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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
6章 モブキャラ、目をつけられる

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第104話 モブキャラ、触る

「あ、あの……そんなに触られると恥ずかしいです……」

「いやらしい言い方だな。俺たちはもう交わってるのか?」

「セクハラ!! 最低ですよ!!」


 ミホークに威圧されて完全に気力を失っていたナターシアだが、少しずつ調子を取り戻してきた。

 俺にツッコミを入れる余裕があるなら大丈夫だ。


「指と指を絡ませてるだけですわよねー?」

「そうだな。恋人らしくイチャつけて幸せだ」

「うっ……うううううう……!」


 顔を真っ赤にしたあと、ナターシアは深く俯いてしまう。

 今の俺たちは、真ん中にナターシア、左右に俺とレアが立ち、それぞれ彼女の手をぎゅっと握っていた。


 二人にベタ惚れしているからか、彼女はますます声を小さくして恥ずかしがる。

 その乙女な姿がまた愛おしい。


「どこか行きたい場所はあるか?」

「……貴方たちの寮」

「OK、エッチだな」

「違いますよ!?」


 小ボケをかましつつ、寮へ向かうことにした。

 今日はメディたちも仕事でいない。三人で過ごせる、最高の時間だ。


「相変わらずやらしいですわね。まだお昼ですよ?」

「昼だろうが夜だろうが、したくなったらするだろ?」

「まあ、それもそうですわね」

「納得しないでください!! レア・スカーレットっ!!」


 そんな掛け合いをしながら、俺たちは寮へ向かった。


 ◇◇◇


「……相変わらず広いですね」

「Sクラスだからな。ナターシアもそうだろ?」

「私は一人暮らしですから……ここまで広いと持て余します」


 ナターシアは部屋をゆっくりと見て回り、ふう、と息を吐いてソファに腰掛けると、全身の力を抜いた。


「よいしょっと」

「お邪魔しますわ♪」

「ちょっ……まだ何も……」

「俺が抱きしめたいんだ。嫌か?」

「嫌……じゃないです……」


 小さく頷くのを確認して、俺は正面からナターシアを抱きしめる。

 そして後ろからレアもそっと抱き寄せた。


「……溶けそう……」


 ナターシアは俺に抱き返す力もなく、ただ体温と鼓動だけが伝わってくる。

 呼吸が早まり、顔は熱くなり、過剰な幸福に身体が震えていく。


「っ……あ……」


 特別なことをしているわけでもないのに、ナターシアはか細く甘い声を漏らした。

 その反応に、レアと目を合わせると、彼女も悪戯っぽく微笑む。


「「エッチ?」」

「っ……耳元で囁くの……だめ……」


 両耳に同時に囁かれ、ナターシアの身体がびくんと跳ねる。


「……ナターシアって俺より変態だよな」

「貴方ほどではありませんわ。ただ……少しアブノーマルなだけです」

「ああ、お漏らしとか3Pとか……」

「お漏らしは趣味じゃありません……!!」


 ――まあ、あの夜の出来事は俺の中でも驚きだったが。


「ですが、その……」

「ん?」

「ありがとうございます……」


 照れながらの、小さな感謝。


「貴方たち破教委員会の支援がなければ、風紀委員会は本当に終わっていました」

「気にするな。風紀委員会との関わりは俺たちにもメリットがある」

「微々たるものですよ? 労力に見合っているとは思えませんが……」


 確かにクセの強い風紀委員たちの支持を得るのは大変だった。

 結果を見せなければ首を縦に振らないし、最初は強引に動かしていたのに、気づけば自然と協力し合う関係になっていた。


「でさー、今日は……」

「わかるー……超しんどい……」


 ふと、窓の外から女子生徒たちの声が聞こえた。

 ナターシアから少し離れて覗いてみると、微笑ましい光景が広がっていた。


「風紀委員と破教委員が仲良く話してるのか……面白いな」

「えっ? うちの子たちがそこまで心を許すなんて……」


 ここまで効果的だとは思わなかった。

 交流ってのは大事だ。最初は色々あったが、今ではいい関係になってきた。


「今後もよろしく頼むぜ、風紀委員長様」

「ええ……こちらこそです」


 ナターシアも窓から覗き込み、ふふっと微笑む。


「……あれ?」

「ん?」


 突然ナターシアの表情が険しくなる。

 俺も視線の先を追うと――


「……デストレーダーか?」

「はいっ!?」


 黒ずくめの男たちが、破教委員会の生徒を人気のない路地に追い込んでいた。

 懐で鉱石を光らせ、何かよからぬことをしている。


 ……また厄介事を。


「行くぞ」

「ええ」

「はぁ……ゆっくり休ませてほしいです……」


 俺たちは急ぎ足で外へ向かう。

 さっさと片付けて、デートの続きをしよう。

 ――正直、まだ全然イチャつき足りないんだ。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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