表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
3章 モブキャラ、修行する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/100

第39話 モブキャラ、再び出会う

「星が……見える……」

「まだ昼だぞー?」


 あれから一週間。

 サーシャは魂が抜けたような顔でベンチにもたれかかっていた。体力はまだ残っていそうだが、精神的にかなり参っている。


「今から散歩でも行かないか?」

「散歩? どうせダンジョンにでも行くんじゃ……」

「おぉ、大正解。冴えてきたな」


 はぁ? と言いたげな顔。多分、適当に答えただけだろう。


「受け流しはもう十分。ここからはアドリブ力を鍛える。行くぞ」

「はーいはい……」


 悪態をつきながらも立ち上がり、俺の後に続く。


「戦いは常に予想外の連続だ。冷静に立ち回るなら……ダンジョンが一番だ」


 奇襲、突然変異、モンスター同士の連携。

 イレギュラーが当たり前のダンジョンは最高の修行場だ。原作でも魔法強化や戦術の実験によく使われていた。


「おい、あれって……」

「サーシャ・クラウンじゃん。お姉さんにボコられたって噂の」


 廊下を歩くだけで浴びせられる嘲笑。

 Sクラスの姉に完敗したAクラスの妹。鼻で笑う下位クラスの生徒すらいる始末だ。


「どうせアタシなんか……」


 反論もせず、ただ諦めたように視線を落とす。悲しむ余裕すらない。


(比較対象が悪すぎるんだ。優秀な素人がプロに勝てるわけがない。Aクラスにいる時点で十分凄いんだってこと、本人にわからせてやらなきゃな……)


 そう考えた矢先――


 ドォオオオオン!!


 轟音と共に地面が揺れた。

 庭に出てみると――


「なんだ、これだけか。大したことないね」


 不満そうに財布を確認するキザな男子生徒。その足元には、殴られて伸びている生徒が転がっていた。


「落ちぶれたな、ギラン様。元Sクラスの看板が泣くぜ」

「お前は……ゼクス・バーザム!!」


 ギランが歯ぎしりしながら睨みつけてくる。

 なるほど、カツアゲか。家を壊して多額の賠償を負ったと聞いていたが……。


「お前に負けて、模擬戦でも負けて……僕はBクラスまで落ちたんだぞ!!」

「そんなに弱かったのか?」

「借金とストレスでコンディションが悪いだけだ!」


 模擬戦でギランを倒したのは原作主人公のライト。序盤でSクラス撃破とは、さすがだ。


「お前だけは許さない……ここで殺す!!」

「おっと」


 ギランが魔力を練り始めた瞬間、俺は脚に魔力を集中させ、一気に間合いを詰める。


「ゴフッ……!!」


 鋭い右ストレートが胸に突き刺さり、ギランは足元をふらつかせた。動体視力が追いついていない。俺自身も成長しているのを実感する。


「てめぇ……!!」

「口調も荒れたな。――おい、サーシャ」

「へ? アタシ?」


「後は任せる」

「は、はぁっ!?」


 盾を落としそうになるサーシャ。だがこれ以上の特訓はない。


「安心しろ。指示は俺が出す」

「結局アタシがやるんじゃないか……」


 渋々シールドを構える彼女に、ギランは指を鳴らし不敵に笑った。


「前みたいにパンツ丸出しにしてやるよ!」

「相っ変わらず気持ち悪い男だねぇ……腹立つ!!」


 ドォオオン!!

 地面からツタが生え、左右からサーシャを襲う。


「前方にダッシュ。同時に空中と地面にシールドビット展開」

「はいよ!」


 指示通りに動いたサーシャ。ツタは軌道修正できず壁に突き抜ける。


「なめるな! 僕のツタは地面だけじゃない!!」

「メインシールドで受け流せ。空中ビットも移動」


 突き出されたツタを、サーシャは盾で受け止め、右へ流す。


「な、なに!?」

「後はサンドイッチ……わかるな?」


 バランスを崩すギラン。勝負は決まった。


「シールドプレスッ!!」


 前方の盾と、空中・地面に展開された計四枚のビット。

 それらが一斉に襲いかかり、ギランを豪快に挟み込む。


「が、ががが……!」


 特に頭上のビットが効いた。疲労で回避できず直撃したらひとたまりもない。


「ア、アタシが……元Sクラスを……?」


 格上を倒したという事実に、サーシャは呆然と立ち尽くす。


「お前は戦えるんだ。行くぞ」

「あ、あぁ……」


 肩を軽く叩き、再びダンジョンへ足を進める。

 実力は確実についてきている。後はメンタル次第だ。


(よし、バグワープで中層まで行くか。多少難しい方が身になる)


「ギランが絶好調でも勝てるのか?」

「当然。少し時間はかかるけどな」


 条件も満たしたし、素材もゲット。いい流れだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ