サンタマリア
その後も、私達二人は、暇であれば屋上に登り、二人だけのライブを楽しんだ。
彼女が歌手で、私が観客。なんて素晴らしい一時だろう。
今彼女が歌っているのは、今や日本を代表するシンガー・ソングライターの歌だ。名前がかなり特徴的な人だ。
その曲の名は”サンタマリア”。歌詞の解釈は色々だろうが、ゆったりとした優しい音色から、切ない歌詞が歌われている。
その曲自体も名曲だが、彼女の歌声がそれを更に素晴らしいものにしている。
「ねぇねぇ、今のどう?」
「ああ、すっごく良かったよ。特にラスサビの声なんか、思わず泣きそうになった」
「ええ〜そんなに?笑 良かった!」
そう言って笑う彼女の笑顔は、なんて可愛らしいんだろう。きっと彼女は、間違いなくすごいスターになる。死ぬ前に、そんな彼女の初々しい時代に巡り会えたことが、何よりの栄光かも知れない。
「ああ、早く大人になりたいな〜・・・」
今のその声が、どこか失望したような、そんな声に聞こえたのは、きっと気のせいだろう・・・。
そういえば、彼女の苗字を聞いていない。下の名前は志保っていうのは分かったが、如何せん苗字だけは、
「それは秘密〜。こじんじょーほー」
とか言って教えてくれない。それを言ってしまえば下の名前も普通駄目なんだが。
だが、なんとなく、彼女は見たことがある。どこかで・・・。