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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
3章 モブキャラ、修行する

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第48話 モブキャラ、挑発する

「それでスライムの様子は?」

「元気そうだぞ。広いだけの空間をぴょんぴょん楽しんでる」


 日当たりのいいテラスでレアは優雅に紅茶を飲んでいる。

 早くスライムを見せなさいとでも言わんばかりに、俺の指輪をちらちら見ながら。


 そんなに気に入ったか。

 なら、お望み通り見せてやろう。


 指輪に魔力を込めて展開したポータルをレアの方へと寄せた。 


「あら、可愛らし……多すぎでは?」

「ゴミを食べるだけで勝手に増えるからなぁ。一応、無くなる事はないとはいえ」


 一面スライムだらけ。わらわら湧いてる。

 これだけいると、蚕の養殖みたいにすぐにエサが無くなりそう……と思うが、意外と何とかなっている。

 与えられたゴミを敢えて残したり、最低限食べては寝たりとエネルギーを抑えるように動いたり。


 また、スライム達にも群れのような意識が生まれた。

 リーダー格のスライムが全体を仕切り、土を掘っては建物を作る。


 アリの観察キットを見てるみたいだ。


「サモン」


 と、ここで現実世界に一体のスライムを召喚する。

 魔法陣の中から現れたのは……


「……王冠?」 

「こいつだけ妙に賢くてな。赤いからレッドって呼んでる」

「ふーん……賢いスライムねぇ」


 周りより一回り大きく、色も赤いスライム。

 何故か魔力や知性が他の個体よりも優秀だったため、頭に王冠をのせてわかりやすくした。


 王冠を気に入ったのかたまに頭を俺の方へ向けて、撫でてとアピールしてきたり。

 可愛い。


「例えばボールを投げると……」

「あら、お見事ですわね」


 宙を舞ったボールを認識した瞬間、レッドは身体を伸縮させ、勢いよく飛び上がった。

 そして身体を広げて、優しく受け止めるようにキャッチする。


「魔力充填で育ててるからパワーもあるぞ」

「……どういう事かしら」

「定期的に魔力充填を身体に流し込んで、成長しやすくしたんだ」


 魔力充填は契約モンスターの育成にも使える。

 身体能力向上がメインだからな。

 俺が近くの木を指差すと、レッドは何度か跳ねながらしなりをつけ……


 ビュンッ!!


「へっ!? こ、これがスライムなの!?」

「凄いだろ? 俺もびっくりした」


 ドォオオオオオオン!!

 と、木に向かって高速で体当たりし、幹を真っ二つに折った。


「他のやつらもここまでとはいかない。が、魔力充填をかけて突進するだけでかなり厄介だと思う」

「これが束になって? 敵に回したくありませんわね……」


 紅茶を持つ手が若干震えている。

 気持ちはわかるぞ。俺だって魔力充填したスライム達がすっ飛んできたら流石に死を覚悟する。


 というか最強では?

 原作では十体という契約上限があったけど、今のところそれ以上に契約できてるし。


 ガトリング砲みたく襲い掛かるスライム軍団……

 俺は恐ろしい戦術を編み出したのかもしれない。 


「貴方はどこまでいくつもりなのかしら?」

「どこまでもだ。レアとサーシャがいてくれるからな」

「ふふ、褒め言葉としては悪くないですわね♪」


 まぁイレギュラーばかり起きる現状を考えれば、ぶっ壊れコンボの一つや二つ、あっても問題ないと思う。

 この世界の実力者は魔力充填のスピードにも反応できてるから、何だかんだ対策されそう。


「……また妙なことをしていますね」

「お?」


 スライムで盛り上がっていた俺達の元に、やや顔をしかめたアリーシャが近寄ってくる。


「何の用だ? サーシャはもう止まらないぞ」

「もう止めても無駄だとわかっています。あの子には来たるべき場で叩きのめすのが一番です」


 ふふん、と口角をあげた後、アリーシャが懐から取りだしたのは……


「勝負の日。学園の講堂を貸し切って上級クラスによる模擬戦を開催します。今回はどのクラスでも見学できるようにしてみました」

「まるで祭りみたいだな」

「クラウン家の威厳も見せつけたいのでね」


 手渡されたのは一枚のチラシ。

 紙には運動会を思わせるいくつもの項目が記載されていた。 

 

 メインは模擬戦、。サブイベントで輪投げや的当てといったミニゲーム。

 飲食店も出すのか? 随分と大がかりだな……


「そして大トリは……」

「アリーシャとサーシャの決闘か」

「えぇ。ただの内輪喧嘩を派手に盛り上げようと思いまして」


 派手に盛り上げるというか、大衆に晒したいだけでは? 

 サーシャを徹底的にへし折りたいという悪意が見え透けている。


 レアも呆れたように深いため息を吐いてるし……


「ん?」


 晒したい? へし折りたい?

 ちょっと待て。


「サーシャは頑張ってるぞ?」

「はい?」


 確認の為にもう一度アリーシャに問う。

 なんて事ない返事。サーシャに対する対応が当たり前だと言い切っているかのよう。


 だが、彼女は気づいていない。


「頑張っている妹をアリーシャは蹴落とそうとするのか? お得意の努力理論はどこいった?」

「あぁ、確かにおかしいですわね」

「……っ」


 矛盾を指摘すると、余裕そうな態度から一転して気まずそうな反応をする。

 手に持っていたチラシも握りつぶして後ろに隠し、少しばかり考え込む。


「……あれは努力ではありませんよ。ただ足掻いているだけです」

「足掻く? あれだけ努力努力と言っていたのに、サーシャの頑張りを否定するのかしら?」

「そもそも努力ではないと言っているだけです。否定とは違います」


 見苦しいな。

 視線が真っ直ぐ向いてないし、早口。

 呼吸も乱れている。かなり動揺しているらしい。

 

「アリーシャ、お前は恐れているだけだ」

「恐れている?」


 ならば追撃してやろう。

 散々サーシャをいたぶった分も含めて。


「今までの自分を否定されたくないんだろ? 成長したサーシャに」

「っ……!!」


 最も指摘されたくない事実。

 アリーシャは顔を俯かせて完全に黙り込んでしまう。


「あれだけ努力の価値をアピールしてた癖に、身内の努力に恐れていましたの?」

「勝手に決め付けないでください……!!」

「ふふっ、その視線はどこに向いているのかしら?」


 レアにもからかわれ、アリーシャ・クラウンとしての堂々たる仮面が完全に剥がれ落ちてしまう。


「まだ勝敗が決まったわけではありません!! 私が勝って、クラウン家として相応しい姿を披露します!!」


 そこにあったのは自信ではなくただの強がり。

 負け惜しみのようなセリフを吐いた後、アリーシャは颯爽とこの場を去っていく。


「……あの子は弱いままでいいのに」

 

 サラッと本音を口にしながら。


「意外と陰湿なのね」

「貴族らしくていいじゃないか。何があろうとサーシャが勝てば全部終わる」


 もしアリーシャが負けたら、彼女はどんな反応をするだろう?

 原作ではありえないルートってだけでも、その日が待ち遠しくて仕方ない。

 

 そしてアリーシャに勝利することで、サーシャの心も救われる。

 

 これはただの勝負じゃない。

 お互いの面子をかけた本気の戦いだ。


面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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