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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
1章 モブキャラ、生まれ変わる

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第2話 モブキャラ、本領を発揮する

(これが俺の武器か……)


 腰元に刺さっていたのはナイフ。

 柄の部分がガントレットのような形状をしており殴りにも使えそう。


 なるほどね。

 ゼクスが持つ魔法適性を考えたら、相性は悪くない。

 クセの強い武器じゃなくて一安心。


(魔法も……いけるな)


 イメージ。それが魔法を使うのに必要なこと。

 魔力を注いで、適正に合わせる形で魔法をイメージ。

 後は発動するだけ。


 軽くやってみたけどいけそう。

 ツイファンの時と同じだ。


「随分と変わったナイフ。それが貴方の固有武器ですの?」

「いいだろ? 近接戦ならかなり強いと思うが」


 固有武器。人にはそれぞれ相性のいい武器がある。

 剣とか弓とかメイスとか。

 武器に魔力を流す事で頭の中でビビッと来るのが自分に合った武器らしい。 

 

「ですが、わたくしに近づくのは難しいと思いますわ」 


 ビュン!!

 空中に氷のつららが出現し、俺に向かって一気に飛んでくる。


「まずは小手調べ……」


 俺は正面から飛んでくるつららに対して……

 

 ビュオン!!


「っ!?」


 凄まじい脚力で飛び越え、レアに急接近した。


「ふんっ!!」


 渾身の右ストレートがレアに襲い掛かる。

 しかし、レアもただやられるわけではない。


 ガァン!!


「間に合いましたわ……」


 俺とレアの間に挟まる形で出現した氷の壁。

 この生成速度。あらかじめ設置して保険をかけてたな?


「流石は氷魔法。汎用性も応用力も高い」

「伊達に侯爵家の人間を名乗っていません。実力あってこその立場ですから」


 レア・スカーレットは氷魔法の使い手。

 原作では多種多様な氷魔法でプレイヤーに襲い掛かり、初見殺しギミックも多くて苦戦しやすい印象だ。


「身体強化ですわね? ロクでもない魔法の適正を得たみたいで」


 魔力を消費することで身体機能を一時的に向上させることができる。

 それが身体強化。


「ただ体を強くするだけ。遠距離魔法も一切ない。わたくしに勝つには心もとない魔法ですわね」


 レアの言う通り。

 遠距離魔法がないというのはハンデだ。

 懐に潜り込めば強いが、己の身体能力で全てを対処するのは難しい。


 汎用性の高い氷魔法に対して、相性が悪いと言い切れる。 


「それだけか?」


 今は”勘違い”してくれて構わない。

 都合がいいからな。


「へぇ?」


 ピキッ!! ピキキ……

 氷の壁にヒビが入り、砕け散ろうとしていた。


「”氷結槍”!!」

「おっと」


 壁を突き破り、そのまま殴ろうとした俺の元に地面から巨大な氷の槍が生成される。

 俺はバク宙して回避し、レアから距離をとった。


「身体強化で壁が……力でゴリ押されただけですの?」

「さてさて、答えは何かな?」

「どちらにせよ、わたくしの有利は変わりません」


 空中にいくつもの氷のつららが生成される。

 さっきよりも多い。レアの周りを埋め尽くしている。

 

「数で押せばいいだけですわ!!」


 それらが再び俺の元へ飛んできた。


「ふっ、ほっ、はっ!!」

「相変わらず素早いですわね……」


 とにかくかわし続ける。

 つららは速いし数が多い。

 実戦闘が始めての俺でも対処できるのは、この身体とゲーム知識のおかげ。


 前世よりも攻撃が見える。

 流石は魔法世界の住人。身体能力が高い。


 そしてゲーム知識だが……

 

(モーションわかりやすっ)


 レアの視線や魔法を撃つ前の予備動作。

 それらがゲームと同じだから、対策は簡単だった。


 レアは終盤まで戦う事になるけど、今の彼女は多分第一段階。

 使用魔法や戦い方が単調だ。

 流石に細かい部分は違うけど、大本は同じ。


 性能で劣るゼクスくんでもなんとかなっちゃうわけ。


「どうしましたの? 避けてばかりじゃわたくしは倒せませんわよ!?」

「耐えるターンが必要でね。めんどうだが」


 ヒュンヒュンヒュン!!

 慣れたからか、氷の槍を最小限の動きで回避する。

 刺さったら大変だが一発一発は大したことない。


「耐える? この氷の雨を防ぎ続けられると?」

「無理だな」

「ふふ、そこは現実を見ていますのね」


 見切れるとはいえ限界はある。

 ゲームと違って現実は体力というものがあるから。


「そろそろだな」


 大きく横へ飛んだ後、俺はナイフをレアの元へ思いっきり投げた。


「ナイフをわたくしに投げるとは……面白いですわね」

「投げるだけじゃないぞ?」

「っ!! 自らも突っ込んで!!」


 ナイフは簡単に避けられた。

 しかし、その回避による隙を利用し俺は飛び込む。


「一撃剛……」


 拳に魔力を込め、レアに一撃かまそうとした時。


「”氷結山”」


 パキン!!

 全身が一瞬で凍り付いた。


「あらあら、綺麗な氷像のできあがりですわ」


 殴りかかろうとする俺を形どる氷像。

 それをレアは不敵な笑みと共に撫でまわす。


「貴方では力不足。わたくしに好かれるなんて夢のまた夢……」


 勝った。

 そう確信したレアが後ろを振り向く。


 パキ……パキキ……


「氷像役は終わっていいか?」

「なっ!?」


 俺が死んだと思い込んだな?


「氷が!? 一体どうして!!」


 何故か砕け散った氷。

 動揺するレアが防御態勢を取るがもう遅い。


「ふんっ!!」

「ぐっ……!!」


 俺は蹴りをレアの腹にめり込ませ、身体を転がした。

 同時に地面に刺さっていたナイフも拾う。


「攻めは真っすぐ。ならば全方位から……!!」


 突撃する俺を数多くの氷の槍で迎え撃とうとするレア。

 このままでは串刺し確定。

 素直に回避した方がいい。


「悪いが直進だ」

「止まらない!?」


 グサグサグサァ!!


 俺は進み続けた。

 氷の槍を身体に刺されても。

 全身から大量の血を流しても。


「”一撃剛破”」


 そこに恐怖する必要はない。

 ただ目の前の相手を倒すだけだ。


「ぐっ……ああああああああっ!!」


 柄のガントレットによる重い一撃。

 モロに喰らったレアが大きく吹き飛ばされた。

 ドォオオオオオオオン!!


「もう一撃……お?」

「はぁ、はぁ……」


 ナイフを突きつける俺に震える手で剣を向けるレア。


「油断したわたくしの落ち度……ですが、大人しく屈するつもりはありませんわ」

「勝利にどこまでも貪欲な姿勢。流石はスカーレット家のお嬢様」


 例え負けるとわかっていても彼女は諦めない。

 スカーレット家の侯爵令嬢として。その高いプライドこそ彼女の強さの源。


「ここから逆転は……後ろか」

「……それも受け止めますのね」


 ピュン!!

 後ろから飛んでくる氷の槍を手で掴む。

 ただで負けるつもりは無いって事ね。


「少しは証明できたか?」

「悔しい……ですがここまで……」


 けど、これで俺の強さは証明できた。

 ククク、面白くなって来たぜ。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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