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それから……。
裁判は滞りなく行われた。
自分達だけでも助かろうと全ての責任をアレクサンダー様とオリビアの二人に擦り付けたのだ。
一介の使用人が公爵様に逆らえるわけがないと、手の平を返すように証言。
裏切った甲斐なく、もれなく全員の罪が裁判官に認められた。
囚人といっても厳しい罰があるわけではなく、三年収監されるだけ。
たったそれだけでは刑が軽いのではないかと声も上がったけど、収監場所がテミスの塔だと決まると皆の口は閉ざされた。
テミスの塔は罪人がきちんと反省すれば一年で出られる監獄。ただし。反省の色が見られなかったら、刑期を終えても牢の鍵が開くことはない。
被害者に手紙を書くのも一つの手。
自らの罪を省みて、しっかりと向き合い反省する。これから続いていく人生で同じ過ちを繰り返さないと判断されれば刑期を終えたことになり釈放。
そう……。私が今、読んでいる手紙がまさにそれ。
公爵家の元使用人達から連日、手紙が届く。
手紙はかならず読まなくてはならない決まりがある。
内容はいつも同じなので読みたくないと思いつつ、囚人の未来を左右することだからと自分に言い聞かせるしかなかった。
読み終えて、テミスの塔を任されている管理者ギルム様に彼らが全く反省をしていないと伝える。
綴られることは言い訳ばかりで謝罪はない。これが通用すると思っているのなら、アレクサンダー様は随分と使用人を甘やかしていたことになる。
決まりとはいえほとんど毎日、足を運んでくれるギルム様の顔には疲れが溜まっていた。
疲れに効くハーブティーを勧めると力なくカップに手を伸ばす。
ロックス手作りのクッキーも食べるとホッと一息をついた。
「それでは私はこれで」
何度も頭を下げながら帰っていく背中を見ていると、申し訳なさを感じる。
私のせいでギルム様を疲れさせてしまって。
裁判の結果、主犯でもあるアレクサンダー様とオリビアは終身刑。
我が国に死刑制度はなく、一番重い刑罰が終身刑である。
ローラも同じ罰が課せられた。
命令されて仕方なくやっただけなのに、最上刑なんて納得がいかないと不満をぶつける姿がより心証を悪くしていたかも。
最終的には私が嘘の証言をして陥れようとしている。判決は無効。公平な裁判をやり直すべきだと訴えた。
アレクサンダー様も似たようなことを言っていたな。
私が一番驚いたのはオリビアが、あの夜のことを口にしなかったこと。
オリビアの性格上、落ちるなら私を道ずれにするはずなのに。
別人かと思うくらいに大人しく、判決を素直に受け入れた。
反省しているとかではなく、口を開くことを恐れているかのような。
「姉さん。ヴォラン様が見えたよ」
ロックスはしばらくの間、国に滞在することとなった。
実家に泊まるという表現はおかしなもので、帰ってきたと訂正する。
ラン……ヴォラン様は忙しい合間を縫って私の様子を見に来るようになった。
扉と窓を開けて開放的な部屋で、二人きりにならないように配慮までしてくれて。
その行動が意味するのは一つ。
私がもう純潔でないと知っている。
それでも尚、私のことを……。
ヴォラン様の優しさに胸が温かくなる。
どんなに言い訳をして逃げ道を探したところで、私は目の前にいるこの人が好き。
身分とか容姿じゃなくて、優しくて相手を思いやれるその性格を。




