表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
3章 モブキャラ、修行する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/100

第45話 モブキャラ、謎のバケモノに遭遇する

「レアはどこにいる?」

「第七校舎です! 主にDクラスが使っています!」

「あそこか……ありがとう」


 メディが東を指差す。

 やけにボロい校舎が並んでいるが……なぜレアがそこに?

 まぁいい、早く助けに行かないと。


「サーシャ、しっかり捕まれ」

「へ? い、一体なにを……」

「加速!!」

「きゃあああああああああ!?」


 返事も聞かずにサーシャを抱え上げ、目的地へ一気に加速する。

 魔力充填による超速ダッシュ。

 入学式当日にレアを助けたときと同じ手だ。


「速いだけだ、安心しろ!」

「安心できるかぁ!!」


 サーシャはスカートを押さえながら、必死に俺へしがみつく。

 まったく、可愛いやつめ。元気があるのはいいことだ。

 未知のバケモノ相手でも安心して戦えそうだ……なんて考えていたら、目的地が見えてきた。


「よし、着いた」

「ゲホッ、ゲホッ……死んだかと思ったよ……」

「生きてるから安心しな」


 どこぞのB級映画みたいなやり取りを交わしながら、サーシャをゆっくり降ろす。


「このっ!」

「あいてっ」


 同時に膝を軽く蹴られた。相当不満だったのか、ガルルル……と狼のように威嚇してくる。

 その反抗心すら愛おしく思えるのは、彼女が可愛いからだろうか。


「しかし荒んでるなぁ……ここ、本当にグランヴァルの敷地内か?」

「D〜Cクラスは最底辺だからね。クラスとは名ばかりで、スラムみたいなものさ」

「ほーん」


 草は伸び放題、ゴミはそこら中に散乱。

 空気も埃っぽく、何かの病気でも流行っていそうだ。


 そういえば、原作でもこの辺りは同じように荒んでいた。

 才能もなく、努力もできない者が辿り着く場所。

 ここからBクラスに這い上がるだけでも奇跡と称えられるらしい。


 ……こんな環境じゃ、ふてくされるのも無理はないか。


「氷結槍!!」

「オオオオオオオオ!!」

「っ……やっぱり無駄ですのね」


 奥の校舎が氷の槍で粉々に砕け散った。

 瓦礫の向こうから、謎のバケモノと対峙する愛しき氷姫が姿を現す。


「よっとぉ!! 手助けに来たぜ、ハニー」

「他のお姫様と仲良くお茶しててもよかったのよ? でも、ありがと♪」


 一気に距離を詰め、思いきり蹴り飛ばす。

 レアは……無事のようだ。

 外傷もなく、相変わらず肌艶もいい。


 未知のバケモノ相手に、体力も魔力も維持できているのはさすがだ。


「オオオオオオオッ!! ツブス、ツブスウウウウウウ!!」

「てかこいつ何だ? 魔装結晶にしちゃ暴走しすぎだろ」


 十数メートルはあろう巨体。

 全身を紫色の筋肉に覆われ、両肩からは太く禍々しい鉱石が突き出ている。

 そして破壊衝動しか頭になさそうな、真っ赤に染まった目。


 異様な雰囲気と魔力から魔装結晶によるものだと分かったが……ザクネスとは何かが違う。


「ザクネスの時とはスケールもパワーも桁違いですわ。おまけに、何度斬り落としても再生して」

「再生?」


 また厄介な能力を。

 量産型とは違うタイプの魔装結晶か?


 どれ、試しに……

 俺はブーメランナイフを取り出し、軽く魔力を込めてバケモノへ勢いよく投げ放つ。


「ウオオオオオオオオオッ!!」

「随分面白い武器ですわね? どこで手に入れましたの?」

「愛のこもったお手製さ。そこにいる可愛いお姫様からな」

「ど、どうも……」


 ナイフはバケモノの腹部を真っ二つに裂いた。

 血をまき散らし、悲痛な咆哮をあげて暴れ回る。


 その横で、サーシャがひょこっと俺の背から顔を覗かせる。

 レアもチラッと見ただけで、特に何も言わず再びバケモノに視線を戻した。


「は? もう再生するのか……」


 腹部から大量に生えたミミズのような触手。

 それらが絡み合って傷口を塞ぎ、あっという間に元の姿に戻っていく。


「でしょう? だからわたくしも手を焼いていましたの」


 なるほどな。

 いくらダメージを与えてもキリがない。

 攻撃を喰らわせるにしても考えて使わないと、こっちが先に力尽きる。


「再生するってことは、魔力を貯めるコアがあるはず……」

「「それだ!」」

「へっ?」


 目を丸くするサーシャ。

 一連の流れでもう弱点を看破するとは……さすが武器に精通しているだけある。


「意外とやりますわね。ゼクスが導いたと言うべきかしら?」

「サーシャの魅力に気づいてくれて嬉しいよ。可愛いだけじゃないだろ?」

「な、なんだいもう! 恥ずかしいじゃないか……」


 ぷくーっと頬を膨らませ、視線を逸らすサーシャ。


「魔力充填の時間が欲しい。二人とも援護できるか?」

「大丈夫ですわ!!」

「はぁ……やるしかないってことだね……!!」


 レアはやる気満々で剣を突き出し、サーシャは耳を赤くしながら渋々盾を展開。

 俺は二人の背後へ回り込み、二本のナイフに魔力を込め始めた。


「グォオオオオオオ!!」

「シールドビット展開! デカブツの攻撃を受け止めな!」


 巨大な拳が迫る。

 だがサーシャの盾がすぐさま編成され、その拳を正面から受け止め数秒間静止させる。


 パキン!!


「次はわたくしの番ですわ」

「オ、オオオオオオ……!!」


 同時にバケモノの足元を巨大な氷が覆った。

 足を取られ、腕を振り回しても届かない。

 完全に封じた……そう思った矢先、


「コロス、コロスコロスコロスゥウウウ!!」

「はぁ!?」

「まだそこまで力が……!!」


 まさかの力技で氷を砕き、そのまま抜け出した。

 勢いのままに跳躍し、上空で両腕を掲げる。


「大人しく……!!」

「寝てろぉおおおおお!!」

「グォオオオオオ!!」


 レアの巨大な氷と、サーシャのシールドビット。

 二つの攻撃が同時に放たれ、バケモノの顔面に直撃。

 百キロ以上はありそうな巨体が宙へと吹き飛んだ。


(いいコンビネーションだ)


 相性の良さに思わず笑みがこぼれる。


「「ゼクス!!」」

「任せろ」


 二人の声に応じ、一瞬でバケモノへ接近。


「多段連斬!」


 先ほど投げたブーメランナイフに意志を宿す。

 俺の意識通りに軌道を描き、バケモノの体を細切れに切り裂いていく。

 役目を終えたナイフは、ブーメランらしく素直に手元へ戻ってきた。


「あ、あんなに細かく……!?」

「でも、このままじゃ再生が……」

「問題ない」


 バケモノの中心で、真っ赤に輝く光。

 俺はその輝きを見逃さなかった。


「ふんっ!」

「ぐっ……アアアアアアアアアア!」


 ガントレットナイフを突き立てた瞬間、ガラスが砕けるような音とともに、丸い鉱石が姿を現す。


「……あの世で休んでな」

「がっ……」


 鉱石を掴み、魔力を注ぎ込む。粉々に砕けると同時に、巨体はピクリとも動かなくなり、重力に従うように崩れ落ちた。


「本当に無茶苦茶ね……でも、あなたらしいですわ」

「惚れ直したか?」

「とっくに惚れてますわよ」


 帰還した俺の頬に、レアが軽くキスを落とす。

 その様子を見たサーシャは、両手で口を塞ぎ、「何をしてるの!?」とでも言いたげに目を丸くしていた。


 カンッ……カラン……


「ん?」


 バケモノの死骸から、何かが転がり出る。

 拾い上げてみると、それは血に染まった指輪だった。俺はハンカチで丁寧に拭き取る。


 複雑な紋章と、黄金虫を思わせる鮮やかな輝き。

 まさか、これは……


「おお……いい物を拾ったな」

「従魔の指輪じゃないか!? 滅多に出回らない超レア品だよ!」

「へぇ、これが……」


 レアは平然と受け止めていたが、サーシャは目をかっ開いて興奮している。

 さすが武器職人、この手の道具には詳しいらしい。


 従魔の指輪……指定したモンスターを従わせられる特別なアイテム。

 魔力さえ続けば何体でも使役できる。そういえば、原作でもどのモンスターを選ぶかで散々悩んだっけ。


(なんでこんなアーティファクトが……まあ、いいか)


 戦利品として貰っておこう。

 苦労して倒したんだ。これくらいは許されるはず。


 さて、誰を従わせるか……悩むな。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ