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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
3章 モブキャラ、修行する

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第41話 モブキャラ、上級モンスターと戦う

「来るよ!!」


 ズァアアアアアアアン!!

 ゴーストナイトが大剣を地面に擦らせながら勢いよく振り上げる。

 瞬間、三本の炎が地を這い、俺たちへ一気に迫った。


「ふん、見た目が派手なだけで……」

「次が本命だ!!」

「えっ?」


 騎士は剣を上空に高々と突き上げ、馬も呼応するようにヒヒーン!!と嘶き、地響きを立てて踏み込む。


「またそれかい!? ちぃいいいい!!」


 グンッ!! 俺たちへ一直線に突進してきた。

 サーシャはメインシールドとビットを展開して受け止めようとしたが、


「きゃあああああああ!?」


 乙女じみた悲鳴と共に、サーシャの身体は宙へと打ち上げられた。


「よっと」

「ふぇっ!? す、すまないね……」


 空中を舞うサーシャに飛び込み、膝と肩を支える。

 お姫様抱っこのように抱え、そのまま地面に着地した。


(とりあえず距離を取る……)


 近くの岩陰へ身を隠す。

 ゴーストナイトは一瞬で詰めてくる。逃げは不可能。

 なら倒すしかない。問題はその手順だ。


 原作通りなら、まずは馬を潰して機動力を奪い、それから騎士本体に挑むのがセオリー。


「そろそろ降ろして欲しいんだけど……?」

「あと五分だけ」

「有料でもいいんだよ? アタシ高いんだからね?」

「レアも同じこと言ってたな」


 財布はロッカーの中だ。

 残念、今は払えない。


「サーシャ、ビットで馬を転ばせられるか?」

「……やってやるよ」


 俺に降ろされ、耳を赤くしたままサーシャはビットを展開した。


「こっちに来な!」


 三つのビットを正面に出し、ゴーストナイトの注意を引く。

 旋回する光に馬は興奮し、動きが激しくなる。


「今だ!」


 ビットを一方向に移動させ、釣られた馬が前足を振り上げた瞬間。

 待機させていた残りのビットが着地点へ滑り込む。


「ッ!?」


 ズドォン!!

 馬は豪快に足を滑らせた。


「ナイスだ」


 隙を逃さず、俺はナイフを抜いて光の剣を生成し、一直線に踏み込む。


「一刀両断!!」


 ズバァ!!

 光剣が馬の身体を真っ二つに裂いた。

 馬は絶命し、動きを止める。


 残るは騎士本体だ。


「ぐっ!!」


 ゴーストナイトは即座に立ち上がり、大剣を叩きつける。

 俺は光剣とナイフ二本で受け止めるが……重い!!

 魔力充填していても互角が精一杯。


「ゼクス!!」


 サーシャの声。

 同時に周囲のビットが一斉に突撃する。

 だが、


「効かない!? なんて硬さだい!?」


 カァン!カァン!カァン!

 鋼の鎧は全てを弾き返した。


「俺が火力を出す! サーシャは援護!」

「今日は命令ばっかだね! いいけどさ!」


 剣を払い、距離を取る。

 光剣の魔力をガントレットに充填し、サーシャと同時に攻めに転じた。


 サーシャはビットを集束させ、巨大なシールドを作り出す。


 ガァアアアン!!

 盾の直撃がゴーストナイトを壁まで吹き飛ばす。


「一撃剛破!!」


 俺は間合いを詰め、右拳を叩き込む。

 プレートが凹むが、砕けない。


「まだだぁ!!」


 何度も拳を振るい、ひたすら一点を殴り続ける。


「ゼクス!! 上!!」


 ゴーストナイトが剣を振り下ろす。


「っ……!!」


 だが俺は左手で刃を掴んだ。

 手のひらを裂く激痛と共に血が噴き出す。


(……ははっ)


 だが不思議だ。

 痛みが増せば増すほど、脳内からアドレナリンが出続ける。

 

 この戦いは面白いと。


 苦痛を快楽のように錯覚してしまい、思わず頬が緩む始末だった。


「見つけたぞ!!」


 拘束され動けぬ騎士。

 拳がプレートを破り、紫色の心臓を露わにする。

 こいつはもう終わりだ。


 呼吸を荒くさせながら、俺は剣を振り上げる。


「終わりだ!!」


 渾身の一撃で心臓を砕く。

 赤黒い血が飛び散り、ゴーストナイトは完全に沈黙した。


「はぁ……はぁ……」


 俺は腕を引き抜き、よろめきながら立ち上がる。

 巨体はもう動かない。


「ちょっと……大丈夫なのかい?」

「これか? 魔力は残ってるし……ほら」

「えぇ……」


 斬り裂かれた左腕に魔力を流すと、一瞬で塞がる。

 サーシャは安心どころか、ドン引きした目を向けていた。


「アンタ、ゾンビかい? 治るからって無茶がすぎるよ」

「魔法の有効活用だ。使えるものは使わないと」


 原作でも“ゾンビアタック”と呼ばれていた戦い方。

 傷を負いながら回復と攻撃を同時にこなす異様さゆえのあだ名だ。


(ギリギリの戦い……悪くないな)


 傷は塞がり、血痕だけが手のひらに残っている。

 まだ下の階層に潜りたい……未だ興奮は冷める事を知らない。


「あー……疲れた」


 気の抜けたサーシャの声に、現実へ引き戻された。

 ……今日はやめておくか。十分頑張ったんだし。


「アンタを見てると不安になるよ。死に急いでるようにしか見えない」

「心配してくれるのか?」

「それなりに長い付き合いなんだから、当たり前でしょ」


 やや不満げな顔をしながら、サーシャは俺の手を強く引っ張る。

 その素直さに、傷の痛みすら忘れて見惚れてしまった。

 こんな可愛い姿を見せられたら、もっと頑張りたくなるじゃないか。


「お、屍の霊魂がドロップしてる。これで欲しかった武器が作れるかもな」

「武器? そういえばアタシに作らせたいのがあるとか言ってたね」


 素材が多くて後回しにしていたが、ゴーストナイトを倒したおかげで揃った。

 サーシャも鼻歌まじりで素材を回収している。

 ……機嫌がいい今のうちに頼んでみるか。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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