第103話 モブキャラ、乗り切る
「……どういう考えだい?」
「せっかく予算が増えたからな。有効に使いたいと思ってね」
重苦しい空気の中でも、俺はそのまま話を続けた。
「風紀委員会とは良い関係ができている。予算を削られて苦しい状況を、こちらが改めて支援すれば――さらに恩を売れる」
「……なるほどね」
ミホークが軽く相槌を打つ。
風紀委員会とは最近かなり距離が縮まった。最初は支援で依存させるつもりだったが、今では学園の空気や変化、さらには貴族家の情勢にまで詳しくなれる貴重な情報源でもある。
(俺たちにも十分メリットがある、ってわけだ)
レアもこの有益さに気づき、本格的に支援体制を整えようとしていた。そこに予算増。風紀委員会を支援するにはこれ以上ない口実だ。
「本当は風紀委員会なんてどうでもいいんじゃないの? ただ、その子を助けたいだけだろう?」
嫌味を含んだ口調に、俺は微笑み返す。
「当然だろ。可愛い子には好かれたいからな」
結局のところ、俺はヒロインに好かれたらそれでいい。
風紀委員会も、
生徒会も、
そしてデストレーダーでさえ――
すべては目的を果たすための通過点にすぎない。
「ぷっ……あはは。やっぱり君は面白いねぇ」
ミホークは腹を押さえて笑い、張り詰めていた空気が一気に緩んだ。
「そんな君に人がついていくなんて不思議だ。愛の力ってやつかい?」
「愛がある限り、ゼクスはどこまでも進めますわ。だから、わたくしたちは従いますの」
レアが恥じらいもなく言い切る。
ナターシアもまだ痛みが残るのか頬を赤らめつつ、小さく頷いた。
「言ってくれるじゃないか。キスしてもいい?」
「ほんと相変わらずね……後にしなさい」
強さと誇りを掲げるレアが、こうして素直に愛を語る日が来るとは。
日に日に頼もしさが増していく。
「まあいい。我々は予算を与えるだけだ。使い道に縛りは設けない」
「なんなら生徒会も支援してやろうか?」
「……それは、宣戦布告と受け取っていいのかい?」
さすが生徒会。
俺の挑発に乗るでもなく淡々と返してくる。
「生徒会こそ圧倒的No.1だ。それに支援は……君たちよりもっと大きなところから受けているからね」
「大きいところ?」
どこだ?
学園長……ではありきたりすぎる。
ミホークの言い方からして、もっと強大な“組織”だ。
生徒会が敬意を払う存在。
学園最上位の組織。
……まさか。
「王族か」
「ご名答」
ミホークはパチンと指を鳴らし、席を立った。
「敵は我々だけじゃない。それを胸に刻んでおくことだね」
そう言い残し、部屋を去る。
「げほっ、げほっ……!! はぁ……っ、はぁ……っ!!」
「おいおい、大丈夫か?」
「だい、じょうぶ……じゃないです……」
脅威が去った途端、ナターシアはその場に崩れ落ち、咳き込んだ。
よく耐えたな。本当に頑張った。
「貴方たちは何で平気なんですか……怖かったですよ……」
「いつかは俺が上に行くからな」
「ただの役員に怯えているようでは、破教委員会は務まりませんわよ?」
「……ははっ」
確かに圧はすごかった。だが、多くの修羅場をくぐってきた俺からすれば――
「まあ、そんなものか」と思う程度だ。
レアも同じだろう。
最初はキングオーガに震えていたのに、今では平然としている。
ナターシアもいずれはこうなる……多分。
「デート、今日にしないか?」
「いいですわね。わたくしも疲れましたわ」
「……食事が喉を通る気がしません……」
「じゃあ最初は散歩でもしよう。時間が経てば落ち着くだろ」
「……っ」
ナターシアを落ち着かせるため、正面からそっと抱きしめる。
レアも背中から抱きしめ、三人で包み込むように寄り添った。
ナターシアは戸惑いながらも、その温かさを受け入れて震えを鎮めていく。
五分ほど経った頃だろうか。
「もう大丈夫です……」と弱々しくも笑みを見せたので、俺たちはそっと身体を離した。
どこか名残惜しそうにしていたが――
このあと、もっと幸せな時間が待っているから安心していい。
面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。
m(_ _)m




