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第13話 真の悪人、企む

 side:ザクネス


「……ザクネス様。こちらを」

「いつもすまないね」


 机の上に置かれた金貨と魔装結晶。

 お返しにとマナ鉱石を置く。


 相手は魔族の闇商人。

 定期的に交流しているお得意様だ。

 

「ふむ? 今月のマナ鉱石が少ないようですが?」

「世界中で需要が増えていてね。娘が新しい供給元を確保しているので少し待っていただければ」

「ほほぉ。新しい供給元ですか」

「なんでもマナ鉱石が採掘できる新しい鉱山を見つけたと」


 そのためだけにわざわざ伯爵家と契約結婚を結んだのだから面白い。彼女は彼女で足掻いているが無駄なこと。


「しかし魔装結晶の失敗作を求めるとは、中々変わっておられますね」

「私の魔法を使うと特殊な薬になってね。考える力と気力が奪われるのは面白い。存分に活用させてもらいましたよ」

「……まさかスカーレット領の異変も?」

「えぇ」


 あれは実験の産物だ。

 都合のいいように壊して、後で支配しやすくなるための土壌を整えただけ。


 川の水に特殊な粉を混ぜるだけで人がどんどん崩壊していく。

 繁華街は色んな匂いで溢れてるからか少し効果が薄かったが……


 それも含めていい研究材料になった。


「ステルスパウダーもありがとうございます。おかげで魔力や薬の検知を誤魔化すことができた」

「……あれは索敵系の魔法を少し狂わす程度のもの。我々の間でも失敗作として持て余していたというのに」

「その程度の効果で十分。1を100にするのは私の魔法で簡単にできますから」


 材料があれば十分。

 育てる事には慣れている。

 魔族の闇商人達は僕にいい物をくれた。


「……おっとネズミが」


 脇の方から沸いたネズミに向かって魔法の粉を吹きかける。


「ピギッ!? ピギィ……」


 ネズミは口から泡を吹き出し、ピクピクと身体を震わせた後に力尽きてしまった。


「多種多様な粉を操る魔法……薬学では頂点に立てたのでは?」

「他人を救って得る地位に興味はありません。全てを壊してから奪う事に面白さがあるのです」

「貴方の生成したステルスパウダーも我々の研究に役立っています。ビジネス相手としてこれほど面白い者は中々いない」


 ステルスパウダーは中々面白い発明だった。

 混ぜるだけで魔法による検知や毒の反応を消してくれる。これほど隠蔽工作に向いた粉になるとは思わなかったが……僕の計画をやりやすくしてくれたよ。


「全てはスカーレット家の歴史を消し去り、新たな貴族家としての歴史を生み出す為。身内も含めて、スカーレット家は生まれ変わるのです」


 スカーレット家の支配。

 スカーレット家の崩壊。

 

 これが僕の求めるもの。

 多少回りくどくても手に入れたいものだ。 


「そのためなら娘も殺すと?」

「殺しはしませんよ。私の魔法で永遠の操り人形になってもらいます……」


 レアは素晴らしい人材だ。

 魔法にも優れているし格上の相手だろうと恐れることを知らない。


 将来、色んな人間を相手にする上で彼女は心強い存在になるだろう。


「僕は魔族の研究を支配に使ってみたい。僕の魔法と魔族の技術があれば、貴族社会だって意のままに操れる……」


 この力に気づいた時、僕は国すら動かせると思った。

 知らず知らずの間に支配される世界……想像しただけで面白い。 


「どんな目的があろうと構いません。我々”デストレーダー”はクライアントが幸せであれば十分なので」

「貴方には感謝していますよ。僕の願いを叶えてくださるのですから……あははは」


 優しさなんて計画の為の仮面でしかない。

 壊れていく領地を見る度に笑ってしまう自分を抑えていた。

 

(滑稽なものだな……)


 誰もが気力を失う。

 誰もが感情を失っていく。


 人が人である事を忘れる僕の力。

 自分が世界を変えていく感覚が何よりも楽しい。


「魔装結晶の過剰使用にはお気を付けを。それでは」


 表情を崩すことなく魔族の商人はその場を去った。


 ◇◇◇


「魔族と言えば世界中で暗躍する連中じゃない。裏社会も全て魔族が支配してるって噂よ」

「魔物と人間、両方の特徴を持つ。魔装結晶もヤツらが生み出したって話だな」


 原作だと魔装結晶は敵側のアイテムとして何度も出てきた。それこそ隣にいるレアだって最終的に魔装結晶の力に溺れることになったし。


「どんな感じだったんだ?」

「は、はい……何やら怪しげな会話をしていて、内容までは詳しくわからなかったんですけど」

「嘘でしょ……ザクネスお父様が魔族と……」


 優しさの裏に隠された闇、か。

 その闇がレアをどん底に突き落とし、嫌われ者のお姫様にさせるわけだ。


「あらら、ザクネスが悪い事を? 大変ねぇ」

「お母様はショックじゃないの?」

「貴族って黒い事ばっかりだし? そういうのも仕方ないなぁって」


 メアリ様、意外と強いな……

 ほんわかしてるけど貴族女性としての歴を感じる。


「……執務室が気になるな」

「どういうことかしら?」

「魔族と取引していた証拠が欲しい。それさえあれば、ザクネスを追い詰める正当な理由ができる」


 会話を聞いただけでは弱い。

 ザクネスを追い詰める為の材料が執務室にあるはずだ。


「だったら書類は? わたくしですら見た事がない取引の記録があるかもしれませんわ」

「それだ」


 最悪、王族に突き出せば一発で破滅させられるだろう。


「書類を盗んで、ザクネスを追い詰めて、領民も治す。これで全部解決だ」


 レアを破滅になんかさせたりしない。

 原作とは違う魅力に溢れてるんだ。

 彼女にもハッピーエンドを見せてあげたい。


面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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