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名無しの貧乏貴族Aに転生した俺、原作で処される悪役ヒロイン達に救済ルートを与えたい  作者: 早乙女らいか
5章 モブキャラ、風紀委員会と接触する

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第100話 混沌とする欲望

side:ナターシア


 私は恵まれていた。


 王族と深い関わりを持つ公爵家に生まれ、

 固有武器を二つも適合できる才能に目覚め、

 そしてグランヴァル学園でも実力を発揮し、いつの間にか風紀委員長になっていた。


「はぁ……」


 成り行きで就いた風紀委員長という立場。

 私より強い人がいない――だからこそ今も風紀委員長だ。

 最初は卒業後の肩書として悪くないと思っていたけれど、やる気は今では跡形もなくなってしまった。


 正直、損な役回りだ。


 才能はあるが性格に難のある風紀委員たちをまとめ、生徒会には都合よく使われ、山のような書類と向き合う毎日……


 やめたい。逃げたい。

 でも安心して任せられる後継がいない。


 このままストレスを抱え続けるのだろうと思っていたところに――


『やめればいいんだよ。風紀委員長を』


 無神経に、けれど正しく私の心を揺さぶる悪魔が現れた。


 ゼクス・バーザム。


 彼は本当にイレギュラーな存在だ。

 入学時にSクラスに選ばれたとあって、少しだけ監視していたが……ここまでの存在になるとは想像もしていなかった。


 デストレーダーを追い返した?

 そこまでは理解できる。


 聖教委員会を乗っ取った?

 そのあたりから危険信号が点滅し始める。


 風紀委員会を徹底的に改善し、私の仕事量もストレスも減らしていき……

 ここまで来ると、もうダメ。危険すぎる。


 極めつけには、私を抱いたのだ。

 身体を捧げたのは私の方だが、あそこまで素直に受け止められるとは思わなかった。


(本当に恐ろしい人……)


 風紀委員として、彼の存在は学園のバランスを崩壊させると警戒していた。

 だから風紀委員を使って彼を調査した。


 そこで判明した彼の“動機”。


 ――捻くれた可愛い子を助けたい。


 あまりにも単純すぎて、最初は信じられなかった。


 彼は可愛い子に手を出し、その子が困っていれば何がなんでも助けようとする。

 数々の偉業や事件は、その副産物にすぎないという。


 怖すぎる。

 “公女好き”という異名が、別次元の意味に響いてくる。

 高貴な女性を救うためならどんな手でも使う。

 それがゼクス・バーザム。


(私がまた抱かれる日が来るなんて……)


 戦いで文字どおり色んなものを失った私は、気づけば彼を拠り所にしていた。


 強気で、欲深く、何より素直。

 その良くも悪くも真っ直ぐすぎる部分に惹かれる者が多いのだろう。私自身が一番驚いている。


 今、隣で眠る彼の顔を見るだけで胸の奥がじんわり熱くなる。

 もっと触れ合いたいと、自然と思ってしまう。


「あ……」


 驚いたのは、レア・スカーレットの存在だ。

 他貴族に厳しいことで有名な彼女が、素直に彼へ尻尾を振っているのだから。


 スカーレット家のため、この学園で頂点を目指している――

 調査でもはっきり出ていたのに、その彼女が伯爵の隣で寄り添っているなんて。


「あら、何を考えていましたの?」

「っ!!」


 そのレアが、私の後ろから優しく抱きしめてきた。

 前にはゼクス、後ろにはレア――身体を挟まれるような形だ。


 お互いに全裸で、肌の感触がダイレクトに伝わる。


 すごく……恥ずかしい。

 彼の顔も、彼女の顔もまともに見られない。


「悩み事は忘れて……今はわたくし達のことだけ考えなさい……♡」

「ひゃっ……」


 首筋にそっと柔らかい感触が触れ、顔が一気に熱くなる。


 前も後ろも、私の“好き”で満たされている。

 幸福に全身を包まれていく。


(ひどい人たち……)


 異性の力強く未知に満ちた感触。

 同性の優しく馴染み深いぬくもり。


 その二つに、私は完全に虜となった。

 もう二人なしでは生きていけない。

 いつの間にか、彼らの“欲深さ”が私にも移っていた。


 風紀委員長なのに、一番風紀を乱している。

 本当に最悪だ……


◇◇◇


side:???


「……魔装結晶、調子悪くない?」

「それが……下級クラスが相手をしてくれなくて」

「言い訳とか聞きたくないんだけどっ!!」

「あだっ!!」


 目の前の女に蹴り飛ばされる。

 彼女は痰を吐き、不機嫌そうな顔でテーブルの魔装結晶をつまんだ。


 相変わらず自由で、醜いくせにワガママだけは一丁前だ。


「破教委員会ができてから、なーんにもできなくなっちゃった」

「……風紀委員会も勢力を落とし、学園内が混沌に包まれています」

「私たちよりカオス出してんの? やば、ウケる」


 破教委員会は組織として巨大化しすぎた。

 我々が狙っていた層を彼らが救い始めている。


 これでは魔装結晶が広まらない。

 弱みに付け込むこともできない。


「一つ、案がある」

「何?」

「破教委員会は我々デストレーダーの邪魔だ。排除すべきだ」

「ふーん……誰からやるの?」


 動く時だ。

 我々の目的のために。


「レア・スカーレット……彼女を殺す」


 破教委員会の中心。

 そこを潰せば、連中も身動きが取れなくなる。


「……いいじゃん。あいつムカつくし」

「異論はないな。準備を進める」

「いってらー」


 お前は行かないのか、と言いたくなる。

 だが、こんな見た目でも組織の統括担当。

 愚痴は言っても反論はしない。強者の特権だ。私はただ提案するだけ。


「胸もデカいし可愛いしエロいし……私にないものばっかで大っ嫌い」


 相変わらず、“女性らしい女性”が嫌いらしい。

 俺だって、もっと可愛い上司の下につきたかった。


 俺より身長が高く、

 無駄に筋肉がつき、

 胸もほとんど膨らんでいない。


 こんな女を好きになる“変わり者”なんて、この世に存在しないだろう。

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

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