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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
6章 モブキャラ、目をつけられる

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第101話 モブキャラ、呼び出される

「生徒会に呼ばれたぁ!?」

「何でも大事な話があるらしいけど……そこまで驚くことか?」

「当たり前ですよ!!」


 実務作業中だったナターシアは、驚きのあまり手元のペンを落とした。

 風紀委員会より上の組織だとは知っていたが……どうやら想像以上らしい。


「生徒会は格が違います。私ですら何も言えないのに……」

「そんなに偉いのか」

「この学園の運営を任されてるのよ? 地位も格も一級品よ」


 学生が運営しているというのも、なかなか凄い話だ。

 予算は学園が出しているのだろうか。だとすれば、相当派手な教育方針だと言える。


「というか学園長は何をしてるんだ? もしかしてお飾り?」

「あの方は学園の一番の支援者です。過去の偉業や研究成果に加え、グランヴァル王族の直系なので莫大な資金があります」

「若者に資産をつぎ込むとは……中々の変わり者ですわね」

「それが彼のやり方です。多少強引でも、優秀な人材を輩出したという実績ができますから」


 その結果が格差社会を生み出しているわけだが。

 数打ちゃ当たる、と言えば聞こえはいいが、もう少し上手くやれそうな気もする。


 俺だったらろくでなしの生徒に金は使わず、こうして近くに来てくれる美少女たちにつぎ込むのに……


「あ、あの……」

「ん?」

「二人から見られると、その……」


 ナターシアは時々手を止めては気まずそうに顔を逸らし、こちらを見る度に頬を赤くしていた。

 ――あぁ、そういうことか。


「どうした? もっと見てもいいんだぞ?」

「貴方に好かれて嫌なことなんてありませんわ♪」

「わ、分かっててやってますよね!!」


 どうやらナターシアは“俺たち”に惚れてしまったらしい。

 俺だけでなくレアにまでベタ惚れとは……あの夜に披露したテクニックが良かったのだろうか。


「そんな事言われても、明日の呼び出しにはお前も来るんだぞ?」

「はい!?」

「まだ聞いていませんでしたの? 生徒会の招集は、風紀委員会と破教委員会が対象ですわ」


 ナターシアは慌てて書類の山をかきわけ、目的の封筒を見つけると中身を確認する。

 あの封筒は俺たちにも届いていたものだ。

 内容は先程話した通り。


 ただ、ナターシアは仕事に追われて読む暇がなかったらしい。

 読み終えると、彼女は深いため息をつきながらテーブルに頭を伏せた。


「……最悪ですね」

「内容、書いてあったか?」

「生徒会からの呼び出しなんて、大体面倒な事ばかりです。あああああ……早く寮に帰りたい……」


 ナターシアがここまで言い切るなんて、どれほど負担を強いられているんだ。

 生徒会の傘下組織だけあって、色々こき使われているのだろう。


「終わったら三人でデートしようぜ」

「へっ」

「あら、いいですわね。真ん中にナターシアを置いて、両手をわたくし達がつないで……」

「あわ……あわわわわ……!!」


 一気に顔を赤くして飛び上がるナターシア。

 幸福に耐えきれないのか、目には涙すら浮かんでいる。


「ナターシアってほんと可愛いよな」

「えぇ。ここまで素直にデレデレしてくれるなんて、愛しがいがありますわ♪」

「わ、私で遊ばないでください!! ついでにデレデレなんてしてませんからーーーー!!」


 と言いつつ、顔はしっかりニヤけていた。

 俺も生徒会に会うのは変なプレッシャーがあったが、デートのために頑張るとしよう。


◇◇◇


「どうぞこちらへ」


 翌日、指定された場所へ向かうと、そこにはミホークの姿があった。

 俺のフィールドロワイヤルの視察に来ていた、生徒会のメンバーだ。まさかここで会うとは。


「応対もこなすんですね」

「生徒会だからね。あと、今更敬語なんて使わなくていいよ」

「……わかった。これでいいか?」

「ふふ、素直でよろしい」


 相変わらず不思議な雰囲気をまとっている。

 張り付いたような笑顔と柔らかい物腰――だがその所作の一つ一つには、一切の隙がない。


 例えば俺が少しでも妙な動きをすれば、一瞬で喉元に刃を突き立てられそうな気配。

 こいつ、一体どれほど強いんだ?


「それとナターシアちゃん。久しぶりだね」

「い、いえっ!! その、ミホーク様も相変わらずで……」


 ナターシアは肩を震わせながらぎこちなく頭を下げた。

 ここまで怯える姿も珍しい。


「……そんなに偉いのか?」

「わたくし達とは立場が違いますでしょ?」

「あぁ、なるほど」


 まるで下請けが依頼元の社員を迎えるようなものだ。

 緊張するのも無理はない。

 ミホークが小部屋のドアを開けて手招きし、俺たちは中へ入る。


「うおっ……」


 ここが応接室か。目に入る家具はどれも高級品に見える。

 ソファに軽くもたれただけで、全身がふわりと包み込まれるような感覚があった。

 俺たちの寮よりよほど良いものを使っている……金があるな。


「さて、本題に入ろうか」


 対面のソファにミホークが腰を下ろし、会談が始まった。


「まずはナターシアちゃん。君たち風紀委員会の予算を減らすことが決まった」

「っ!!」


 開口一番、容赦のない本題が突きつけられる。

 空気が一瞬で張り詰め、室内に静寂が満ちた。

 ナターシアは目を見開いたまま、その言葉を黙って受け止めていた。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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