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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
1章 モブキャラ、生まれ変わる

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第5話 モブキャラ、鉱山に入る

side:メディ


「ふんふんふふーん♪」


 採掘の準備中。

 私は人材の手配やご主人様の身の周りの整理をしていた。

 

 専属メイドというのは忙しい。

 主人があれやりたいこれやりたい、と言い出せばそのお手伝いをしないといけないから。


 最近まではご主人様から何か言われる事はなかったけど。 


(すっかり変わっちゃいましたよねー)


 臆病で優柔不断で自信がない。

 それがご主人様と最初に会った時の印象だ。

 話してて面白くないし、向上心もないから一緒にいると飽きちゃう。


 ゼクス様の専属メイドだって貧乏くじだ。

 誰もやりたがらない。

 私はすこーし仕事をしたら自由になれそうだから、専属メイドに手を挙げたけど。


 周りの子達は反対してたなー。

 バーザム家ってだけで周りは辛辣だし、専属メイドともなると経歴に泥が付くんじゃないかって言われた。


「レア様との初対面なんか酷かったですね……あはは」


 今でも覚えている。

 ご主人様とレア様が会った日の事を。


『この程度ですの? 勝とうともしない、逃げるだけで情けない人。それでも当主候補かしら?』

『痛いよぉ……俺に才能なんかないのにぃ……』


 模擬戦でボッコボコにされて、女性の前で惨めに泣く姿。

 あれは……酷いとしか言えませんね。

 強さで価値が決まると言われる貴族社会であそこまで無様になれるとは。


 レア様がご主人様を選んだ理由は謎だけど、せっかく掴んだ契約結婚なのだから堂々としてほしい。

 負けることが悪いんじゃない。何かしようとやる気を見せて欲しかった。


 あの模擬戦がキッカケで、従者達も完全にご主人様を見下すようになりましたし……

 

「最近のゼクス様は凄いねー」

「あれこれ指示するしマジで別人になった感じ」

「何があったんだろう……頭でも打ったのかな?」


 けど、レア様に勝利してからは状況が変わった。

 今まで蔑んでいたご主人様を今度は尊敬する従者が増え始めている。


 やればできるじゃん、と見直す風潮。

 だから採掘に関する準備を手伝ってくれる人も確保できた。


 一つの行動でここまで手のひらを返せるとは。

 人間というのは単純ですよねー。

 

「お、作り置きのおかずを発見♪」


 一仕事終えた時。

 キッチンを覗くと、出来立てのパイが置いてあった。

 湯気が出ていて美味しそう。


「こっそりいただいちゃいましょうかね~♪」


 魔法を発動して中に入る。

 ”気配遮断”と”擬態”

 気配を消して、周りの物に身体の色を擬態させる。


 こうすれば私を見つける事はほぼ不可能。

 つまみ食いだってあっさりできてしまう。


「んむんむ……前はこうして遊ぶ暇も多かったのに。変わりましたねー」


 たまたま求人を見つけて、面接を受けたら受かった。

 お金と少しの自由があればそれでいい。


 私の魔法は暗殺者に向いてるとか言われたけど、あんまり惹かれない。

 不法侵入は面白いけど、仕事にするのは違う。

 遊び半分でやるから面白いんだ。


「あ」


 ご主人様の部屋。

 普段はここで仕事をしたり寝ている。

 

 少しだけ扉が空いてますね?

 ちょうどいい。不法侵入してご主人様を観察しよう。


(くふふ、寝ていますね)


 魔法を発動して中に侵入。

 ご主人様はベッドで寝ていた。

 多分、仕事が一区切りついたから仮眠を取っているのだと思う。


(……本当に変わりましたね) 


 ”変わりたい”

 そうご主人様が言った時、私は驚いた。

 今まで何もしなかったのに、何かを決意したかのように前を向こうとしていた。


 まるで別人になったみたい。

 俺は生まれ変わった、と時々言うけどその通り。今のご主人様は昔のご主人様とは違う。


 けど、いい意味で変わりました。


(今は眠って可愛らしい……けど何かをしている時は鋭い目付きを……そのギャップが素敵♡)


 貴族社会で強気な男性が好かれるのは本当。

 ドSな雰囲気は私の好みが入ってるけど。


(おやすみなさい……ふふっ♪)


 これからも支えていこう。

 今のご主人様が大好きだから♪


 ◇◇◇


 side:ゼクス


「もう少しで鉱石なんだけどなぁ……」


 頭の中にある地図を頼りに鉱山の中を掘り進める。

 人員が不足しているので俺もシャベルを握ってる。

 魔力充填のおかげで割と楽に掘れてるが。


「ほ、本当にこの中にあるんですかー?」

「絶対にある。何週もプレイ……じゃなくて生まれ変わった俺の記憶に狂いはない」

「ははぁ。凄い自信ですねー」


 何回も最初からやり直して何回も周回した場所なんだ。

 絶対にこの奥に鉱石がある。長年のプレイによる自信だ。


「なんで俺達がボロ鉱山に……」

「じゃんけんで負けたから仕方ないだろ……だるー」


 ただ、連れてこられた作業員はどこかやる気がない。


「そう気を落とすな。鉱石が見つかったら何個かやるぞ」

「たらればの話だろー」

「そうそう。こんなボロ鉱山、魔物すらいないし」


 ゼクスくんはよほど信頼されてないらしい。

 前が情けなさすぎたか。新しい俺が名誉挽回できるよう頑張らねば。


「ってうわぁ!?」

「で、でっかいスライムさんがいますよぉ!?」


 鉱石を探して掘り進めていた時。

 岩陰から巨大なスライムが出現した。


「キングスライムか。敵が来ないから上位種まで進化しちゃったんだなぁ」

「そんな事言ってる場合ですか!?」

「こ、こっちに来るぞー!!」

「いやだあああああああ!! 殺されたくないー!!」


 原作だと珍しいモンスターなんだよなー。

 スライムって基本的に弱いし、他の魔物にも負けるから成長もしにくい。

 どこから紛れたか知らんが、こいつにとっては最高の環境だったわけだ。


「よっと」

「「「へ?」」」


 ま、倒すんだけどね。

 素早くキングスライムに接近し、中心の核を一突きする。


「スライム系統は核を突けば簡単に……ってどうした?」

「いや……まさか魔物をあっさり倒すとは」

「ゼクス様ってこんなに強かったんだ……」

「すげー……」


 確かにキングスライムは魔法無効の厄介な魔物だけど。

 対策はしやすいからお前らでも勝てると思うぞ?


「冒険者にとってキングスライムは不幸の象徴とも言われてるんです。魔法が効かないバケモノなので」

「不幸の象徴? あー、確かに対策しないと詰むか……」


 この世界は魔物に対する局所的な攻略方法が広がってないみたいだ。

 ネットがないからか? 情報を得る手段が限られてるのかも。


「スライムの素材は魔道具の材料になるから回収して……ん?」


 再び掘り進めようとした時、目の前の亀裂から光が漏れ出ていた。


「マナ鉱石じゃね?」

「えっ!?」


 この輝く緑色は間違ない。

 急いで掘り進めると、その先に広がっていた空間に大量のマナ鉱石が生えていた。

 遂に見つけたぞ!! やったー!!


「ほ、本当にあったんですね!! どれも綺麗で大きい!!」

「いっぱいあるとは思ったが予想以上に多いな」

「レア様も喜びますよ!! もしかしたら喜びすぎて気絶するかもしれませんが!!」

「はっはっはっ!! 泡でも吹いたら面白いな!!」


 ぶくぶくぶくーって倒れる姿を想像しただけで面白い。

 いつか見たいな。


「「領主様……」」

「なんだ?」


 と、やる気のない作業員二人が俺を呼ぶ。


「「疑ってすみませんでした!! 恩返しも込めて全力で掘らせていただきます!!」」


 少しの行動でここまで手のひらを返せるとは。

 人間というのは単純だねぇ。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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