

「最後はいらんじゃろ!! もうよい……」


 可愛い生徒を邪魔者扱いとは、先生もひどいものだ。

 もっと喜んでもいいんだぞ?

 ……まあ約一名、生徒じゃないのは置いておこう。

 

「で? アタシに用ってのは……」

「なーに、簡単な話じゃよ」


 ペンを放り投げたマヤ先生は、雑に掴んだ一枚の紙をサーシャへ手渡した。


「サーシャ・クラウン。今日からお主はSクラスじゃ」

「へっ!?」


 紙とマヤ先生の顔を交互に見るサーシャ。

 俺も驚いた。実力があるとはいえ、いきなりのSクラス昇格だなんて。


「ア、アタシが……嘘……」

「昨日の模擬戦、中々の活躍だった。空飛ぶ盾とは面白い発想をしよる」

「マヤ先生、あれを見てたんですか?」

「暇つぶしにな。Sクラス生徒のイベントじゃし、何か起きると思っておったが……」


 もう一枚の紙を取り出したマヤ先生は、ふてくされた顔のままゴミ箱へ放り投げた。


「姉の方は期待はずれ。Bクラスに降格させて正解じゃった」

「「「えっ!?」」」


 俺を除いた三人が驚きの声をあげる。

 アリーシャがBクラス? マジか、姉はそういうルートを辿るのか。


「た、たった一度の試合でBクラスまで落ちるんですかぁ!?」

「Sクラスを舐めておるな? “圧倒的な力”と“貪欲な心”がない人間など、必要ないも同然よ」

「……Aクラスにすら留めて貰えませんのね。厳しい世界ですわ」


 確かに原作でもSクラス維持は難しかった。

 総合評価をSに保たないといけないし、A+になった時点で即降格。

 しかもSになった瞬間、問題や試練の難易度も急上昇するから、上級者でも維持するのは至難の業だ。


「アリーシャじゃったか? あやつは油断しすぎじゃ。有利のつく盾持ちにあそこまで苦戦するとは……情けない」


 確かにサーシャ相手に苦戦しすぎた。

 俺がメタの張り方や立ち回りを伝授したとはいえ、アリーシャは感情的に動く場面が多かった気がする。


 敢えてサーシャを苦しめるように剣を突き刺したり、

 飛び回るサーシャを迷わず追いかけたり――


 妹には負けないだろうという甘さも、降格に繋がったのだろう。


「……ちなみにもう降格は伝えておる」

「へぇ? どんな反応だった?」

「くく、かなり面白かったのう」


 いたずらっ子のような笑みを浮かべて、マヤ先生は語り出す。


「ガキみたいに喚きながら剣を抜いてな。あまりにも行儀が悪いから、この拳で一発ぶん殴ってやった」


 軽くシュッと拳を前に突き出しただけで、目の前のガラスにひびが入る。

 その異様すぎる光景に、全員が身を固めた。


「魔力も込めてないのにくたばりおって。意識を失ってでも立ち上がれば、Aクラス入りも考えたのに」

「……恐ろしいですわね」

「マヤ先生は容赦を知らんからな」


 原作だと絡んできたデストレーダーのメンバーをワンパンしてたし、

 酷い時は校舎をまるごと破壊してたような……

 拳一発で済んだアリーシャは、むしろラッキーだと思う。


「お主らも油断していると蹴落とされるぞ。覚悟しておけ」


 威圧を込めた視線と空気に、全員の背筋が伸びる。

 ふふっと俺たちの様子を面白そうに見守りながら、マヤ先生は綺麗な生足を組み替えた――


「……くまさん」

「へ?」

「くま?」


 スカートの奥に見えた、真ん中に刺繍された可愛らしい熊柄。

 なんとも子供っぽい下着を口にした瞬間、稲妻のような拳がすっ飛んできた。


 ドカァアアアアアアアアアン!!


「……ちっ。すばしっこい奴じゃの」


 周囲のテーブルが粉々に砕け散る。

 これで魔力を込めてないとは、バケモノみたいな強さだ。


「避け続けたらマヤ先生の下着が見放題なのか? 最高だなぁ」

「このド変態が!! 今すぐブチ殺してやるから覚悟せぇ!!」


 煽るように逃げると、鬼のような形相でマヤ先生が襲いかかってきた。


「……相変わらずね」

「ご主人様らしいですっ!!」

「ダーリンを殺す???」


 なんともカオスな状況になってきた。

 まあ、俺としては下着が見れたから満足なんだが。


「返事は?」

「……ごめんなさい」


 ちなみにしっかり捕まって、しっかりボコされた。

 骨も何本か折れたけど、魔力充填があるからすぐ元通り。

 ……正直、死ぬかと思ったけど。





「はっくしょん!!」

「どうしたメディ? 風邪でもひいたか?」

「なーんか朝から身体が重いんですよねぇ……」


面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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