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第17話 モブキャラ、元凶を倒す

「ゲホゲホッ!! あぶなかったー」


 俺達がいた階が一瞬で焼け野原に。

 従者達は氷で守られて無傷だが全員気絶している。


 これは……やらかしたな。


「粉が充満してる状態で爆発……俺の想定以上になるわけだ」

「ウチの屋敷を壊したいのですか!? 後でちゃんと請求しますわよ!!」


 粉塵爆発。この程度で済んだ事にラッキーだと思うべきか。


「で!? さっきのはなんなのですか!?」

「魔力充填したマナ鉱石を壺に隠したんだよ。起爆程度なら遠隔でできるし、メアリ様を狙ったザクネスに不意打ちをかませると思ったが……」

「勝手に爆発物を仕掛けないでくださる!? 人の屋敷ですわよ!?」

「あはは……マジすまん」


 今回は完全に俺が悪いな。

 設置系は周りの状況や相手の魔法を見てから仕掛けるとしよう。


「がはっ!! い、いったいなにが……」

「俺のトラップはどうだザクネス? 十点満点で評価してくれよ」

「無茶苦茶すぎる……何者なんだ貴様は!?」

「ほぉ、随分と高評価だな」


 とりあえず想定通りの効果は発揮したらしい。

 爆発に巻き込まれたザクネスが廊下で倒れていた。


「もう逃がさないぞ? 大人しく俺に倒されな」

「くっ!! 今度は何だ……!!」

「ゼクス!?」


 バリィン!!

 ザクネスを掴んだ俺はそのまま窓に向かって一緒に飛び込んだ。


「きゃあーーー!?」

「な、なんだこいつは!!」

「全員離れろ!! こいつは魔族化したザクネスだ!!」

「「「ザクネス様!?」」」


 外には周りの従者や兵士、領民達がいた。

 俺は彼らにわかりやすくアピールして、今のザクネスへの印象を植えつけた。


「民衆に晒される感想はどうだ?」

「さっきの爆発も人を呼ぶためか……考えたね」

「あれはまぁ……少しやりすぎたが」


 レアもめっちゃ怒ってたからな。

 割と反省してる。


 ピュン!! ドドドドドド!!


「撃てー!!」

「がっ!! あ、あぁ……」

「魔族に魂を売った愚か者め!! 我々が成敗して……」


 兵士達がザクネスに向かって魔法や弓を放つ。


 敵に回るの早っ。

 まぁ魔族もどきを相手に疑う余裕なんてないか。

 味方が増えるのはいい事だ。


「バーザム家の貴族はたやすく潰せるはず……なのに、なのにいいいいいいいいい!!」

「うわあああああああああああああ!?」

「っ!! 魔装結晶に飲み込まれたか!!」


 肥大化した魔力の爆発で兵士達が吹き飛ばされる。

 ザクネスの目の光が消えた?

 話し方も滅茶苦茶だし、暴走が始まったか。


「あぁ、力が……力が増すぅうう……!!」

「暴走まで多少ラグがあるのか。いい勉強になった」


 さっきよりも火力が上がっている。

 原作の方が魔装結晶が強いと思っていたが、まだ暴走してなかっただけか。


「コロス、コロスウウウウウウウウ!!」

「さて……終わらせるか」


 これ以上放置すると屋敷も領地も壊れてしまう。

 ナイフを突き出し、俺は切札の魔法を付与する。


「魔力充填・光装剣」


 刃を撫でるように魔力を注ぎ、光の剣を生成。


「まずは右腕」

「アアアアアアアアアッ!! ウデガアアアアアアア!!」


 ズバァン!!

 ザクネスの腕に光剣を振るうと、一瞬で肉が斬り離された。


「ユルサン、ユルサンンンンンンンン!!」

「広範囲の粉攻撃か……」


 フィールドを覆うように展開されるデバフの粉。

 俺が耐性を得てないヤツもあるか? 

 だったら、


「出力増大」


 全て消し去るまで。

 魔力を更に注ぎ込み、フィールド全体に触れるように剣を振ると、展開された粉が一瞬で消え去った。


「ガアアアアアアアアア!!」

「次は左足」


 その勢いでザクネスに突撃し左足を切断する。

 残り二つ。


「ゼクス、ゼクス、ゼクスウウウウウウウ!!」

「うぉっ!!」


 グシャアッ!!

 剣を振り下ろした隙を狙われて、ザクネスの拳が俺の身体を吹き飛ばす。

 地面をバウンドし、そのまま勢いよく壁にめり込む。


「いっ……てぇ……」


 骨が折れた。血も吐き出した。 

 暴走状態の速度を舐めすぎたな……

 けど、


「”身体再生”」


 魔力充填がある。

 生きてさえいれば、俺は大抵の怪我や病気を治すことができる。

 致命傷だろうが俺には関係ない。

 

「オォオオオオオオオオオオ!!」

「何度でも立ち上がるぜ? 来いっ!!」


 残った手足と魔法で俺を攻撃するザクネス。

 

 力強い打撃。

 粉魔法によるデバフ攻撃。

 そして暴走した魔力による波動。


 どれも強力だ。


「アァ……アアアア……」


 縦横無尽に放たれる連撃。

 もう油断はしない。

 俺は冷静に回避し続け隙ができるのを待つ。


(今……)


 足元がフラついた。

 ここだ。


「右足」

「アアアアアアアアアアアア!!」


 一瞬を突いてザクネスの右足を斬り飛ばした。


「最後は……左腕か」


 残ったのは一つ。

 四肢の殆どをもがれて、ヤツは身動きすることすら難しい。


「スベテ、シハイイイイイイイイイ!!」

「すぅ……」


 ザクネスは残された右腕に魔力を集中。

 渾身の拳が真正面から飛んでくる。


「ッ!!」


 俺はその拳を光剣で受け止める。

 ギリギリ……という嫌な音を立てながら、地面で踏ん張り続ける。


「はぁああああああああああああああ!!」

「ッ!? ナ、ンダ……?」 


 魔力充填で強化した筋力でザクネスの腕を跳ね返した。

 チャンスは今しかない。

 俺は再び足に力を入れて、前へと踏み出す。


 ビュン!!


「一刀両断……!!」


 最後に残った腕を俺は光剣で真っ二つに斬り捨てた。


「ア……」

「もう動けないぞ、ザクネス」


 グサッ!!

 刃をザクネスの腹部に突き刺し、壁に固定する。


「ぼ、くは……な、ぜ……」

「ほぉ? 過剰な魔力消耗で意識を取り戻したか」


 魔力も力も失われている。

 これ以上の抵抗はできないだろう。


「嫌だぁ……死にたくない……死にたくないいいいい!!」

「圧倒的な絶望を前に命乞い……スカーレット家を背負うには少し重かったようだな?」

「助けてくれぇ……僕は、僕はここで死んでいい人間じゃ……」


 あまりにも情けない姿。

 レアならこの状況でも最後まで抗おうと挑み続ける。

 強さと誇り。今のザクネスからその二つは全く思い浮かばない。


「わかった」

「っ……!!」


 優しい言葉を前にザクネスの顔に笑みが戻る。


「俺は殺さない。常に最適解を求めてるからな」

「あぁ……なんと優しい……」


 俺がザクネスを殺す事は最適解ではない。

 誰でも役割というのは存在する。

 こいつに終わりを与えるのは……”彼女”の役目だ。


「この場合の最適解は……お前に任せてもいいか、レア?」

「っ!?」


 壊れかけた屋敷の中から人影。

 冷たい目つきのレアがゆっくりこちらに向かってくる。


「レア、僕は……僕はただ……」

「スカーレット家の意志はわたくしが受け継ぐ……」

「やめろ、やめろぉ!!」


 手には剣が握られている。

 感情豊かに命乞いをするザクネスを前にレアは表情を少しも崩さない。


「貴方は……もう必要ありませんわ」


 剣をゆっくり構える。視線の先にいるのはただ一人。


「さよなら」

「や……」


 ズバァッ!!

 レアの剣は首を勢いよく跳ね飛ばした。

 情けない元当主の声と共に。


「感想は?」

「ようやく終わった、って感じですわね」


 だいぶ派手にやったなぁ。

 屋敷も土地もぐちゃぐちゃだ。

 後は領民を元に戻さないといけないし……ってまともなヤツが何人かいるな。


「俺も始めるか」

「え? わたくしの剣で何を……」


 信頼は早いうちに取り戻した方がいい。

 俺はレアから剣を取り、その刃で跳ね飛ばしたザクネスの首を突き刺した。


「皆の者よく聞け!!」

「「「ん?」」」


 そしてその首を天高く掲げ、領民の前で演説する。


「これは我らが愛するスカーレット領を滅ぼそうとした愚か者の末路だ!! 彼は前当主を葬り去り、自らが新しい領主となって我々を支配しようとしていた!! これがその証拠だ!!」


 空いた手で魔族との取引記録が書かれた書類を見せつける。


「魔族との取引記録!?」

「おいおい、これって魔装結晶じゃないか!?」

「最近、友達がおかしくなってたのも毒薬が原因だったのか!!」

「どうなってるんだスカーレット家は!!」


 自分達の日常を苦しめた元凶が領のトップであるザクネスだった事に驚く。

 その驚きは怒りに変わり、矛先がスカーレット家に向けられる。 


「スカーレット家を疑う気持ちは分かる……だが安心するといい」


 タイミングとしては今が最高だな。


「この脅威から皆を救ったのは紛れもない!!”氷結姫”、レア・スカーレット侯爵令嬢だ!!」

「えっ!? わたくし!?」

「「「おおおおおおおおおおお!!」」」


 後ろにいたレアに視線を送ると、領民が彼女を見ながら歓声をあげる。 


「彼女は領を守るために立ち上がった!! 不可思議な現象に耐え続け、元凶である自らの父親をこの剣で処刑した!!」


 やや脚色しつつもレアの偉業を領民に伝える。

 スカーレット家に”良心”が残っている事を証明するために。


「我がスカーレット領を守った英雄!! 強さと誇りのあるレア様に忠誠をちかえええええええええ!!」

「「「わあああああああああああああ!!」」」


 そして会場のボルテージが最高潮に達した。


「この世で一番美しく気高い存在は誰だ!!」

「「「レア様!! レア様!! レア様!!」」」

「よくわかってるじゃないか!! ははははははは!!」

「そこまで盛る必要ありますの!?」


 計画通り。これでレアが名実ともに当主として君臨できる。失われかけたスカーレット家に対する信頼も確保できたし、彼女も安心して領と向き合えるだろう。


「で? ”氷結姫”ってなんですの?」

「異名があった方がかっこいいかなって」

「ふーん……悪くないですわね」

 

 即興で作った異名だが気に入ったか。

 俺もなんか作りたいな……できればかっこいいヤツがいい。


面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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