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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
2章 モブキャラ、入学する

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第29話 モブキャラ、キザなクラスメイトと戦う

「君とは一度やりあってみたかったんだ。オーディエンスもいるし、ちょうどいい」

「俺もだ。お前の恥ずかしい姿を見たくてな」

「勝つこと以外見えてないのか? 愚かな伯爵だ」


 杖の先端を撫でながら、余裕の笑みを浮かべるギラン。

 随分と挑発してくれるじゃないか。……なら、本気でわからせてやる。


「君の隣にいるレディ……誰かと思えばクラウン家の次女じゃないか。姉より下のクラスにいるって噂の」

「っ!! アンタこそ生意気な口を閉じた方が良さそうだねぇ?」

「おいおい、公爵家のAクラスが何か言ってる。侯爵家の僕に負けたら、口だけの情けない女ってことだ」

「ちっ……」


 一クラス違うだけで、そこまで差があるのか?

 馬鹿にされてもサーシャは反論できず、苦々しい顔をして目を逸らすばかりだった。


「やらないのか?」

「……どうせ勝てないよ。アタシなんてお姉様より弱いんだから」

「なるほど、諦めモード突入か」

「説教かい? アンタが惚れた女が、こんなにも情けないなんて思わなかっただろう?」


 自信がないのだ。

 実力も人気も地位も、すべて姉に劣る彼女。

 負け続けの人生。偏見を植え付けられるのも無理はない。


「いや? むしろ守りたいほど可愛らしいって思ったが?」

「はぁ?」


 どちらにせよ、サーシャのことは救う。

 ダメな子ほど愛おしくなるってやつだ……別にサーシャはダメじゃないけどな。


 後で彼女の価値をたっぷり教えてやらないと。


「ギランさまぁ、あんなヤツ倒しちゃってくださいよぉ♡」

「私もギラン様のかっこいいとこ見たーい♪」

「ふふ、たっぷり見せてあげるから。そこで見学しているといい」

「「きゃー!!」」


 すげぇバカみたいな取り巻き女子二人。

 名前も知らんってことは、俺と同じモブか。


「お前の連れも中々可愛いな。欲しくなってきた」

「ふふ、君に惚れることはないさ。彼女達の目は案外、肥えてるからね」

「肥えてる? 見誤っただけだろ?」

「……まずはその口から消し飛ばそうか」


 俺の挑発に、ギランの顔が不機嫌に歪む。

 杖に魔力を込めると、地面から植物が次々と芽吹いた。


「なんだいこれは!?」

「自然系統の魔法使いか。まるで生き物のよう……見事だ」

「鑑賞動物じゃないよ? ここからもっと美しくなる」


 大木のような植物に、グロテスクな口が付いていた。

 ホラーゲームに出てきそうな代物だ。


「爆ぜろ……大地の種達よ!!」


 ギランの号令とともに、植物の口から種が一斉に射出された。


「……ここか」

「ちょっと!? なぜ動かないんだい!?」

「いや、この位置なら避けられるだろ?」

「意味がわからない! 弾は何発もあるのに……」


 派手な回避なんて不要だ。

 俺は一歩前に進み、さらに三歩だけ左へ。

 それで十分だった。


 種の弾道、落下地点……すべてが“見えて”いる。


 ドドドドドドドドッ!!


「ほらな」

「え……?」


 弾丸は俺をかすめることなく、すべて地面へと突き刺さった。


「僕の攻撃を、動かずにかわしただと!?」

「まるで予知していたような……どうやって」

「目を強化した。それだけだ」

「「は?」」


 驚いたろ?


 魔力充填は、肉体のあらゆる部位を強化できる。

 目を強化すれば、弾道計算や軌道予測なんて造作もない。

 しかも今回は速度の遅い弾が、素直に一直線に飛んでくれた。


「身体強化の応用……? 聞いたこともない!!」

「正確には魔力充填……って、次も来るか」

「ま、まぐれだ! 今度は攻撃を混ぜれば!!」


 ギランは焦り、種の弾に加えてツタの鞭を操る。


「くそっ! くそぉ!」

「やはり自然系は火力偏重だな。その分、速度では劣る。レアの方がよほど速いぞ」


 どの攻撃も単純すぎる。

 変化も特異性もない。

 魔力充填というシンプルな強化に、手数や力押しで勝てると思うな。


「……ならば範囲攻撃だ」

「ほう?」


 ギランが一旦攻撃を止め、周囲のツタを大きく広げる。


「また同じ手か? 弾丸を増やしたところで……」

「い、家にツタが!? まさか……!!」


 おいおい、他人の家だろ?

 ツタで屋根ごと引き剥がすのは豪快だが、どうやって弁償するつもりだ?


「きゃあああああ!!」

「お、俺の店がぁ!!」

「力ってのは、こうやって使うんだよっ!!」


 完全に俺を倒すことしか考えていない。

 ……まあ、後先考えないのは俺も似たようなもんだが。


「だから避けられる……って、その方向は!!」


 やばい。

 崩れた家屋の破片が、サーシャの頭上に落ちる軌道だ。


「サーシャ!」

「ちっ!! アタシを巻き込むんじゃないよ!!」


 蹴り壊すか……?

 俺は足に魔力を込めかけて――いや、必要ないな。

 サーシャの魔法なら防げるはずだ。


「集合しな!! シールドビット!!」


 ガァンッ!!

 小型の盾が次々と彼女の前に集まり、巨大な盾となって崩落を受け止める。

 相当な質量だったはずだが、サーシャの表情は微動だにしない。


「ふん、Sクラスってのは意外と大したことないのかい?」

「い、家を防いだだと……Aクラスの分際で!!」


 やるじゃないか、サーシャ。

 彼女の固有武器である盾を生かした魔法シールドビット

 普段は複数の小さな盾だが、意思次第で巨大な盾に変形可能。

 さらに小型盾一つひとつを飛ばして遠隔操作することもできる。

 それぞれが高い防御力を持ち、彼女の防御網を突破するにはかなりの実力が必要だ。


「どうだ? 少しは自信ついたか?」

「……少しはね」

「そうか。それならよかった」


 やはり、彼女を変えるにはやって見せるのが一番だ。


「やるしかないようだねぇ……大合体を!!」

「大合体?」

「僕の切り札さ――おおおおおおおおおおおおお!!」


 ギランが咆哮する。

 それに応じて植物たちが一斉にうねり、絡まり、融合していく。

 やがて巨大な一本の木へと姿を変えた。


「きゃあああああああ!!」

「な、なんだありゃあ!!」


 凄まじい迫力に、観客たちも我先にと逃げ出す。

 喧嘩の域をとうに越えている。

 こいつ、戦争でも始める気か?


「まるで怪獣みたいだな」

「怪獣? 何のことかわからないが、迫力は十分だろう?」


 そうか、この世界には怪獣の概念がないか。

 さて、この化け物をどう仕留めるかーー


「おまけに動きも……ねっ!!」

「っ!? きゃああああああ!!」

「サーシャ!」


 地面から伸びたツタがサーシャの足を絡め取り、そのまま宙へ吊り上げる。

 逆さまの状態で、彼女は情け容赦なくぶら下げられてしまった。


「へへ……いい盾を手に入れたよ」

「くっ!! このツタを離せ……そ、そこはやめろぉ!!」


 ギランは器用にツタを操り、サーシャのスカートをつまむ。

 そして容赦なく持ち上げ――


「おおぉぉ……」

「見るんじゃないよ!! 変態どもが!!」


 露わになったのは、ピンク色のショーツ。

 しかもフリル付きの可愛らしいデザインだ。


「ギラン……素晴らしいご褒美だ、感謝する」

「レディの下着は何度見ても飽きないね」

「変態共……後でぶっ殺してやるからな!!」


 怒りに震えるサーシャはシールドビットを操り、巨大植物へ攻撃を仕掛ける。

 だが、かすり傷ひとつ付けられない。

 物理耐性が相当高いな……原作でもギランの最終形態はちょっと厄介だった。


「だが、盾にするのは趣味じゃない」

「ん?」


 倒せない相手ではない。

 それに、美少女を盾にするなんて趣味は俺にはない。


 俺はナイフの刃を撫でる。

 そこから光が溢れ、剣の形を成し始めた。


面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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