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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
3章 モブキャラ、修行する

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第42話 モブキャラ、新しい武器を手に入れる

「なぁサーシャ。時間がある時に俺の武器を……」

「いいよ」

「ん?」


 話の途中だったのに即答された。


「いいのか? 結構手間かかるぞ」

「修行とか悩みとか聞いてくれたし、そろそろアタシも恩返しする番だと思ってね。作れるかはまた別だけど……」


 マジか。しばらく安物ナイフで我慢だと覚悟してたのに。

 あまりに話がトントン拍子で進んで、思わず「何か取り憑いてないか?」と疑ってしまう。


(中盤でしか入手できないサーシャの武器を? しかもオーダーメイドで?)


 原作では武器の種類は限られていた。

 あんな武器、こんな武器、

 サーシャが作ったらどうなるだろうと想像していた。


 なのに途中で彼女が退場し、性能も中盤レベルで止まってしまう。

 あの時点では十分優秀だったのに。


「……ははっ」


 妄想が、今まさに現実になろうとしている。

 大観衆のステージに立ったかのように、心臓が高鳴った。


「サーシャ!!」

「へっ!? は、はいっ!」


 興奮のまま、彼女の手をガシッと掴む。


「是非作ってくれ。サーシャの武器を俺は使いたい」

「わ、わかったから……顔近いってば……」


 憧れの武器にテンションが上がる俺と、茹でダコみたいに顔を真っ赤にするサーシャ。

 迫られるのが好きなくせに恥ずかしがり屋だ。

 ゴーストナイトに襲われた時の悲鳴もそうだが、ふとした時に出る乙女な部分こそサーシャの本質かもしれない。


「で? どんな武器が欲しいんだい?」

「えーと……ブーメランになるナイフ」

「……はい?」


 欲しい武器を告げた瞬間、サーシャの熱は一気に冷めた。


「折りたたみ式で伸ばせばナイフ。曲げればブーメランとして使える。屍の霊魂があれば、使用者の魔力操作で軌道を自由に曲げられる……」


 結論から言うと、今のサーシャには作れない。

 俺が口にした“ブーメランナイフ”は、終盤でしか手に入らない武器だからだ。


 必要素材を集め、ギデオン工務店の特別サブクエストをクリアして……ようやく完成する代物。

 つまり技術的にもフラグ的にも、現時点での入手は不可能と言い切れる。


 屍の霊魂だって、手に入ればラッキー程度の素材。

 本来はそれナシで発注するつもりだった。

 

「……はぁ」


 そんな無茶振りを前にサーシャは……


「その程度でいいのかい?」

「えっ」


 まるで大したことないように即答した。


「ど、どれくらいかかりそうだ?」

「作ったことないから正確には言えないけど……調整込みで明後日にはいけるんじゃないかい?」

「明後日!? 二日で!?」

「きゃあっ!?」


 オタクじみた声を上げてしまった。

 早い。早すぎる。作れること自体驚きだが、制作期間の短さにもビビる。


(ってことは、他の武器も……?)


 脳裏によぎる、終盤に登場する最強クラスの武器たち。

 まさか素材さえあれば何でも作れるのか?

 今の俺でも、ダンジョンに潜れば素材くらいはいくらでも確保できる。


 バランスブレイカーなんて言葉じゃ足りない。

 サーシャは、俺の想定を軽々と超えていた。


「珍しく驚いて、どうしたんだい?」

「……すまん。欲しいものを前に浮かれすぎてた」

「アンタにも子供みたいな一面があるんだねぇ。ふふっ♪」


 確かにはしゃぎすぎた。

 武器はまだ完成してないんだ。深呼吸して落ち着け、俺。


「じゃ、早速作ってもらっていいか?」

「はーいよっ♪」


 サーシャは腰に手を回し、あざとく笑った。

 まるで憑き物が落ちたみたいに自然な笑顔で、その瞳には強い意志が宿っている。


 俺の知らない顔を見せてくれるなら……それでいい。

 サーシャの救済は、俺にとって武器よりも優先だ。


(……でも二日ってのはやっぱ気になるな)


 些細な動きも可能にするシールドビットを作ったのもサーシャだ。雑な仕事をするとは思えない。

 理想にどこまで近づくか……気になる。


 ◇◇◇


「できたよ」

「……」


 二日後……ではなく、“翌日”。

 サーシャの研究所を訪れた俺の前にあったのは。


 刃の付いたブーメラン。

 原作で見たあの”ブーメランナイフ”そのものだった。


「二日かかる想定じゃなかったのか?」

「思ってた以上に簡略化できてね。可変機構も魔法制御も、シールドビットの応用で作りやすかったんだよ」


 疲れてる様子はない。

 軽いあくびをしながらジュースを飲み、余裕そうにビットをいじっている。


 シールドビットは本来かなり複雑だ。

 メインシールドとビットに分かれて動き、一つ一つがサーシャの魔力に反応する特殊設計。

 ……その応用で終盤武器をあっさり作れるものなのか?


「あ、テストはもう終わってるから。好きに使ってみな」

「おお……」


 恐る恐るブーメランナイフに触れる。


 塗装はシンプルな黒。

 外側は鋭いナイフ状で、紙を軽くなぞるだけでスパッと切れる。

 内側には大きめの穴があり、グリップ加工もされていて握りやすい。


 そして肝心の可変機構。

 中心部がギギッと折れ曲がり、少し力を加えるだけでナイフがブーメランに変形する。

 折り曲げを繰り返すのが妙に楽しい。まるでDX玩具みたいだ。


(……試すか)


 胸の高鳴りを抑えきれず、グラウンドへ。

 ちょうど的になりそうな太い木が目の前にある。


 ブーメランモードにして、腰まで腕を引き、

 しなりをつけて勢いよく……


「えっ」


 ブォンッ!!


 ブーメランナイフは直線軌道を保ったまま、一気に加速。

 木にぶつかった瞬間、豆腐のようにスパッと両断した。


 だが速度は落ちない。


「うわぁっ!?」

「な、なんだぁ!?」


 ズバァン!!


 そのまま校舎の壁に突き刺さった。

 周囲の生徒は謎の飛行物体に腰を抜かし、呆然と見守るばかり。


 確かに魔力充填はしたが、この切れ味と飛行速度は……


「サーシャ……お前、やっぱ天才だわ」


 これで自信を持てない方がおかしい。

 姉の影に潰されるなんてくだらない。


 俺はそう思いながら、ブーメランナイフの回収に向かった。


面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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