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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
3章 モブキャラ、修行する

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第46話 モブキャラ、契約する

「で? レアはなんでここにいたんだ?」

「デストレーダーについて調べてましたの。そうしたらDクラスで妙な生徒がいるって噂を聞いて」

「妙な生徒……今、死体になってるこいつか?」


 ミンチのように潰れた肉片の中から、濡れた学園証が見つかる。

 やはり、犯人はこいつだ。


「何か事情を抱えていて、デストレーダーに狙われたのかしら」

「物騒な話だねぇ。アタシもこうなってたかもって思うと……」


 恐らく甘言にそそのかされ、魔装結晶に手を出したのだろう。

 最底辺Dクラス。脱出すら困難な地獄から抜け出そうとした結果が、これだ。


 ガラッ……ガララ……


(なんだ?)


 騒ぎが収まるや否や、瓦礫の隙間や校舎の影から生徒達がぞろぞろと現れる。

 だが、感謝の声などない。

 どいつも目が死んでおり、無表情のままじりじりと近づいてくる。


 サーシャの前に、パーカー姿の生徒が立つ。ポケットには武器の気配。


「ひっ!」

「観客のままでいれば危害は加えない。物乞いなんて考えない方がいいぞ」


 敵意を感じ取った瞬間、俺はブーメランナイフを投げつけた。

 ズドン、と木に深く突き刺さり、生徒は腰を抜かしてへなへなと座り込む。


「ここは本当に嫌ですわね。ウチのスラムより酷いですわ」

「金もない連中が多いからな。入学費も授業料もタダ、その結果がこれだ」


 威嚇が効いたのか、生徒達は舌打ちして散っていった。

 油断ならない。

 普段の学園生活が、どれほど恵まれているか思い知らされる。


「さて、従魔契約を済ませるか」

「もう? ゆっくり選んでもいいんじゃなくて?」

「従魔の指輪は契約で所有者が決まる。今のままじゃ、狙ってくださいって言ってるようなもんだ」

「へぇ……大変ね」


 市場にすら出回らない従魔の指輪。欲しがる奴は大勢いる。

 魔力の消費は召喚時だけ。奪われるくらいなら、とりあえず適当なモンスターと契約しておくべきだ。


 それにしても、死んだあいつはなぜ契約していなかったのか。

 魔力が弱すぎたのか?


「アタシは休むよ……色々疲れた」

「そうだな……レア、明日付き合ってくれるか?」

「構いませんわよ」


 明日中には決めてしまおう。

 指輪を弾きながら、俺は契約するモンスターについて思案する。


 まるでセレクトチケットでSSRを選ぶ時みたいだ。

 制限があるのは不満だが、選択肢が限られているからこそ面白い。


 ◇◇◇


「レアとデートに行くのも久しぶりだな」

「でも場所がダンジョンって、ずいぶん物騒ですわね」

「夜になったら、ちゃんと落ち着ける所へ連れてくからさ」


 煌びやかな城下町……ではなく、ジメッと暗いダンジョンの上層。

 休みで助かった。今日は一日、従魔契約に集中できる。


「ふわぁ……」


 寝ている間も契約のことばかり考えてしまい、ついあくびが出る。

 遠足前の子供みたいな様子に、レアも思わず笑みをこぼした。


「それで? どんなモンスターを仲間にするつもりですの?」

「んー……強いのもいいんだが……」

「なら中層以降ですわね。わたくしがいるのだから心配いりませんわよ?」


 確かに中層以降のモンスターは強力で、学園生活でも十分役に立つ。

 だが、


「今日は上層、一階層にする」

「えっ?」


 レアが拍子抜けした顔を見せる。


「い、一階層? 大したモンスターはいませんわよ?」

「ゴブリン、ウィルオウィスプ、コボルト、スライム……その辺だな」

「初級冒険者の引率みたいですわね……」


 一階層は初心者用に設計されている。

 原作でも、ダンジョンや戦闘の基礎を学ぶ場として描かれていた。


「グギャー!!」

「お前じゃない」

「グギャッ!?」


 岩陰から飛び出したゴブリンの奇襲は、あくびが出そうなほど遅い。

 ナイフ一振りで、あっさり片付ける。


「何を探しているんですの?」

「まぁ見てな……お、いた」


 普通なら序盤で素通りされる存在。だが契約が絡むと話は別だ。

 足を進めると、地面の穴からぷるんと丸いモンスターが飛び出した。


「……スライム?」

「そう、スライムだ」


 狭い通路をぴょんぴょん跳ねる姿は、モンスターというよりペットのようで可愛らしい。


「従魔の指輪に魔力を込めて……敵意を失ったモンスターに近づけば……」


 そもそも敵意なんてなさそうだが。原作通りの手順で契約を行う。

 指輪から伸びた淡い光がスライムに繋がり、魔法陣が浮かび上がって輝いた。


「……よし、行けた」


 光が消えると同時に、スライムが元気よくこちらに飛びついてきた。


「あら、可愛い」

「ここまで人懐っこいとはな」


 足元に身体をすりすりとこすりつける。

 撫でるとさらに押しつけてきて、柔らかい体がむにゅっと縦に伸びた。


 レアも手を伸ばすが、スライムは抵抗することなく受け入れる。

 どうやら誰でもいいらしい。


「スライムを従魔に? 体当たりしかできない赤ん坊ですわよ?」

「赤ん坊でもスライムはスライムだ。数を増やせば化ける」

「……増やす?」


 スライムの本質は、圧倒的な生産力とコスパにある。

 規格外だらけのこの世界で、この戦略がどう転ぶか。


 くくく、楽しみだ。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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