第105話 モブキャラ、新たなヒロインに出会う
「いい度胸してるなぁ? デストレーダーさんよぉ」
「っ!? 貴様は……!」
囲まれている破教委員の子たちの前に飛び込む。
デストレーダーたちは俺の登場に一瞬呆けたが、すぐに構えを取った。
「まず一人!」
「ぐっ!」
目の前の一人を即座に蹴り飛ばす。
魔力を充填していたおかげで俺だけが先に到着したため、しばらくは一人で対応するつもりだったのだが――
「氷結弾!!」
「聖弓!!」
「「うわぁあああああああ!?」」
遠距離から援護射撃が飛んできた。
一瞬で二人を落とすとは、さすがだ。
「来るなら一人ずつにしてくれませんか? デストレーダーは人数調整が大変なんですよ」
「そういう問題かしら? まあ、どのみち全員倒しますわ」
本来、風紀委員会はデストレーダーをある程度黙認しているらしいが……さすがに大勢で現れると困るようだ。
形勢は一気に逆転し、追い詰められたデストレーダーたちは焦りを見せた。
「こうなったら……!!」
魔装結晶ではなく、小瓶を取り出す。
……まさか自害で証拠隠滅する気か?
ガシッ!! ガシッ!! ガシッ!!
「うわぁ!?」
「か、身体が動かな……!」
「くるしい……!」
突然、デストレーダーたちの身体が影に絡め取られた。
この影魔法は――
「リーンか。よくやった」
「怪しい気配がしたから来てみた。ついでにゼクスに会えて満足」
「よーしよし、いい子だ」
「ん♪」
屋根の上から飛び降りたリーンが駆け寄ってきた。
少しだけ頭を下げるその姿を、俺は優しく撫でる。犬みたいで可愛い。
「二、三人残せばいい?」
「ああ、十分だ」
「へ?」
次の瞬間、影がデストレーダーの肉体を押しつぶし、三人だけが残された。
「「ひ、ひぃいいいい!」」
「あぁ、びびらせてすまないな。大丈夫か?」
「は、はい……」
「ありがとうございます……」
破教委員会の女子二人は刺激が強すぎたのか、その場に尻もちをついて震えていた。
「……抱きしめたいな」
「えっ?」
「いいんですか?」
了承と受け取り、そっと抱きしめる。
「「ひゃああああ……」」
「あー、美少女最高」
「相変わらず女癖が悪いですわねぇ」
「私は何故、こんな人に惹かれたのか……」
「それがゼクスのいいところ」
可愛い子が俺の生きがいだ。
ナターシアを助けたのも、可愛くて俺のものにしたかったからだ。
――さて、話が逸れたな。デストレーダーの処理をしなければ。
「さーて、洗いざらい全部話してもらおうか」
「い、いやだ……!」
まあ、素直に話すわけがない。
秘密を守るためなら死を選ぶ連中だ。ならば――長期戦だな。
「何をするんですか?」
「死なない程度に苦しめる。最低限の食事と魔力充填だけで、生かされる日々を味わってもらう」
「ひえっ……貴方たちを敵にしなくて正解でした……」
元気があるからこそ自害しようとする。
なら精神的に追い詰め、「楽になりたい」と思わせた方が確実だ。
影で三人を拘束し、寮へ運ぼうとした瞬間――
「はいはーい。役立たずは消えてもらおうかなー」
「っ!!」
上空から突然、気配。
見上げた途端、巨大な衝撃波が俺たちを吹き飛ばした。
「ちゃんと死んでよねっ!!」
「「「ガッ……!」」」
宙を舞った三人を、大剣の一振りでまとめて消し飛ばす。
「なんですの!? たった一振りでこの衝撃……」
「大きいですね……あれはモンスターですか?」
「嫌だなぁ。あーしも一応か弱い乙女なのにー」
俺よりも大きな体格。
露出した肌の下には筋肉がびっしり。まるでアスリートのようだ。
「まあ、全員殺せば問題ないよね。可愛い子なんて全員いなくなればいいんだ」
この台詞、そして個性的な外見――
「ヴィーナスじゃないか!! いやぁ、こんな所で会えるとは」
そう、ヴィーナス・アブソリュート。
デストレーダーの悪役ヒロインで、俺がいつか攻略したいと思っていた子だ。
「は? あーしのこと知ってんの?」
「一方的にな」
ムキムキ美少女って、攻略キャラにはいないから希少なんだよな。
敵キャラに癖を詰めると欲しくなる。
この世界に来てよかったよ。
「しかし綺麗だなぁ。その身体に抱きしめられたら、さぞ幸せだろう」
「ふえっ!?」
褒めた途端、ヴィーナスの顔が真っ赤に染まった。
「へ? あ、あんたバカじゃないの!? あーしのことからかうな!!」
「……デストレーダーなのかしら」
「……ちょろそうですね」
あまりのチョロさに二人も呆気に取られていた。
俺も少し困惑するほどだ。
口説くのに、そんな時間はかからないかもしれない。
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