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エピローグ【ロックス】


 「ロックス。死刑執行はどんなに早くても三日後だ」


 申し訳なさそうな顔と声で伝えてくるジーク殿下。


 「いえ。助かります」


 こんな面倒事を快く引き受けてくれた殿下には本当に感謝しかない。


 隣国に到着し、馬車から降りた瞬間に逃げようとした二人は護衛騎士により捕縛された。


 こちらも雨が降っていたらしく地面はぬかるんでいる。


 顔も体も泥だらけになりながら、必死に無実だと叫ぶ姿は滑稽。


 そんな二人を馬車の中から冷めた目で見るだけの女、オリビア。


 処刑を通達し、死が免れないと知り、己の罪をようやく認め改心した。


 道中、ずっと姉さんへの謝罪を繰り返す。


 許されるためではなく、罪を認め反省するかのように。


 僕からしたら、だからどうした?だが。


 いくら反省しようが姉さんを裏切り、傷つけ、泣かせて、苦しめた。


 その事実は消えない。


 ──絶対に許してなるものか!!


 「お前も出ろ。準備が整うまで、牢の中で過ごしてもらう」


 大人しく従う。


 罪を悔い改めたのは嘘ではないようだ。


 用意された牢獄はテミスの塔よりも広い。


 三人まとめて同じ牢獄に放り込む。


 枷は必要ない。どうせ逃げられないのだから。


 「おい待て!こんな泥だらけの恰好で過ごせというのか!!」

 「逃げようとした自業自得だろう?」

 「平民の分際で!この俺に楯突いてただで済むと思うなよ」

 「何を勘違いしているのか知らないが。お前はただのアレクサンダー。処刑を待つだけの罪人だ」


 僕を掴もうとした手は鉄格子によって阻まれる。


 必要に手を伸ばすも触れることは叶わない。


 「この卑怯者が!!」


 睨みながら叫んだ。


 そんなアレクサンダーを僕は黙って見下ろすだけ。


 踵を返して、出口に向かって歩き出す。


 「ま、待って!私は指示に従っただけよ!悪いのは全部この二人、いいえ!この女よ!!」

 「バカの戯言に耳を貸すつもりはない」

 「バ、バカですって!?私は由緒正しき伯爵令嬢!貴方のように卑しい平民の血でありながら、貴族を名乗る愚か者とは訳が違うのよ!!?」


 口を開けば言い訳か身分のことばかり。


 その自慢出来る身分でさえ、今はもうないというのに。


 「仕えるべき姉さんの名前も知らず、よく公爵家の侍女が務まったものだ」

 「っ……そ、それは」

 「無能な侍女を雇うなんて、公爵様はよっぽどお優しい方だったんだろう」

 「き、貴様……っ!!」


 これ以上は相手にするなんて時間の無駄だな。


 「せいぜい、残り三日。好きなように生きればいい」


 たった三日で餓死するわけはないが、食事は与えるつもりだ。


 アイツらが姉さんにしたように、固くなり捨てるだけのパン一つと、コップ一杯の水。

 それが一日の食事。


 きっと気に入ってくれるだろう。


 因果応報として現実を受け止めることなく、理不尽だと騒ぎ立てるだけかもしれないが。


 でも、その理不尽を姉さんにやった時点でアイツらに情状酌量の余地はない。


 理不尽だろうが何だろうが、甘んじて受け入れる。

 それしか選択(みち)はないのだから。

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