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第16話 モブキャラ、追い詰める

「ザクネス。俺はお前の事を知らない。だが、お前の魔法は知っている」

「……なんの事だ!!」

「そのままの意味だ。お前の絡んだルートの知識が無くても、俺はお前を倒せるって事」


 粉系の魔法は何度も戦ったことがある。

 プレイヤー同士で戦うランクバトルでたまーに出会っていた。

 ザクネスの行動パターンや固有モーションがわからなくても、原作で得た知識や経験は生かせる。


「随分と調子にのっ……ごほぉっ!?」

「もう少しだけおねんねしてな」


 ハッキリ言ってザクネスの魔法は魔力充填に弱い。

 実力がわからん所もあるが、相性的な部分では優位を取っている。


「”魔力充填”」

「かはっ……ゼ、クス……?」

「少しの我慢だ。じき良くなる」


 毒に犯されたレアを魔力充填で回復させる。


「ふぅ……こんなもんかな」

「貴重な魔力をわたくしのために……これではザクネスと戦えませんわよ」

「俺が頑張るのはレアがいるからだ。見捨てる選択肢なんてない」

「相変わらずお口が回ること……」


 照れた顔を逸らしてる。

 相変わらず可愛いヤツだ。ますます好きになる。


「レアの毒が消えた……!? どういう仕組みだ!?」

「お前は楽しみすぎなんだよ。メアリ様もさっさと殺せばよかったのに、正当性を証明する為にじわじわやろうとした」

「メアリだと!? まさか彼女も……」

「俺が治した」


 どうやらメアリ様が無事な事も知らなかったな?


「色んな毒で治らないようにしてたな? それが俺の魔力充填で耐性をつけた結果どうなると思う?」

「魔装結晶を封じただと!? バカな……人知を超えすぎている。僕の毒は専門知識なしでは解毒できないはずだ!!」

「初期はな。DLC魔法を舐めんな」


 毒系は結構ウザかったなー。

 デバフ祭りだし解除手段も限られてたから嫌われてた。

 環境中盤になるとDLCの追加と戦法が煮詰まったおかげでかなりメタりやすくなってたけど。


(あ、また頭が……)


 レアの心配通り、魔力の消耗で身体がふらつく。


「ふふっ……想定外の魔法に驚きましたが、貴方は忘れてますよ?」

「……わかってるよ」

「魔力は有限!! レアを治したことでお前の魔力はかなり減っている!!」


 いくら強い魔法があろうと根本的なシステムは変わらない。

 魔力がなければ魔法は使えないし、体力がなければ動く事すらできない。


「それならこれで回復できるぞ」

「「っ!?」」


 そこで登場するのが禁止アイテム”魔装結晶”

 これを思いっきり身体に突き刺す。


「ゼクス!? 今、身体に刺したのって!?」

「魔装結晶だ。いくつか盗んだから使わせてもらった」

「そういう事ではなく!! 魔装結晶なんて使えば……」

「最悪暴走して魔族になるかもなぁ、ははっ」


 基礎ステータスと魔力を大きく向上させる代わりに魔族化と暴走のリスクがある。

 ゲーム内だと操作に癖がある程度だったが、現実だとそうはいかない。


「とち狂ったか? 自滅したならそれで……」

「誰が自滅したって?」

「っ!? 何ともない……!?」


 だが俺はピンピンしている。

 むしろ魔力が回復して元気になった。


「大丈夫なの……?」

「なーんにも? ただ魔力が回復しただけだ」

「それだけ? 一体何故……あっ」

「そういうこと」


 レアも気づいたな。


「メアリ様を治した時に魔装結晶への”耐性”も得た。おかげで魔装結晶が副作用なしで使える魔力回復アイテムになるわけだ」


 魔力充填の使用者は暴走しない。

 既に耐性を得ているから、副作用やデバフによる変化が発動しないからだ。


 残ったのは魔力を回復するという部分だけ。

 元がマナ鉱石だから回復アイテムとしてはかなり効率が良かったりする。


「いくらなんでも強すぎませんか……」

「これでもかなり弱体化してるんだよなぁ。クソ運営め」


 魔装結晶+魔力充填によるお手軽火力コンボが大暴れ。

 全回復した状態で火力を上げてくるからまーじで対処できなかった。

 やってる側は楽しかったけど。


 結果、魔力充填の保有者は火力アップができなくなり、魔力回復だけ残ったというワケ。

 それはそれで強かったという話は一旦置いておく。


「不思議だね……なら、イレギュラーにはイレギュラーで対応しようか」

「それは……!!」

「魔族の力、お借りしますよぉ!!」


 基礎的な部分を簡単にバフできる禁止魔道具。

 魔装結晶をザクネスは取り出し、尖った部分を自らの身体に刺した。


「おおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 バキッ!! バキバキバキィ!!

 角が生える。尻尾が生える。

 体色が変化し、身体もより大きくなり、威圧感も増した。


 その見た目はまるで魔族のよう。

 これが魔装結晶、本来の使い方だ。


「人間が……魔族に……?」

「素晴らしい。圧倒的な力の支配……魔力もこの通りだ!!」

「きゃっ!?」


 これが魔装結晶の力。

 証明するようにザクネスの巨大な腕が近くの部屋を粉々に砕く。


「たった一撃でこの火力? これが魔族の力なのね……」

「レア……君もこの力が欲しくなるだろう? 本当の強さが手に入るよ?」


 手にすれば誰でも手に入る力。

 甘い誘いがレアに降りかかる。


「……そんなのいりませんわ」

「あ?」


 しかし、彼女は否定した。


「何かを奪ってまで力を手に入れたくない!! わたくしが求めるのは大事なものを守る力ですわ!!」


 領民や父親を犠牲にするザクネスを許さない。

 そこに悪役としての姿はない。


「それでこそレア・スカーレットだ。好きになってよかったよ」

「何っ!? 更に速く……!!」


 強く踏み込む。

 全開した魔力をフル活用し、加速力に極振りしてザクネスに迫る。


「ガッ!? ……ならば!!」

「ほぉ? 隠れたか」


 一発だけガントレットの拳が命中したが、ヤツは隠れてしまった。大量の粉を撒き散らして。


「魔装結晶は魔法の常識を超える。それを教えよう」

「なっ!? 粉がザクネスの腕に集まって……!!」

「火力は十分!! 未知の魔法にも対応は可能だぁ!!」


 ほほぉ、粉の腕か? 名前が弱そう。

 一つ一つの粉に魔力が込められているから、威力はそれなりにあるか?


「はぁああああああああああ!!」


 勢いよく巨大な腕が俺の元に振り下ろされる。

 ドガァ!!


「はーん? やっぱパワーが低いな」

「なっ!?」

「受け止めたの!?」


 だが魔力充填の前では無力!!

 こんなの片手でも止められるわ。


「ぐっ……!! 力負けしているだと!? 魔装結晶を使っているのに何故!?」

「教えてやろうか?」


 状況が呑み込めていないザクネス。


「魔装結晶にも相性はある。デバフ支援系のお前は……正直相性が悪い」


 デバフ系は支援に特化している上に、直接戦闘でもタイマンを張る状況はあんまりない。

 殴り合う場面もなくはないが、そっちに振るくらいなら魔力を上げたり速さをあげて逃げやすくしたり。 

 魔装結晶で暴走して緻密な魔法戦術が使えないのは無駄が多い。


 ハッキリ言って火力に極振りした魔力充填に正面から挑むのは無謀だ。

 魔法タイプによっては魔力充填よりも火力出せるけど。


「大人しく俺に殺されろ。スカーレット家の汚点よ」

「ちいっ!!」


 力に溺れた結果だ。

 もう少し自分の得意分野を見極めてから戦うべきだったな。


「ここは撤退するしか……!!」

「何度も同じ手を……ってこいつらは」

「ふふ、粉魔法の底力を舐めてたね?」


 周りに従者が集まってくる?

 ザクネスの魔法で操られてるのか。


「僕の人形とせいぜい遊ぶといい。支配を諦めるのは先になりそうだ!! はははははははは!!」


 足止めを用意して満足したのか、ザクネスは全力でその場から逃げた。

 結構素早いな。俺も追いかけたいが、従者達が邪魔で前に行けない。

 どうやって突破しようか考えていた時、


 パキンッ!!


「”氷結山”!!」

「魔法を使って大丈夫なのか?」

「足止めくらいならね……」


 従者達が凍らされて動けなくなる。

 今回は足だけか。器用な事もできるんだな。


「それで? 何か策があるんでしょ?」

「……流石だ。察しが良くなったな」

「ふふっ、侯爵令嬢を舐めないでくださる?」


 段々俺を理解してきてるな。

 嬉しいねぇ。


「ザクネスはまだこの階にいるだろ? ドカンと一発かましてやろうと思ってな」

「ドカンとねぇ……ちょっと待ちなさい」


 さっき壺に仕掛けたギミック。

 もしものとっておきとして置いたけど、役に立ってよかった。


「俺から逃げられると思うなよ? 欲望と共に爆ぜろ!!」

「ゼクス!? それって爆弾じゃ……!!」


 パチンと指を鳴らした瞬間、


「あっこれ想像以上……」

「何をしていますのおおおおおお!!」


 ドカァアアアアアアアアアン!!

 屋敷内が爆発に包まれた。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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